「5人ほど売り飛ばしましたよ」闇金元幹部が“借金に苦しむ女たち”を “売春島”に沈めるまで 「臓器売買に比べれば売春島に売られるなんて甘い方」
三重県志摩市の的矢湾に浮かぶ渡鹿野島。かつて"売春島"と呼ばれたこの島には、全国から女性が送り込まれていた。
【写真を見る】置き屋の内部、スナック奥の小部屋に置かれた無線機など
第1回で紹介したメグミのように、彼氏やホストに騙されて売られた例が少なくない。一方で、借金の返済が滞った末に闇金グループから売り飛ばされた例も多かった。
渡鹿野島を取材していたノンフィクションライター・高木瑞穂さん(Xアカウント:@takagimizuho2)は、実際に"人身売買"に関わっていた男性・西条(仮名)に話を聞いた。彼の話を通し、女性が"売春島"へと至るまでの現実が見えてきた。闇金グループの"手口"を知ることは、誰しもにありうる破滅の可能性を避けることにも繋がりうるだろう。
高木さんの著書『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』(彩図社)より、一部抜粋して紹介する。【全5回の第2回。第1回から読む】
5人ほどを"売り飛ばした"
1990年代後半、西条は、ある巨大闇金グループの幹部として鳴らしていた。金利はト五(10日で5割の利息)。この暴利から分かるように、フツーの金融屋が相手にしない、もう何処からも借りられない人間たちから、身包みを剥ぐ仕事である。
数多の部下を抱えるなど頭角を現し、月2000万もの給与を手にした西条は、いつしか善悪の区別もなくなり、悪事を働く対価で得たカネで我が世の春を謳歌したという。
何気ない日常だったかのように、そう淡々と話した彼の経歴を一通り聞いた後、僕が売春島の取材をしていることを告げると、彼は「ああ、三重のあそこね」と、語調も変えず続けた。
「5人ほど売り飛ばしましたよ」
あまりのタイミングのよさに驚いた。
「新規開拓のため、名簿屋から風俗嬢の債務者や滞納者リストを手に入れ、無作為にDM(ダイレクトメール)を送りつけてカネを貸していた時期がありました。でも女は、特に風俗嬢はよく焦げ付くんですよ。
困ってウチの会長に相談したところ、『ガラ(カラダ)だけ抑えればカネにしてくれるよ』と、女衒を紹介されたんですよね」
シャブ中女、ホスト狂い、AV女優を"沈める"
その女衒は最後まで素性は明かしませんでしたが、おそらく稼業の人間(ヤクザ)だと思います。男ならゲイビデオに出演させる、女ならソープで働かせるなどして返済させます。
でも、ウチの債務から逃げた人間を捕まえてカネにしようと思っても、ゲイビデオやソープだとまた逃げる可能性があるので、島に売り飛ばす他に方法がなかった。ソープの場合は債務者だと飛ぶ可能性があるからバンス(前借り金)が出ません。
だから、基本は自らソープに働きに行かせ、稼いだカネから定期的に返済させるんですが、あくまでそう仕向けるだけで。たかだか20〜30万の債務で軟禁しながら働かせて訴えられたりしたら、身も蓋もありません。なら、ガラ(身体)だけ抑えて売り飛ばした方がラクだから。
興味本位で沈める場所を聞けば、三重の"売春島"でした」
手っ取り早く債権を回収するため、女は女衒に売り飛ばす。もちろん、全ての闇金が同じ手法ではないだろうが、少なくとも西条の回りでは20人の女が島流しされたという。
「ヘルスで働く27才のシャブ中毒女には、ト五(10日で5割の利息)で10万貸しました。1回目の利息は返済したものの、2回目で飛んだ。だからその女を新宿で捕まえるとすぐに、女衒に50万で買い取ってもらいました。
22才、ホスト狂いのソープ嬢は元金が50万だったので、少々高めの90万で買い取ってもらうことに。
そういえば、1人AV女優もいた。素性を覚えているのはこの3人だけですね」
「売春島に売られるなんて甘い方」
彼はこう続ける。
「ガラを抑えたら、すぐに女衒を呼ぶんです。『私、どうされるんですか……』。女たちはそう不安を口にしました。もちろんビビらせてもしょうがないので、『働いてもらうだけだよ』と、優しく諭す。『嫌だ』と拒むコもいるけど、『ならお金返して』と返せば、ぐうの音も出ない。結局、お金が作れなくてこうなってるんですから。
でも、そうした人身売買で一番恐ろしいのはやはり、臓器売買ですよ。老若男女問わず、医者の診断で致命的な疾患がなければ誰でもカネになる。借金の額にもよりますが、通常は肝臓、腎臓など。それらでも50万は下らなかった。売ったことはないけど、眼球なら数千万で買ってくれるらしい。リスクは負いたくないから、その先にどんなシンジケートがあるか知らないし、知りたくもない。
ウチとしては最悪、元本が回収できればいいわけで。だから、売春島に売られるなんて甘い方だと思います。10万の元金から、最終的に3億の自社ビルを奪ったこともありますからね」
闇金グループの元幹部の証言から、債務に苦しむ女性が渡鹿野島に売られていく仕組みが見えてきた。
第3回では、女性を受け入れていた島の人間の話を紹介する。旅館と女衒の間でパイプ役を務め、チーママとして置屋を切り盛りしていた"A組の姐さん"が、ヤクザの情婦が中心だった時代から"素人"の女性が主流になるまでの変化や、旅館で行われていた"女性同士のショー"について語った。
(第3回につづく)
