廃棄を免れた日本兵のカルテ 中国侵略の実態伝える

【新華社東京8月15日】千葉県千葉市の下総精神医療センターには、旧日本軍の国府台陸軍病院(千葉県市川市、現在の国立国府台医療センター)で治療を受けた兵士のカルテが今も残されている。そこには、戦場で精神疾患を発症した兵士の症状が記されているだけでなく、中国を侵略した日本軍による加害行為の記録も残されている。
日本の敗戦に伴い、軍部は戦争に関する大量の機密文書を焼却、廃棄するよう命じた。国府台陸軍病院にもカルテを処分するよう命令が伝えられたが、当時の病院長が「貴重な資料」だとしてドラム缶に入れ、地中に埋めて保存した。原本はその後、何度か移され、現在は下総精神医療センターに保管されている。千葉県東金市の浅井病院には、カルテのコピー数千人分が資料として保存されている。

埼玉大学の細渕富夫名誉教授は新華社の取材に対し、軍部がカルテの廃棄を命じた背景について、「戦争犯罪人の摘発に関係しそうな文書を焼いて隠そうとした」と指摘した。
国府台陸軍病院は戦時中、精神疾患を抱えた兵士を専門に受け入れていた。戦場での恐怖や強い精神的衝撃によって手足のしびれや震えなどを訴える兵士も多く、こうした症状は当時、「戦争神経症」と総称された。同病院では約1万人が治療を受けたとされる。

日本兵の戦争トラウマを研究する専門家は、兵士が「戦争神経症」を発症した背景には、戦場で暴力を振るったり、自ら加害行為に及んだりした経験もあったと指摘する。「日本が戦争に負けて、戦争犯罪について追及されるだろうという予想が当然あったので、証拠隠滅といった側面が大きい」と語った。
細渕氏がより注目すべき点として挙げるのは、カルテに散見される加害行為の記録だ。「全滅させた」「村を焼き払った」といった記述が、精神疾患の原因としてではなく、むしろ「戦績」として記されている例があるという。

細渕氏は、その背景には当時の軍国主義教育があったと指摘する。戦争は美化され、「日本がアジア、さらには世界を指導すべきだ」と教えられた。他民族、他国を支配するのは当然とされ、兵士たちは戦場に出ていった。
「戦争は人々の人間性を失わせる」。細渕氏は、廃棄を免れたこれらの記録が、後世の人々に戦争の残酷さや加害の実態を伝え、歴史の悲劇を繰り返さないための一助となることを願っていると語った。(記者/胡暁格、劉潔秋)

