「食後の眠気」に効果的?大人が実践すべき“正しい昼寝”の「3つの条件」【医師監修】
睡眠負債を解消しようと、長めの昼寝や休日の寝だめに頼る方は少なくありません。しかし、15時以降の昼寝や30分を超える長時間の昼寝は、夜の睡眠を妨げるリスクがあります。「睡眠惰性」と呼ばれる目覚め後の強い眠気や倦怠感も生じやすく、昼寝のメリットを十分に享受できなくなることもあります。昼寝はあくまで補助的な手段であり、根本的な夜間睡眠の見直しが重要です。
監修医師:
後平 泰信(医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院)
2009年に旭川医科大学医学部を卒業。循環器内科のスペシャリストとして、長年、札幌東徳洲会病院を中心に救急医療や心疾患の治療に従事。2023年には睡眠・無呼吸・遠隔医療センター長を歴任し、最新技術を用いた診療体制の構築に尽力。2024年より病院長に就任し、2025年10月の「札幌もいわ徳洲会病院」への名称変更。日本循環器学会 認定循環器専門医。日本睡眠学会 総合専門医・指導医。日本スポーツ協会公認 スポーツドクター。日本内科学会 認定内科医。
睡眠負債と昼寝の罠②--正しい昼寝の活用と間違いやすいポイント
昼寝そのものが悪いわけではありません。適切な方法で行えば、昼寝は睡眠負債の部分的な軽減や日中のパフォーマンス向上に役立つことが知られています。このセクションでは、昼寝の正しい活用法と、間違いやすいポイントについて整理します。
効果的な昼寝の条件--時間・長さ・環境のポイント
研究では、昼寝の効果を最大限に引き出すためのいくつかの条件が示されています。まず重要なのは「時間帯」です。昼寝に適しているのは、午後1時から3時の間とされています。この時間帯は、人間の体内時計上で自然に眠気が高まる時間帯であり、夜間睡眠への影響が出にくいとされています。
次に「昼寝の長さ」です。一般的に推奨されるのは10分から20分程度です。この時間内であれば、浅い眠りの状態(ノンレム睡眠の初期段階)にとどまることができ、睡眠惰性が生じにくく、覚めた後も頭がすっきりしやすいとされています。20分を超えると深い眠りに移行するリスクが高まるため、タイマーを設定しておくことが有効です。
環境面では、完全に横になるよりも椅子に座ったままや軽くリクライニングした状態が、深い眠りに入りにくくよいとされています。また、眠る前にコーヒーや緑茶などカフェインを含む飲み物を摂取し、20分後に覚めるよう設定する「カフェインナップ」という方法も、一部の研究で有効性が示されています。カフェインの効果が現れるまでに約20~30分かかるため、昼寝と作用のタイミングが合い、覚めた後にすっきりしやすくなります。
昼寝が逆効果になるケース--こんな方は注意が必要
昼寝が推奨されない、あるいは慎重に行うべきケースもあります。特に注意が必要な方として、以下が挙げられます。
夜間の不眠が続いている方(入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒など)
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方
抑うつ状態や気分障害がある方
高齢で夜間睡眠が浅くなっている方
これらの状況では、昼寝が夜の睡眠をさらに妨げたり、基礎疾患の症状を見えにくくしたりする可能性があります。不眠症の認知行動療法(CBT-I)では、睡眠の質を高めるために昼寝を制限することが治療の一環として行われることもあります。
また、高齢の方の場合、日中の昼寝時間が長い(1時間以上)と、かえって認知機能の低下や転倒リスクの上昇と関連するとする報告もあります。昼寝は補助的な手段であり、夜間睡眠の代替にはなりません。睡眠に関する悩みが続く場合は、内科や神経内科、睡眠外来などへの相談が重要です。
まとめ
睡眠負債は、日常の小さな積み重ねによって静かに蓄積し、認知症リスクの上昇や日常生活の質の低下につながる可能性があります。昼寝は活用の仕方によって効果的な補助手段となりますが、タイミングや時間を誤ると逆効果になることも理解しておく必要があります。睡眠負債の返済には、継続的な生活習慣の改善が不可欠です。まずは毎日の就寝・起床時刻を整えることから始め、改善が感じられない場合は内科や神経内科など専門の医師に相談してみてください。
参考文献
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
日本睡眠学会「睡眠の基礎」
厚生労働省 「睡眠と生活習慣病との深い関係」

