「2026年夏ドラマ」20作すべてを“視聴率無視”でガチ採点「『脚本・演出の是非を語ることすらナンセンス』と思わせる話題作」「とことん語りたくなるオリジナル作」「謎の連鎖と解明の絶妙なバランス」「ノーストレスで見られるドラマ」とは
●事件解決ではなくひたすら被害者に寄り添う主人公
主要20作がそろった2026年夏ドラマ。今回も業界唯一のドラマ解説者・木村隆志が、主要新作の初回放送をウォッチし、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていく。
別記事(「令和のNo.1ヒット作」「プロデュース全体の質が高い」2026年夏ドラマのオススメTOP5作は? ドラマ解説者が20作の傾向を“視聴率無視”で徹底分析)において2026年夏ドラマの主な傾向を【[1]“2大続編”がそろい踏みの背景 [2]自由で思い切りのいい在阪局の3作】の2つと解説。
おすすめドラマとして、『VIVANT』(TBS系 日曜21時)、『さよならノワール』(フジ系 火曜21時)、『マイ・フィクション』(ABC・テレ朝系 日曜22時15分)、『Tシャツが乾くまで』(TBS系 金曜22時)、『Tokyo middle 30』(フジ系 水曜22時)の5作を選んだ。
本記事では、それらを含む主要20作のレビューと目安の採点(3点満点)を挙げていく。
『ブラックトリック〜裁きを操る弁護人〜』 月曜21時〜 フジ系
出演者:GACKT、志田未来、神尾楓珠ほか
寸評:「嘘を武器にするダークヒーロー」で「いきなり業務停止を食らう」という展開に弁護士ドラマとしての意外性はない。“建築士との二刀流”という設定を採り入れた以上、それを生かした脚本をどう練り上げるかが最終的な評価を分けそう。GACKTを主演に起用したのなら「チーム戦のボス」より「孤高のカリスマ」のほうがフィットしたように見える。とはいえ、芸達者な助演たちの活躍は楽しい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

GACKT
『GTO』 月曜22時〜 カンテレ・フジ系
出演者:反町隆史、生見愛瑠、松嶋菜々子ほか
寸評:長い時を経て教師と生徒は成長したのか、しないのか。「人と時代の変化を見せる」という難しい挑戦となる作品。鬼塚の魅力は変わらない一方で、会社みたいな学校、タブレット、コスパ、ハラスメント、検索、生成AI、あだ名禁止など、令和の捉え方がステレオタイプに見えるのが気がかり。「15〜17歳限定のオーディション」で選ばれた生徒役は素晴らしく、近未来のスター俳優たちを見るのは楽しい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

反町隆史
『夫を殺したはずなのに』 月曜23時6分〜 テレ東
出演者:内田理央、渡邊圭祐、箭内夢菜ほか
寸評:テレ東の『夫を殺す』シリーズにタイムリープというファンタジーをプラス。しかも「妻が夫を殺しても過去に戻されてしまう」という地獄のようなシーンが繰り返される。「愛人との不倫行為をアダルト配信サイトで生配信する」という夫の憎さがパワーアップしていることも含め、突き抜けたプロデュースは清々しいレベル。愛人役の箭内は新境地を開いた感があり、今後のオファーにつながりそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

内田理央
『クロスロード〜救命救急の約束〜』 火曜21時〜 テレ朝系
出演者:今田美桜、磯村勇斗、寛一郎ほか
寸評:主人公の正義感と使命感は「若い層にもこういうタイプのヒーローはいる。いてほしい」というメッセージにも見える。良くも悪くもポイントは救命医、救急隊員、警察官の個人による連帯に留まっていること。救命のダイナミズムは組織の連携あってこそであり、忙しい3人が集まるなどのリアリティ欠如も含め、没入しづらいところがある。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

今田美桜
『さよならノワール』 火曜21時〜 フジ系
出演者:小池栄子、北香那、岡山天音ほか
寸評:犯罪被害者支援室という舞台設定は、広報の『東京P.D.』に続く当枠では2作目。事件解決ではなくひたすら被害者に寄り添う主人公は新鮮で、令和の新たなヒロイン像に見える。バディの関係性も、各話のエピソードとゲスト俳優の選択もバランスがよく、全般にわたってプロデュースが機能。決めゼリフの「しばらくそばにいていいですか」に加えて「見えない血を止めるのが私たちの仕事」などの名言も多い。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

