ソシエダの同点弾にも絡んだ久保。チェルシーとのPSMで先発し、果敢なプレーでゴールに迫った。(C)Getty Images

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 チェルシーの本拠地スタンフォード・ブリッジで、久保建英は何度もゴールへ向かった。

 右サイドのスペースへ抜ければ、そのままペナルティエリアに入り左足を振る。ゴール前のFKも自ら蹴った。壁にはね返されたボールを拾い直すと、今度は右足でクロス。前半終了間際には右足のボレーも狙った。63分間の出場で、少なくとも4本のシュートを放ったことにも、この日の積極性は表われていた。

 8月15日のプレシーズンマッチ、チェルシーレアル・ソシエダ戦。久保にとっては、北中米W杯で左膝を負傷してから初めて先発した試合だった。

 昨季はリーグ戦2得点に終わった。怪我にも悩まされ、ソシエダ加入後に積み上げてきた数字からすれば、物足りなさの残るシーズンだった。クラブはコパ・デル・レイを制したものの、久保自身はコンディションを整えながら試合を重ねる難しさと向き合った。

 それでもW杯では、日本代表の攻撃を担う存在として大会に入った。ところが日本の初戦となった6月14日のオランダ戦で左膝を負傷──。その後はピッチに戻れず、世界の舞台で自らの力を示す機会を失ったまま、悔しさを残して大会を終えた。

 新しいシーズンへの準備も、まずは膝を治すところから始まった。

 実戦に戻ったのは8月8日。ドイツ・ケルンのラインエネルギー・シュタディオンで行なわれたFCケルンとのプレシーズンマッチで、61分から途中出場した。オランダ戦以来54日ぶり。左膝にテーピングを巻きながら約30分間プレーし、右サイドからドリブルやパスで攻撃に加わった。
 
 その1週間後、舞台はロンドンへ移った。約30分の途中出場から、今度は先発で試合を始める段階まで進んだ。

 4−2−3−1の右MFに入った久保は、立ち上がりから積極的だった。まだ100%の状態には見えなかったが、動きそのものは悪くない。何より、ボールを受けた後に前を向こうとする姿勢が目についた。

 シャビ・アロンソ新監督が率いるチェルシーは、最終ラインを高く押し上げ、陣形全体をコンパクトにして圧力をかけてきた。ソシエダが容易にボールを前へ運べない時間もあり、久保も自陣深くまで戻って守備をする。それでも攻撃へ転じれば、味方へ預けるだけではなく、自らゴールへ向かう選択を繰り返した。

 右のスペースへ抜け出して放った左足のシュートはサイドネットへ。直接FKは壁に阻まれたが、そのボールを自ら拾い直してPA内へ進入し、右足のクロスから味方のシュートまでつなげた。

 ソシエダの同点弾にも絡んだ。

 GKロベルト・サンチェスが防いだボールを胸で収めてシュート。DFにクリアされたボールをホン・アランブルが拾い、強烈な一撃をゴール右へ突き刺した。久保に得点もアシストも記録されなかったが、自らフィニッシュへ持ち込んだプレーからゴールが生まれた。

 最終的にソシエダは1−3で敗れた。それでも前半はチェルシーと互角に渡り合い、押し込む時間も作った。ファイナルサードで決め手を欠く場面が多いなかで、久保がボールを持つと攻撃のテンポが変わった。

 それは、右サイドでの相手との駆け引きにも表われていた。

 久保と対峙したのは、今夏にチェルシーへ加入したイタリア代表DFマルコ・パレストラだった。パレストラは久保に対し、正面から向き合うというより、内側へのカットインを意識するような独特の位置を取った。久保から見れば、ほぼ真横に近い立ち位置。縦には比較的スペースを残していた。

 チェルシーが事前に久保を分析したうえでの対応だったのか、あるいは、これが新戦力のパレストラ自身の守り方なのかは分からない。ただ、久保の左足で中へ切れ込み、シュートやラストパスへつなげる形が、それだけ警戒すべき武器として見られていることをうかがわせた。