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薬局に駆け込んできた宅配ドライバーが、まっすぐ飲料の棚に向かい、水を手に取った。どこかに電話をかけ、「ギブ、ヤバい」と話している──。弁護士ドットコムニュースの記者がこの夏、目にした光景だ。

この暑さの中を歩き、階段を上り、荷物を運ぶ。大変な仕事だが、いまやドライバーなしに私たちの生活はもう成り立たない。

では、宅配各社はドライバーをどう守っているのか。大手各社の対策を調べると、「配達を休む」という判断基準を設けたり、ファン付きベストを大量に導入したりと、さまざまな取り組みが進んでいた。

荷物を受け取る私たちにできることもある。酷暑の宅配を支えるために、現場と利用者、それぞれにできることを考えたい。

●40℃以上は「酷暑日」

気象庁は、最高気温が40℃以上の日の名称を「酷暑日」に決めた。35℃以上の「猛暑日」に続く呼び名で、この夏から予報用語として使われている。

日本気象協会によると、酷暑日となった地点数は8月上旬までに延べ34地点にのぼり、2025年を上回って過去最多となった。猛暑日も7月中旬から急増している。

●日本郵便は「配達を休む」基準をつくった

日本郵便は6月、屋外作業中の熱中症対策として、配達業務の運用を見直すと発表した。

環境省と気象庁が「熱中症特別警戒アラート」を発表した地域では、二輪車や自転車、台車、徒歩による配達、取集、集荷を原則休止する(四輪車による配達は含まれない)。

また、「熱中症警戒アラート」が発表された日や、気温40℃以上の酷暑日など、郵便局長が危険と判断した場合は、気温の高い時間帯を避けて配達する。

同社は時間帯指定を含む一部の郵便物に遅れが出る可能性があるとしたうえで、「社員の安全確保と、安定した郵便・物流サービスを継続的に提供するための措置」と理解を求めている。

佐川急便も7月、自社サイトで熱中症対策を公表した。

経口補水液と冷却剤をセットにした応急キットを全拠点・全車両に常備し、暑さ指数(WBGT)を1日2回計測。出発前の点呼では、夏場は朝食をとってきたかどうかも確認する。

クールファンベストやネッククーラーに加え、ハーフパンツの着用も認めている。

●ヤマト運輸、ファン付きベストは累計10万着

ヤマト運輸は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、熱中症対策のガイドラインとマニュアルを作成し、注意喚起と発生時の報告フローを社内に周知していると回答した。

労働環境の把握や従業員へのヒアリングをもとに、空調設備や冷風機、スポットクーラー、シャーベット状の飲料水、経口補水液、塩飴などを配備。社内サイトには対策備品を掲載し、各事業所からすぐ発注できるようにしている。

装備の柱の一つが、2021年に貸与を始めた「ファン付きベスト」だ。2026年6月末時点で、全国のセールスドライバーと作業職の社員を対象に、累計10万着を導入した。

暑さを「数字」で把握する取り組みも広げている。一部の事業所に置いていたWBGT測定器を、2025年から全国に約3000台導入した。

「設置場所ごとの作業環境を正確に把握し、いち早く状況に応じた対策をとれる環境をつくっています」

さらに2026年4月には、休憩取得の目安を定めた「休憩取得ガイドライン」を策定。装備を充実させるだけでなく、どのような状況なら休憩をとるべきか、その判断のよりどころも示した。

●熱中症の発生は「約3割減」

こうした取り組みは、数字にも表れている。

ヤマト運輸は具体的な件数の開示は控えたものの、ドライバーを含む従業員の2025年度の熱中症発生件数は、2024年度と比べて約3割減ったと回答した。

一方、対策にかかる費用は膨らんでいるという。

「熱中症対策に伴うコストは増加していますが、引き続き従業員が安全・安心して働くことができる環境の整備に努めてまいります」

●受け取る側にできること 「一度で受け取る」が現場を助ける

では、荷物を受け取る側にできることはあるか。

この問いにヤマト運輸が挙げたのが、受け取り方の選択肢を活用してもらうことだった。

同社は「クロネコメンバーズ」の会員向けに、営業所やコンビニ、宅配ロッカーなど、自宅以外の受け取り場所を広げてきた。2024年6月には、宅急便と宅急便コンパクトの受け取り方法に「置き配」を加えた。

「お客さまがお荷物を一度で受け取りやすくなることで、結果的に再配達の削減や物流の効率化、温室効果ガス排出量の削減にもつながると考えています」

国もこうした動きを後押ししている。

国土交通省が大手宅配事業者を対象にした調査によると、2026年4月の再配達率は約7.6%で、前回調査の2025年10月より0.7ポイント下がった。置き配や宅配ボックスなど、多様な受取方法の利用率は約31.0%。国は2030年度までに50%程度に引き上げることを目指している。

置き配を選ぶ、宅配ボックスを使う、指定した時間には、できるだけ在宅する。

一つひとつは小さな選択だが、再配達が一件減れば、ドライバーが炎天下をもう一往復する必要もなくなる。この夏の暑さの中で、玄関まで荷物が届くのは、決して当たり前のことではない。