JR蘇我駅で一夜を過ごし、自衛隊のバスに乗り込む帰宅困難者ら(14日、千葉市中央区で)

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 突然の線状降水帯発生で記録的な大雨が降り、千葉県内の広域が浸水した13日夜、帰宅困難の約4000人が一夜を明かした場所がある。

 JR東日本の京葉、外房、内房の3路線が発着し、都内への通勤客も多い蘇我駅(千葉市中央区)だ。当時、駅周辺では水深1メートル程度の冠水が発生。現場にいた人たちの証言から、1時間足らずで一気に水かさが増して孤立し、駅構内に利用客があふれた状況が浮かび上がった。(千葉支局 浜田喜将、石本大河、大治有人)

 午前中からの雨が強まったのは夕方だった。

 駅東口のビルに入るドラッグストア店員の女性(47)(千葉市美浜区)は午後6時頃、駅前がくるぶしほどの高さに冠水しているのに気付いた。仕事を終え、電車で帰ろうと身支度をしていた時だった。

 店は道路より約25センチ高いが20分後に浸水が始まり、午後7時前に膝の高さまで水位が上昇。商品が流され始めた。「危ないから上の階に逃げよう」。足止めされた客と同僚の約10人でビル2階に垂直避難した。

 水が引いて外に出たのは翌日午前2時頃。同僚の車で中央区の実家に身を寄せた。「いつ帰れるか分からず、ずっと不安だった」

 雨量データは午後6時以降の急変を裏付ける。駅から約2・6キロ離れた県の観測点「千葉土木事務所」の雨量は、午後6時までの1時間で40ミリだったが、同7時までは119ミリと3倍に。駅周辺で排水しきれない雨水が地表にあふれた。

 駅は、ホームが1階、駅舎が2階という構造で、東西2か所の出口がともに冠水した。特に東口が深刻で、午後7時頃には深さ1メートルほどに達した。

 一方、電車はその後も駅に到着した。「外は危険です。駅の中が安全です」とのアナウンスが流れる中、構内に滞留する客がみるみるうちに増えていった。

 さらに線路も水につかり、ホームに停車中だった電車2本が行き場を失った。午後7時45分までに3路線全てが運転見合わせとなり、約4000人が帰宅困難者になった。千葉市からは午後9時10分、JR東に避難所開設の連絡があったが、「冠水で避難所まで行けない」と報告した。

 利用客は2階改札付近に滞留し、ぐったりした様子で床や階段に座り込んだ。スーツケースを持った親子連れや妊婦もおり、子どもの泣き声が響く中、構内1か所の女性トイレには1時間半待ちの列ができた。

 約3時間半立ちっぱなしだった千葉大3年の男性(21)(大網白里市)は午後9時頃、疲れて床に座り込んだ。「雨の勢いがやまず、2階まで浸水するのではと恐怖だった」

 14日午前1時頃になると冠水が収まり、電車2本がホームに到着。計4本が「列車ホテル」となり、乗客は朝まで車内で過ごした。

 雨は14日未明に小降りとなったが電車は動かず、利用客の多くが構内にとどまった。停止中のエスカレーターの段差を枕代わりにして横になる人もいた。

 午前1時過ぎには東口の水も引き始め、外に出る利用客も現れた。冠水が軽かった西口のコンビニからは多くの食料品が消え、午前3時頃、駆け付けた市職員が水や非常食を配った。

 「帰宅」が始まったのは午前6時半。県の要請で出動した自衛隊が、近くの一時滞在施設へバスで輸送した。会社員男性(23)(茂原市)は「早く家で寝たい」と足取り重く、バスに乗り込んだ。

 約4000人の滞留について、千葉大の丸山喜久教授(都市防災)は「夜、冠水した道を帰宅するのは危険。『外に出ないで』というJRの呼びかけは適切だった。避難指示が出ている際は、電車が動いていても職場や学校など安全な場所にとどまる選択肢も持ってほしい」と話している。

「防災ポーチ」携行を

 蘇我駅のケースのような外出先での帰宅困難に備えるにはどうすればよいのか。災害現場に詳しい防災システム研究所(東京)の山村武彦所長は、最低限の必需品を入れた「防災ポーチ」の携行を呼びかける。

 スマートフォン充電用のモバイルバッテリーや現金、非常用トイレのほか、雨具、お菓子、使い捨てカイロ――などが想定される。山村所長は「予想外の災害はいつでも起こりうるので、当たり前のこととしてポーチを持ち歩くのが大事だ。立ち往生に巻き込まれたら互いに声を掛け、助け合ってほしい」と語る。