小池栄子
『君の好きは無敵』 火曜22時〜 TBS系
出演者:松本若菜、佐野勇斗、本郷奏多ほか
寸評:キャラクタービジネスは時流に合う舞台であり、IPビジネスを扱う作品として業界内での注目度は高かった。しかし、業界というより個人の争いに見えてしまうなど、その楽しさや奥深さが見えてこない。サンリオの既存キャラをフィーチャーしつつ新たなキャラを絡めて盛り上げるなどの展開を見せたいところ。松本と佐野のキャスティングは華があるだけに、そこに頼る演出にも不安を感じさせられる。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

松本若菜
●最近はありそうでないジャンル「都会の女性群像劇」
『ファーストクライ 母子救命救急班』 水曜22時〜 日テレ系
出演者:比嘉愛未、松島聡、前田敦子ほか
寸評:産婦人科の物語は水曜ドラマが扱ってきた定番テーマ。命が失われることも多い医療ドラマの中で「命の誕生を描ける」という明確な強みがある。産婦人科のドラマは『コウノドリ』『透明なゆりかご』という名作を見ればわかるようにメインは妊婦役の週替わりゲスト。しかし、「セレブ病院なのにワケあり妊婦を無償で救う」という設定と主人公のキャラが強く、当事者の人間ドラマを薄めているのがもったいない。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

比嘉愛未
『Tokyo middle 30』 水曜22時〜 フジ系
出演者:仲里依紗、のん、深川麻衣ほか
寸評:都会の女性群像劇は90年代後半から00年代前半に多かったが、最近はありそうでないジャンル。時代に合わせて年齢層をアラサーからミドサーに上げた点は自然であり、飾り気も誇張もない等身大の物語は好感が持てる。結婚、妊娠、子育て、病気、孤独死などのシビアかつ正解のない問題に自分はどう向き合い、親友にはどんな言葉をかけるのか。“普通の人”の日常を描くドラマは難しく数字は上がりにくいが、刺さる人はベストにあげたくなる作品になりそう。中国ドラマの原作は43話だけに、1クールの日本版は脚本の選択と脚色が難しい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

仲里依紗
『今夜もシリアルキラーと待ち合わせ』 水曜23時〜 フジ系
出演者:横山裕、関水渚、山崎紘菜ほか
寸評:主人公は横山が演じる刑事だが、事実上のメインは関水が演じる“第六感女子”。「ふれると殺した人数が視える」能力があり、「警察すら把握していない連続殺人犯を捕まえる」という展開は痛快で軽さもあって見やすい仕上がりに。適度なホラーテイストがあり、30分で見終えるため、あとを引かないなど夏の夜にフィットする作品。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

関水渚
『大空港〜GATE24〜』 木曜21時〜 テレ朝系
出演者:趣里、眞栄田郷敦、板垣李光人ほか
寸評:テレ朝お仕事ドラマの新作舞台は空港。入管、税関、検疫と異なる省庁が管轄する縦割り問題を排除したスペシャルユニット「GATE24」という設定に、1クールのニーズがあるかは未知数だろう。趣里が演じるよく気付く新任の税関職員は、個性派だが抑えの効いた職業柄好感が持てる主人公。周囲の熱いスタッフとの温度差が際立ち、徐々に魅力を増していきそう。ただ、外国人の吹き替えは高齢者向けなのかもしれないが、やってはいけないレベルで一線を越えてしまったか。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

趣里
『ラストノート』 木曜22時〜 フジ系
出演者:内田有紀、寺西拓人、坂井真紀ほか
寸評:賛否真っ二つなのは「なぜ詐欺師の恋?」「毒親の設定で帳消しに?」「いつどこを好きになった?」をクリアしなければ物語に没入できないからだろう。同じ木曜劇場で三竿玲子プロデューサーの『昼顔』『あなたがしてくれなくても』は普通の男女を描いたからこそヒット作となっただけに疑問が残る。昨年の『愛の、がっこう。』もホストとの恋愛を描くなど「アイドルに振り幅のある役を」という思いが透けて見えるが、「特別な設定を加えよう」という足し算は不要ではないか。序盤は坂井と佐々木蔵之介の怖い演技を見る楽しさが勝っている。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

