世界遺産のアンコール遺跡群の一つ、アンコールトムを訪れる観光客ら=2026年6月、カンボジア・シエムレアプ(共同)

 石造寺院アンコールワットなど世界遺産の遺跡群を擁するカンボジア北西部シエムレアプ州への外国人観光客が大幅に減っている。中東情勢の悪化で航空便が減少、旅費も高騰して主力の欧州からの客足が遠のいた。さらに特殊詐欺の拠点という悪いイメージが広まり、東アジアの客が敬遠するようになった。遺跡観光は経済を支える柱の一つで打撃は深刻だ。(共同通信プノンペン支局=小泉忠之)

 州当局によると、2026年1~6月の遺跡群の観光客は約38万8千人で前年比32%減。上位の米英仏と中国が軒並み減らし、日本からの客も同33%減だった。

 2026年6月下旬、シエムレアプ・アンコール国際空港のロビーは閑散としていた。観光客の増加を当て込んで中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として整備し、2023年に運用を始めたばかり。だが発着する国際線はタイやベトナム、マレーシアなど近隣国への1日十数往復。旅客数は新型コロナウイルス禍前、旧空港があった2019年に遠く及ばない。

 外国人に人気が高い繁華街「パブストリート」にも雑踏はない。米俳優アンジェリーナ・ジョリーさんが映画の撮影時に通った有名店の店員は「客は2025年より3割少ない」と明かした。

 州のティム・セレイユト観光局長は、航空運賃が値上がりする中で「欧州との直行便があるベトナムやタイとの競争で後れを取っている」と分析、長距離便が発着できる国際空港の能力を生かし切れていないとする。

 「コロナ禍以前は週に3日は仕事が入っていた。今は1日あればいい方だ」とベテランガイドの男性(39)。コロナ禍で全く仕事がなくなり親類宅に身を寄せたが、回復途上に再び客の減少に見舞われた。

 ホテルのソク・ピセト支配人は「既に人員を最小限に絞ったり、スパなどのサービスを縮小したりしたホテルを見かける」と話す。

 カンボジアが拠点の特殊詐欺事件が各国で報じられたことも追い打ちをかけた。韓国人大学生が犯罪組織に監禁され、暴行を受けて死亡していたことが2026年10月に大きく伝えられると、韓国政府は全面的な渡航規制を実施。その後緩和されたが観光客は戻っていない。

 遺跡観光のピークは欧州が寒くなり、カンボジアが過ごしやすい乾期に入る秋から冬にかけて。てこ入れのため政府は2026年6月から期間限定で最友好国の中国人観光客のビザ免除に踏み切った。関係者は対象国の拡大に望みをつないでいる。

アンコールワットからの日の出を見る観光客=2026年6月、カンボジア・シエムリアプ(共同)

カンボジア・シエムレアプの繁華街「パブストリート」=2026年6月(共同)

カンボジア・シエムレアプの繁華街「パブストリート」=2026年6月(共同)

カンボジア・シエムレアプ、プノンペン