憧れのアイドルを“客席から見るしかない自分”が辛くて涙…普通なら卒業する年齢で「私は始める」元アパレル社員が“最後の挑戦”でつかんだ夢
「ライブに行くたび、泣きながら見ていました」
【写真を見る】デビューから1年足らず、もうすっかり“アイドルの顔”に 無邪気な笑顔、ふと振り返る大人びた表情 兵頭美波の撮り下ろしカット
アイドルが好きなのに、ステージを見ることが苦しい。アップアップガールズ(2)の兵頭美波(23)には、そんな時期があった。憧れた「ハロー!プロジェクト」のステージで輝くアイドルと、客席から見ることしかできない自分。その差を突きつけられるように感じたからだ。
兵頭がアイドルを目指すきっかけとなったのは、モーニング娘。の道重さゆみだった。バラエティー番組で見せるかわいさに惹かれ、やがて自分もメンバーとしてモーニング娘。の楽曲をパフォーマンスしたいと思うようになった。

高校1年で初めてハロー!プロジェクトのオーディションに挑戦。書類で落ち、次に受けたモーニング娘。15期メンバーオーディションでは途中まで進んだものの、合格には届かなかった。それでも、何でもいいからアイドルになりたいとは思えなかった。
「道重さんが自分の大好きなグループを大切にしながら活動する姿に憧れていたので、自分が好きだと思える場所に入りたい気持ちが強くて」
「年齢」の壁に阻まれ就職
しかしオーディションを受けられる年齢制限を超え、ハロプロへの道は閉ざされた。大学では被服を学び、在学中からアルバイトとして働いていた好きなアパレルブランドにそのまま就職。内定者代表に選ばれ、花形店舗にも配属された。目指したのはブランドのプレスだった。
「そこはハロプロのアイドルの方がモデルを務めているブランドだったんです。私はアイドルと一緒に何かを作り上げたいという思いがあったので、プレスや広報に関わる仕事であればそれが叶うかなと思ったんです」
アイドルにはなれなかったが、いつか一緒に何かを作り上げたい。そこにもアイドルへの思いは残っていた。
“アプガ(2)”に「こういうグループで活動できたら…」
兵頭がアップアップガールズ(2)と出会ったのは大学時代。アイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」で目当てだったハロプロのアイドルグループ「BEYOOOOONDS」の代打として出演したステージを見て、パフォーマンスに胸を打たれた。
「アップアップガールズ(2)は曲やステージも魅力的だったんですけど、メンバーの人柄やグループの雰囲気が好きだったんです。『こういうグループでアイドルとして活動できたら幸せだろうな』という目で見ていました」
だが、ライブには通わなかった。ライブに行けば行くほど、自分がファンとして固定され、同じステージに立てない現実を意識してしまう。だから映像を一人で見ながら、オーディションが行われる日を待った。
社会人として充実した日々を過ごしていた2025年9月、「アップアップガールズ(2)新メンバーオーディション2025」の開催が発表される。オーディションがなければ、そのまま会社で頑張るつもりだった。もし受けて落ちたとしても、これ以上入りたいと思える場所には出会えない。最後の挑戦だと思った。
「これまでたくさんのオーディションを受けてきましたが、どこか『どうせ自分なんかは受からない』と思う自分がいたんです。でも、今回はもう何がどうなっても楽しんで、やり切ろうみたいな気持ちで挑みました。日々全力で思い残すことのない過ごし方をしていたので、終わった後は達成感というか、めちゃめちゃすごい清々しい気持ちでした」
「普通なら次の人生を考えるような年齢」
最終面接として呼び出された場所には、カメラとメンバーが待っていた。告げられたのは合格だった。
「うれしい気持ちと同時に、喜びをかみしめる間もなく、頑張ろうという覚悟に変わりました。普通ならアイドルをやり切って次の人生を考えるような年齢で、私は始める。もう、この人生を頑張ろうって」
会社にはオーディションを受けていることを伝え、合格までは仕事と両立した。店長は翌月、兵頭がいない前提でシフトを組み、最後の出勤日には同僚たちが送り出してくれ、後にライブにも来てくれた。それは兵頭が、夢を追うために目の前の仕事を投げ出さなかった証しでもある。
社会人を経て、アイドルとしては遅いスタート。加入後は未経験ゆえ、歌やダンスで壁にぶつかり続けている。だが、つらくはない。
「アイドルとして、アイドルがぶつかる壁にぶつかっていることがうれしいんです」
「あの時、私、そこにいた」
グループに加入して1か月後の2025年12月29日には大舞台となるZepp DiverCityのステージに立った。その場所は、道重さゆみのラストライブを客席から見た場所でもあった。
「客席を見ながら『あの時、私、そこにいた』と思って。すごく嬉しかったですし、道重さんと同じステージには立ってるんですけど、自分の理想のアイドルではまだ全然なくて。その理想をどこまでも追い続けたいなと思いました」
憧れた側から、憧れられる側へ。目指すのは、自分だけの世界観を持ちながら、グループとファンへの大きな愛を伝えられる人だ。
グループだけでなく、ソロとして水着グラビアにも挑戦し、初々しさと清楚なたたずまいで評判を呼んでいる。水着での撮影に最初は不安を抱えたが、撮影を通して「体の一部分ではなく、写真全体でかわいさを作る」面白さを知った。
将来はアパレルで働いた経験も生かし、個人ではファッション誌にアイドルとして掲載されること、グループとしては日本武道館ライブを目標に掲げる。
兵頭はアイドルを「夢」と表現する。かつてアイドルのライブに行くたびに泣いていたファンは、今度はアイドルとして誰かに希望を渡す側になろうとしている。
徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。ウェブメディアウォッチャー。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。著書に日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい! アイドル&グラビア名作写真集ガイド」(玄光社)。noteでマガジンを連載中 X:@tatsunoritoku
デイリー新潮編集部
