休日の服装ではどんなことに気を付ければいいのか。スタイリストの森井良行さんは「流行中のワイドパンツを選ぶときは注意が必要だ。例えばユニクロはトレンドを押さえた男性向けパンツを数多く取り揃えているが、大人が選ぶと一発アウトになる地雷商品がある」という――。
写真=iStock.com/Manuel Milan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Manuel Milan

■男性が間違いがちな「新定番パンツ」

「ピタッとしたパンツの男性を、街なかで見かけなくなりましたね」

以前、クライアントからそんな声をいただきました。この10年でジャストシルエットは減りましたが、だからといって若者のような太いパンツを合わせると「一発アウト」になるリスクを拭えません。

なぜ大人のワイドパンツ姿は、だらしなく見えることがあるのか。その背景には、ワイドという言葉のイメージに引っ張られた「ただ太いだけのシルエットを選んでしまう」という誤解があります。

そこで今回は、令和の定番スタイルで失敗しないための「ワイドパンツ選びのコツ」を解説します。

まず、ジャストシルエットに慣れ親しんでいる人ほど、ワイドパンツに違和感を覚えるという共通点があります。たしかに太いだけのパンツを選ぶと、だらしないイメージから脱却できません。ポイントは、単に太いものではなく、「ウエストまわりのくびれが強調される」ものを選ぶことです。

つまり、太く見えないワイドシルエットを探すわけですが、パンツ選びで失敗している人は、この視点が抜け落ちている可能性があるのです。これこそサイズが合っていないだけの「だらしない状態」に陥る理由といえます。

一見、矛盾した「太く見えないワイドシルエット」とは、具体的にどのようなパンツを指すのでしょうか。

■女性の着こなしとの決定的な違い

ウエストのくびれが強調されると、たとえ脚まわりに余計なゆとりがあったとしても、パンツの太さより絞られたウエストのほうに目が行きます。街ゆく女性のワイドパンツ姿が、だらしなく見えない理由です。

では、この「くびれ」を意図的につくり出すにはどうすればいいのか。ここでカギを握るポイントがタックです。ワンタック、ツータックというようにスーツスラックスで見かける「あの前面に入ったプリーツ(規則正しく繰り返された布の折り目)」ですが、じつはくびれたウエストを強調する効果があります。

とはいえタックの数が増えるほど、物理的に「パンツの脚まわりも太くなる」という弊害は見逃せません。詳しくは後述しますが、これでは単に太く見えてしまうため、私はプリーツがない「変則的なタックパンツ」を推しています。具体的には、カーブタック(曲線的に布を折り込んだデザイン)やバレルレッグと呼ばれるシルエットです。

筆者撮影
側面が丸みを帯びて張り出したカーブタックパンツ - 筆者撮影

樽を意味するバレルは、その名前どおり、脚まわりの生地がカーブしながら張り出したシルエット。これが「太く見えないワイドパンツ」の正体です。

■ユニクロで買える「おすすめ3本」

大人の新定番は、単に太いものではなく、くびれが強調されたパンツを選ぶこと。理屈はシンプルですが店頭で実際に見分けるのは難しいため、今回はユニクロで買える「おすすめ3本」をピックアップしました。これらは単に太いパンツではなく、くびれを強調しつつ、スッキリ見えるものです。

①ジャージーバレルレッグパンツ:4990円(税込)

立体感あるフォルムが特徴のバレルパンツです。ハリ感あるコットンジャージー素材のお陰で、ラクな穿き心地とフォルムの崩れにくさを両立しています。

筆者撮影
ウエストのくびれが強調される「ジャージーバレルレッグパンツ」 - 筆者撮影

まさかの男女兼用ですが、身長173cm・体重65キロの筆者の場合はLサイズが適正です。また身長180cmの男性モデルがXLサイズを着用している写真も、オンラインショップに掲載されています。

②バレルジーンズ:4990円(税込)

英国のデザイナー、クレア・ワイト・ケラー氏による「ユニクロC」のバレルジーンズはパンツ側面のカーブが緩やかなので、くびれたウエストに比べ、脚まわりがスッキリした印象に仕上がります。またジーンズ生地特有のハリ感があるため、ガードルのようにお腹の膨らみを補正してくれる効果も期待できます。

色については、濃紺や黒など色落ちしていないバリエーションを選んでください。パンツの太さにかかわらず、デニムの色落ちは加齢による顔や毛質の変化と相まって、くたびれて見えるリスクがあるからです。

③ストレートジーンズ/セルビッジ:4990円(税込)

英国のブランド「JWアンダーソン」とコラボした、ユニクロのストレートジーンズです。バレルレッグやカーブタックではなく、ネーミングどおりストレートタイプですが、穿く位置次第では、くびれたウエストの演出が実現可能です。

「バレルレッグという見慣れないフォルムには抵抗がある……」という方に向けて、こちらをピックアップしました。直線的な脚まわりのストレートタイプならば、違和感なく試着できるのではないでしょうか。

ここまで紹介した3本は、いずれも「脚のラインを拾わない」シルエットという共通点があります。というのもスキニーパンツが定番だった10年前は、余計なゆとりをそぎ落としたフィット感が美しさの基準でした。しかし現在は、あらわになった膝やふくらはぎのカタチは、「体型の強調=生活感」と認識され、ネガティブな評価につながります。

