高速移動するブラックホール「RBH-1」は誕生時に弾き飛ばされた? “星の軌跡”の最新研究成果
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のTousif Islam氏とTejaswi Venumadhav氏、ジョンズ・ホプキンス大学/テキサス大学オースティン校のDigvijay Wadekar氏は、銀河から飛び出して高速移動する超大質量(超巨大)ブラックホールとみられる天体「RBH-1」について、“暴走”とも表現される高速移動のきっかけに関する研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Physical Review Letters」に掲載されています。

秒速900km以上で“暴走”する巨大なブラックホール
RBH-1は、地球から約76億光年彼方の銀河から放出されたとみられる天体です。イェール大学のPieter van Dokkum氏を筆頭とする研究チームが2023年に報告したもので、ハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡の画像から偶然発見された長さ約20万光年の直線状構造の先端に位置しています。
この構造をvan Dokkum氏らは「高速移動する超大質量ブラックホールの航跡に沿って形成された星々」だと解釈したものの、「横から見た円盤銀河」だ、などとする他の仮説も示されました。
ブラックホールが残した「星の軌跡」 ハッブル宇宙望遠鏡の画像から偶然発見(2023年4月10日)ブラックホールが残したものではなかった?“星の軌跡”の新たな研究成果(2023年5月13日)
その後、van Dokkum氏らは2024年にジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡で改めて観測を行った結果、構造の先端にあるのは「秒速約954kmで高速移動する超大質量ブラックホール」であることが確認されたとする研究成果を2026年に入って発表しています。RBH-1という名前はこの時に付けられました。

ブラックホール連星の合体時に弾き飛ばされた?
Islam氏らは、RBH-1がこれほどの高速で弾き飛ばされた理由を探るために、複数のモデルを用いてブラックホール連星のシミュレーションを行いました。連星を成す2つのブラックホールが合体する時、放出される重力波の強さが方向によって偏っていた場合、合体で誕生したブラックホールがその反動で弾き飛ばされる可能性があるからです。
その結果、RBH-1の速度を説明するには、2つのブラックホールの質量比が最大でも6倍以内であり、重いほうのブラックホールが理論上の上限に対して7~8割という高速で自転していて、なおかつその自転軸が傾いていて歳差運動をしながら合体する必要があるとわかりました。
私たちが観測しているRBH-1は、母体となった超大質量ブラックホールどうしの合体から約7000万年後の姿だと考えられています。合体したブラックホールの質量比があまり大きくないことから、RBH-1の母体となった2つのブラックホールがそれぞれ属していた銀河もまた同程度の質量を持っていたことが示唆されるとIslam氏らは述べています。
また、こうした合体にともなう重力波はESA(ヨーロッパ宇宙機関)主導で打ち上げが計画されている宇宙重力波望遠鏡「LISA」の観測対象になり得ることから、今回の手法を検証する手がかりが得られるかもしれないと期待されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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