内田有紀
『親愛なる夫へ〜完璧な妻の嘘〜』 木曜23時59分〜 読テレ・日テレ系
出演者:田中麗奈、古川雄大、前田公輝ほか
寸評:そのコンセプトは、妻の狂気から逃げられないホラーと、妻の死と裏の顔をめぐるミステリーの2刀流。しかし、過去の因縁と秘密が明らかになるにつれてミステリーが濃くなっていく。連ドラらしい構成だが、妻を演じる田中のエキセントリックな演技がやや消化不良か。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

田中麗奈
『リーガルビート -逆転の法廷-』 金曜21時〜 テレ東系
出演者:鈴鹿央士、稲垣吾郎、小雪ほか
寸評:「吃音の若者が声を上げられずに苦しむ人々を助けるために弁護士になる」という導入部は共感たっぷり。主人公への応援モードが高まって迎えた「クライマックスの法廷で得意のラップを炸裂させる」という脚本・演出は納得度が高い。稲垣が演じるクールだが温かみのある先輩、小雪が演じる弁護士ながら法廷に立たない所長との補完関係もわかりやすく、ノーストレスで見られる貴重なリーガルドラマ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

鈴鹿央士
●「キャスティング」「海外ロケ」「2クール放送」さまざまな点でスケールアップ
『Tシャツが乾くまで』 金曜22時〜 TBS系
出演者:蒼井優、中島歩、松山ケンイチほか
寸評:最大の注目は生方美久の脚本であり、初めてフジから出てTBSでのドラマとなるが、繊細なセリフ劇は健在。さらに金曜ドラマらしいミステリーを絡めるそつのなさを見せている。ただ、好きな人はとことん語りたくなるが、会話過多なドラマが苦手な人は受け付けないという感は否めない。さらにコインランドリーでの長話、すぐに家を教えて中に入れるなどの展開に違和感を抱く人もいる。「不倫か否か」にそれほどの吸引力はない一方で、蒼井と中島の演技に引き込まれるだけに、2人の距離感を描くだけでも1クール引っ張れそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

蒼井優
『名探偵のままでいて』 金曜23時15分〜 テレ朝系
出演者:吉川愛、綱啓永、奥田瑛二ほか
寸評:「ミステリーマニアの孫娘と認知症の祖父がバディ」という深夜帯らしい遊び心ある安楽椅子ミステリー。ただ、祖父をいたわる孫のシーンに象徴される温かい世界観は高齢者にこそ見てほしいところもある。お香をたくと名探偵になる祖父の推理が冴えすぎるところは気になるが、だからこそ別れが描かれるであろう終盤は感動を呼びそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆☆】

吉川愛
『告白 -25年目の秘密-』 土曜21時〜 日テレ系
出演者:松村北斗、岡崎紗絵、玉山鉄二ほか
寸評:ストーカーのラブストーリーは現実世界に起きそうなギリギリのラインで視聴者を置き去りにしない。怖さだけでなく純粋さもきっちり描くなど嫌悪感は薄く、恋の成就を応援できそうなムードもあるだけに、殺人事件を絡めてホラーに寄せるのはどうなのか。もう少し甘いシーンを入れて落差を生み出していいかもしれない。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

岡崎紗絵
『夏色の雲が恋と嵐をまきおこす』 土曜23時〜 テレ朝系
出演者:深田竜生、浮所飛貴、田辺桃子ほか
寸評:STARTOのデビュー前アイドル2人にBLを演じさせるという配信向きの作品。すべてがほのぼのムードで狙いは女性の癒しにほかならない。どこか昭和時代の19時台に放送されていたアイドルのホームドラマを思い起こさせる。サモエドのロックに癒される視聴者は多そう。
【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

田辺桃子
『VIVANT』 日曜21時〜 TBS系
出演者:堺雅人、阿部寛、松坂桃李ほか
寸評:「連ドラ史上初」「令和では異例」という挑戦が随所に見られ、視聴率も配信再生も得ているのだから、脚本・演出の是非を語ることすらナンセンスかもしれない。キャスティング、海外ロケ、2クール放送などさまざまな点でスケールアップが見られ、他の作品が学ぶところは多そう。堺や阿部の演技もギアを1つ上げた感があり、新キャストの話題性も高い。業界全体で見ても『VIVANT』の成否は重要だろう。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

