新田さん。ユニークなTシャツは、オンライン会議で雑談ネタづくりの一環。「オンラインだからといって無味乾燥なコミュニケーションにならないよう心がけています」と話す

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新型コロナウイルスの感染拡大を機に国内に定着した「リモートワーク」という働き方が、転換期を迎えている。LINEヤフーやGMOインターネットなど、大手IT企業が続々と「原則出社」への方針転換を表明しているのだ。会社を退職した人々の声をもとに、「出社回帰」の趨勢が転職市場にどのような影響を与えているのかを追った。
◆地方移住を決意、住居契約も済ませた後での「出社回帰」宣言

「経営上の方針転換も起こりうることは、自分なりに理解していたつもりです。ただすでに引越しの準備も進めていた中で、青天の霹靂だったことは否めませんでした」

過去をこう振り返るのは、2025年までLINEヤフーのメディア関連事業部に在籍していた柳葉真治さん(仮名、30代)だ。同社在籍時、日々の業務はWebツールで完結しており、’20年以降の出社頻度は月1回程度と、リモートワーク中心の働き方だった。

見通しが大きく変わったのは’24年末。同社が「コミュニケーションの質の強化」を背景として、’25年4月以降は所属部署に応じて原則週1回ないし月1回の出社を義務づけると公表。さらに‘26年4月には、原則として出社回数を週3回以上に段階移行することも発表されている。オフィス以外の好きな場所で働ける「どこでもオフィス」制度を’13年に設けるなど、早くからリモートワーク制度の充実に取り組んできた同社の方針転換は、世間で大きな話題をさらった。

柳葉さんにとってこの「宣言」が手痛かったのは’24年に入り、関東郊外への移住を決意し、すでに住居の契約も済ませていたためだ。リモートワークが4年以上続いており、しばらくは体制が変わらないだろうという判断のもとだった。

「’24年末の時点で、『週3回出社に段階移行の可能性がある』ともすでに聞かされていました。新たな住居から会社までは往復3時間ほどで、映画1本分を見られる時間を失うことになる。先々のことも考え、退職を決意しました」

転職活動を経て、現在はフルリモートができる他のIT企業で働く。「会社は、従業員にとっての『セーフティ・ネット』ではない。組織を信じすぎず、いつ方針転換があっても動けるような心構えをしておくことが大切」と話す。

同社の発表によれば、LINEヤフーグループの’25年度の自己都合退職者数は2791人。’24年度は1695人で、前年度から約65%増えた。親会社に限らず主要子会社の退職者も含んだ数字ではあるものの、勤務体制の変更が退職を考える一因となった可能性も見て取れる。

「社内で『出社回帰』の発表があった時点で、周囲にざわめきはありました。特に子育て中の方は『リモートワークから時短勤務に戻さないといけない』と切実に戸惑われていた。在籍時に知っていたうちの何人かも、すでに退職しています」(柳葉さん)

◆出社後の通勤時間は「往復4時間」と知り、迷わず転職を決意

都内のIT企業でエンジニアとしてフルリモート勤務をしていた新田勝典さん(40代前半)も、会社の「出社回帰宣言」をきっかけに転職を決めた一人だ。

「技術力を提供するSES(システムエンジニアリングサービス)の一員として、主にシステムのバックエンド業務を担当していました。勤務場所はプロジェクトごとに異なりますが、自分の場合は出社義務がなかった。ただし部署内ではオンライン会議をマメに行い、顔を見ながら状況報告もしていたので、働く上で不都合はありませんでした」

状況が変わったのは’26年に入ってからだ。勤務先が他企業と合併し、今後は自社への出社が原則となる可能性が高いと上司から聞かされたという。

「元々うっすらと聞いていたので、初めはやむなしと思っていました。ただし、出社先のオフィスは自宅から往復4時間もかかる場所にあった。子どもも小さく手もかかる状況だったことから、迷わず転職を決意しました。秋からは、リモートワーク可能な企業で働く予定です」