つまり、この10年におけるパンツの変遷は、単なる流行の変化ではなく、シルエットに対する価値観の根本的な変化だと私は捉えています。

■「失敗した若づくり」に見える地雷商品

カーブタックやバレルレッグは、樽のようにパンツ側面に生地が張り出しているため、股下に、きちんと空間をつくりやすく、結果的に「くびれを強調しつつも、太く見えない」ということがわかりました。

その一方、ユニクロの「タックワイドテーパードパンツ(3990円、税込)」は、「腰まわり」が太く見えるため、大人には薦めていません。その理由は、このパンツのタック位置と「生地の柔らかさ」という組み合わせのバランスに集約されます。

筆者撮影
腰まわりにゆとりのある「タックワイドテーパードパンツ」 - 筆者撮影

そもそもワイドパンツは股上が深いため、脚まわりが太くなるにつれ、構造的に股下の空間が潰れやすく、実際より「股下が低い(足が短い)」ように映るのです。だからこそ様々な工夫によって股下の空間を引き上げるわけですが、このパンツは前面についたフロントタックと生地感の柔らかさから、たとえ穿く位置を上にもってきたとしても股下の空間が潰れやすいのです。また腰まわりのゆとりから、体形によっては下腹部が出ているように見えます。

これではパートナーから、「以前のほうがスッキリしていた」と評価されてしまいますし、10代の子どもから見たら「失敗した若づくり」と思われかねません。またオフィスカジュアルとして職場で着用していれば、腰まわりのもっさり感が、仕事をテキパキこなせる印象を与えないのではないでしょうか。

そして細身に慣れ親しんだ方は、こういう失敗を懸念しているからこそ、これまで何となくワイドシルエットに抵抗感をもっていたのだと私は捉えています。

■プロが教える「2つの鉄則ルール」

ここまでワイドパンツの正解と不正解について解説してきましたが、選び方が合っていたとしても、穿き位置とトップスの合わせ方を誤れば、だらしない印象になってしまいます。

そこで大人がワイドパンツを品よく着こなすための「2つのルール」をお伝えします。

ルール①:穿く位置は、おへそより3~5cm上

バレルレッグやカーブタックを選んだとしても、スキニージーンズのように腰に引っ掛けるような着こなしでは、ワイドパンツの構造上、深い股上がそのまま下に落ちてしまいます。この不自然なダブつきを解消すべく、おへそより3~5cmほど上、まさに和装の「袴(はかま)」を穿くような高い位置から、カーテンを吊るすような感覚で合わせてみてください。

筆者撮影
穿く位置によって股下の空間が変わる - 筆者撮影

このように高い位置から生地を吊るすように穿き上げることで、股下に空間が生まれ、脚の付け根が高く見えるのです。

■上半身と下半身は「2対3」のバランス

ルール②:ウエスト位置を底上げする「トップスの着丈」

パンツの穿き位置を整えたら、次に注意すべきは「上半身との境界」です。というのもTシャツやポロシャツの「着丈」が長すぎると、せっかくの「くびれ」が、上着で隠れてしまいます。これでは視覚的な重心が下がって見えますので、単にルーズでサイズが合っていないように見えかねません。

そこでトップスは、「着丈が短め」のものを選ぶ、もしくはトップス丈を折り返しても「下がってきづらい」リブが付いたデザインを探します。目安としては、肩から地面までを「5」としたとき、上半身と下半身が「2:3」のバランスになるイメージです。おそらく大半の方が、実際のウエスト位置よりも、腰位置が高く見えるはず。これが体形補正された大人カジュアルの理想形です。

ちなみにトップスの裾を、パンツに入れる「タックイン」という選択肢がない訳ではありません。ただ我々40代以上の世代にとっては、Tシャツやポロシャツのタックインは、それこそ「おじさんっぽい」イメージをお持ちではないでしょうか。そういう意味で、やはり「着丈が短い」トップスや、「リブがついた」デザインが現実的なチョイスだという結論です。

■新定番をスマートに乗りこなすには

長年親しんだジャストシルエットからワイドシルエットへの移行は、単なるトレンドの追従ではありません。これは「体形をキレイに補正する」という価値基準の転換です。そして、この変化は、体形変化が訪れた40・50代にとって、じつは有用なのではないでしょうか。

筆者撮影
ワイドパンツの着こなし例 - 筆者撮影

40代を過ぎれば、誰もが「弛み」などの体形変化に直面します。あえてゆとりのあるパンツを選びつつ、くびれや穿く位置といった知識を生かして、スッキリ見せること。これこそが、新定番パンツを取り入れる最大の理由です。

「太いパンツはだらしない」という固定観念を取り払い、今回お伝えした「バレルレッグの選択」「袴のような穿き位置」「短いトップスの着丈」というルールを実践してみてください。大人の品格を保ちつつ、新しい定番をスマートに乗りこなせるはずです。

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森井 良行(もりい・よしゆき)
スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事
1979年千葉県生まれ。日本大学卒業後、一般企業を経て2007年に独立。これまでのべ5500人を超えるビジネスパーソンの買い物に同行し、スタイリングを手がける。感性で語られがちなファッションを独自のロジックで言語化し、戦略的にビジネスパーソンの魅力を引き出す着こなしのメソッドに定評がある。MENSA会員。著書に『38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)、『男の服選びがわかる本』(池田書店)などがある。
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(スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事 森井 良行)