日本人の“本当の平均値”とは?知っておくべき塩分の“適正量”【医師監修】

「塩分は控えめに」とよく言われますが、具体的な数値を把握している方は多くないかもしれません。厚生労働省の食事摂取基準や日本高血圧学会のガイドラインをもとに、1日あたりの塩分の目安量を分かりやすく整理します。日本人の平均摂取量との差についても触れながら、今の食生活を見直すきっかけをお伝えします。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

塩分の適正量:1日にどれだけとってよいのか

「塩分は控えめに」とよく耳にしますが、具体的に1日あたりどれくらいの量が身体にとって適正なのかを正確に把握している方は多くありません。このセクションでは、厚生労働省などの公的基準をもとに、塩分の適正量とその考え方について分かりやすく解説します。

厚生労働省が示す食塩相当量の目標値

厚生労働省が策定する『日本人の食事摂取基準(2025年版)』によると、食塩相当量の1日あたりの目標量は、成人男性で7.0g未満、成人女性で6.5g未満と定められています。 これは生活習慣病(高血圧や循環器系疾患など)の発症・重症化予防を目的とした目標値であり、WHO(世界保健機関)が掲げる世界的な推奨基準「1日5.0g未満」に向けた国内の段階的な目安となっています。

なお、この目標量は「それだけ摂らなければいけない量」ではなく、「超えてはいけない上限の目安」として設定されています。生命維持のために最低限必要なナトリウムの推定平均必要量は1日あたり約600mgとされており、これを食塩相当量に換算するとわずか1.5g程度です。つまり、身体が機能するために必要な塩分量は意外なほど少なく、日常の食事では意識しないと過剰摂取に陥りやすい環境にあるといえます。

現在の日本人の平均摂取量との差

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」の結果では、日本人成人の1日あたりの平均食塩摂取量は男性で10g前後、女性で8~9g前後という高い数値が報告されています。これは厚生労働省の目標量(男性7.5g・女性6.5g未満)を大きくオーバーしているだけでなく、多くの方が「自覚がないまま慢性的な塩分過多の状態にある」ことを示しています。

目標値と現実の摂取量の差を少しずつ縮めていくためには、無理な我慢をするのではなく、まず自分が普段の食事でどれくらいの塩分を摂取しているか客観的に知ることがスタートラインとなります。加工食品や市販のお弁当のパッケージ、外食のメニュー表に記載されている「食塩相当量」の欄をチェックする習慣をつけるだけでも 、減塩への意識は大きく変わってきます。

高血圧の方に推奨される食塩摂取量の水準

日本高血圧学会が発行する「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、高血圧と診断された方に対して「1日6.0g未満」の食塩摂取を強く推奨しています。これは一般向けの目標値よりもさらに厳しい水準であり、現在の日本人の平均摂取量から見ると約3~4g減らす必要があります。高血圧の方にとって、この減塩水準を達成することは、降圧薬を飲むことと並ぶ非常に重要な基本治療として位置づけられています。

また、慢性腎臓病(CKD)の方にとっても、食塩摂取量を6.0g未満に抑える管理は治療方針の中核をなします。腎臓の機能が低下していると、余分な塩分(ナトリウム)を尿として体外へ排出する力が弱まるため、塩分過多が血圧上昇や浮腫(むくみ)を引き起こし、腎臓へさらにダメージを与える悪循環に直結します。高血圧や持病がある方は、主治医や管理栄養士の指導のもとでご自身に最適な目標値を設定し、計画的に取り組むことが大切です。

まとめ

塩分過多は、現代の日本人にとって身近で見過ごされやすい健康課題です。1日の適正量(男性7.5g未満・女性6.5g未満)や基準値を把握し、食事内容の見直し・カリウムの積極的な摂取・適度な運動など、生活習慣全体で取り組むことが塩分を下げるうえで効果的です。まずは食品の栄養成分表示を確認する習慣から始め、気になる症状や数値がある方は、内科や循環器内科など専門の医師への相談を早めに行動に移してみてください。

参考文献

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」

日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」

農林水産省「食塩の取りすぎに注意」