ATMに小銭を詰まらせる人が増えているという

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 現在、ゆうちょ銀行のATMは、硬貨を1枚預けるだけでも110円の手数料(26枚からは220円、51枚からは330円)を取られる。つまり、100円玉を1枚入金したら、10円損するという意味不明な状態になっている。この状況に釈然としない思いを抱いている人は少なくないようだ。

 一方、メガバンクATMでは、小銭を1回につき100枚まで“無料”で預けることができる。そのため、都市銀行に小銭を預ける人が増えているといわれるが、ATM硬貨を大量に流し込んで詰まらせるなどして、トラブルを起こす客がいるのだという。【取材・文=山内貴範】

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溜め込んだ小銭をどうするか

 政府は、平成27年度以来11年ぶりに、流通用の1円玉を大量に製造することを決めた。これは、摩耗した硬貨が増えていることや、高市早苗首相の公約が実現すれば、来年4月には食料品にかかる消費税が1%になり、小銭の需要が高まる可能性があるためだ。

ATMに小銭を詰まらせる人が増えているという

 日本では先進国の中でもキャッシュレスが充分に浸透しておらず、未だに現金払いの文化があるが、それでも現金を使える場は少なくなりつつある。そのうえ、前述の通り、ゆうちょ銀行がATM硬貨を預金する際に手数料を取るようになったことで、小銭は行き場を失いつつあるのだ。

 100円玉貯金などで小銭を大量に貯め込んでいた人は、どうすればいいのか――。困った挙句、スーパーマーケットのセルフレジに大量に投入するようになった。そのせいで、セルフレジが詰まるトラブルが起こっているといわれる。併せて、同様のトラブルが起こっているのが、手数料なしで硬貨の預け入れができるメガバンクATMだという。

小銭を預けるために長時間ATMを占拠

 あるメガバンクの行員は、「うちは、これまでゆうちょ銀行に預けられていたはずの小銭の“処分先”になっている」と皮肉交じりに話す。昨今、一人の客が、ATMを長時間“占拠”する光景をたびたび目にするようになったそうである。

「大量に貯め込んだ小銭を、ATMに投入するお客様が増えました。機械が種類ごとに分類するため、硬貨の処理は紙幣と比べると時間がかかる。お昼時などの混雑する時間帯にそれをやられると、列がいつまで経っても捌けないんですよ。

 当行のATM硬貨の投入は1回あたり100枚までと決まっているため、大量に預けるには、何回かに分けて入金しないといけません。大量に硬貨を預けたいお客様が長時間にわたってATMを使っていると、いつまで経っても後ろのお客様の順番が回ってきません。結果、お客様同士のトラブルの原因になってしまうのです……」

 この銀行に設置されているATMは3台しかない。にもかかわらず、小銭を入金する客がATMを1人で30分も使い続けた結果、長い行列ができ、口論になったケースがあるそうだ。しかも、よりによってこの時は1台のATMがメンテナンスで休止中だったため、列が一向に進まなかったそうである。

スロットのメダルを投入

 小銭を預ける際のトラブルはまだある。多いのが、“日本の硬貨ではないもの”を入れてしまうパターンである。前出の行員がこう話す。

「最近のATMは性能が上がっており、硬貨ではないものが投入されたら、すぐに返却される作りになっています。ただ、外国の硬貨やスロットのメダルを入れてしまったせいで、ATMが止まってしまうケースがたまにあります。

 何度も入金操作をしても戻ってくるため、お客様が怒り出し、行員にカスハラ行為を働くお客様もいるのです。またご自身が、“硬貨ではないものを入れている”という自覚がないケースが多く、本当に困ってしまいます」

 また、トラブルになりやすいのが記念硬貨である。

「最近の記念硬貨は、通常の硬貨と同じサイズで製造されていることが多い。ところが、昭和の時代は額面が500円の記念硬貨でも、通常の500円玉よりも大きく作られていたりします。それをATMに強引に入れようとして、“なぜ、何回やっても戻ってくるんだ”とお怒りになったお客様もいました」

折れ曲がった硬貨も投入厳禁

 いやはや、こんなことで苦情を言われては、銀行員もたまったものではない。銀行は「金を預けてやっている」という意識を持つ客が多いため、カスハラが起こりやすいという意見もある。ほかにも、硬貨に関するトラブルではこのようなケースもあるそうだ。

「現行硬貨でも、折れ曲がったり、変形した硬貨ATMで受付できません。あと、意外に多いのが焼かれてしまった硬貨です。地方によっては、火葬の際に“三途の川の渡し銭”として、遺体とともに硬貨を焼く文化が残っているんですよ。

 戦前の硬貨を入れてしまう人もいます。大正5年から昭和13年にかけて発行された1銭硬貨(注:コレクターの間では“桐1銭青銅貨”と呼ばれる)は、現行の10円玉とサイズがほとんど変わらないうえ、銅で作られているので色合いもそっくりなんですよ」

 この1銭硬貨の直径は23.03mm、現行の10円玉の直径は23.5mmである。大差ないため、かなり紛らわしい。一昔前は機械で10円玉と識別されてしまい、同一硬貨を50枚まとめた“ロール”に混入する事案が多発していたそうだ。今でも10円玉と思われて流通していることがままあるそうで、なかなか厄介な代物だそうである。

紙幣のほうが詰まりやすい?

 ところで、硬貨に関するトラブルも多いものの、詰まる頻度でいえば紙幣のほうが高く、トラブルに見舞われやすいそうである。

 実は筆者も紙幣を詰まらせてしまい、ATMを長時間停止させてしまったことがある。10枚の1000円札を数えやすいようにと、1枚を折り曲げて、巻いた状態にしていた。これを誤ってそのままATMに入れてしまったところ、ATMが異音を発して止まってしまった。復旧には30分ほどかかり、銀行には多大な迷惑をかけた。行員がこう話す。

「それはよくあるケースですし、紙幣をクリップや輪ゴムで止めたまま入れてしまうお客様もいます。ほかにも、濡れている紙幣を入れてしまい、ATMの中でぐちゃぐちゃになってしまったケースもあります。実は、ATMは繊細な機械で、下手すると壊れてしまうこともあるので注意が必要です。

 こうしたトラブルを防ぐためにも、硬貨も、紙幣も、ATMに入れる前に確認してほしいですね。くれぐれも、小銭を大量に投入したり、ポケットの中でしわしわになった紙幣をそのまま入れないでいただければと思います」

 小さな心がけで、トラブルを回避することができる。機械に対しても心遣いが大切、といったところだろう。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部