堺雅人
『マイ・フィクション』 日曜22時15分〜 ABC・テレ朝系
出演者:玉森裕太、森川葵、宮澤エマほか
寸評:記憶をめぐる謎の連鎖と解明のバランスがよく、飽きさせずに没入させ続ける脚本が絶妙。ABC制作の同枠は前期の『エラー』に続くオリジナルの力作で、翌朝の仕事が気になる日曜22時台はこれくらい振り切ったほうが相性はよさそう。出るだけで不穏なムードを醸し出す宮澤に加えて、レインボーのジャンボたかおが物語を加速させた。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

宮澤エマ
『一次元の挿し木』 日曜22時30分〜 読売テレビ・日テレ系
出演者:山田涼介、白石聖、堀田真由ほか
寸評:原作小説のクオリティもあって、遺伝子などの難しいモチーフを扱っているにもかかわらず物語の安定感は十分。読売テレビ制作らしいダークな世界観だけに見る人を選ぶが、1クール最後まで楽しめそうな構成力を感じさせられる。主人公とダブルヒロインをめぐる関係性に引き込まれる上に、土居志央梨と和田正人の刑事側、小手伸也と猪塚健太の雑誌側のキャスティングも機能。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

白石聖
木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら
主要20作がそろった2026年夏ドラマ。今回も業界唯一のドラマ解説者・木村隆志が、主要新作の初回放送をウォッチし、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていく。
別記事(「令和のNo.1ヒット作」「プロデュース全体の質が高い」2026年夏ドラマのオススメTOP5作は? ドラマ解説者が20作の傾向を“視聴率無視”で徹底分析)において2026年夏ドラマの主な傾向を【[1]“2大続編”がそろい踏みの背景 [2]自由で思い切りのいい在阪局の3作】の2つと解説。
本記事では、それらを含む主要20作のレビューと目安の採点(3点満点)を挙げていく。
『ブラックトリック〜裁きを操る弁護人〜』 月曜21時〜 フジ系
出演者:GACKT、志田未来、神尾楓珠ほか
寸評:「嘘を武器にするダークヒーロー」で「いきなり業務停止を食らう」という展開に弁護士ドラマとしての意外性はない。“建築士との二刀流”という設定を採り入れた以上、それを生かした脚本をどう練り上げるかが最終的な評価を分けそう。GACKTを主演に起用したのなら「チーム戦のボス」より「孤高のカリスマ」のほうがフィットしたように見える。とはいえ、芸達者な助演たちの活躍は楽しい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『GTO』 月曜22時〜 カンテレ・フジ系
出演者:反町隆史、生見愛瑠、松嶋菜々子ほか
寸評:長い時を経て教師と生徒は成長したのか、しないのか。「人と時代の変化を見せる」という難しい挑戦となる作品。鬼塚の魅力は変わらない一方で、会社みたいな学校、タブレット、コスパ、ハラスメント、検索、生成AI、あだ名禁止など、令和の捉え方がステレオタイプに見えるのが気がかり。「15〜17歳限定のオーディション」で選ばれた生徒役は素晴らしく、近未来のスター俳優たちを見るのは楽しい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

『夫を殺したはずなのに』 月曜23時6分〜 テレ東
出演者:内田理央、渡邊圭祐、箭内夢菜ほか
寸評:テレ東の『夫を殺す』シリーズにタイムリープというファンタジーをプラス。しかも「妻が夫を殺しても過去に戻されてしまう」という地獄のようなシーンが繰り返される。「愛人との不倫行為をアダルト配信サイトで生配信する」という夫の憎さがパワーアップしていることも含め、突き抜けたプロデュースは清々しいレベル。愛人役の箭内は新境地を開いた感があり、今後のオファーにつながりそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『クロスロード〜救命救急の約束〜』 火曜21時〜 テレ朝系
出演者:今田美桜、磯村勇斗、寛一郎ほか
寸評:主人公の正義感と使命感は「若い層にもこういうタイプのヒーローはいる。いてほしい」というメッセージにも見える。良くも悪くもポイントは救命医、救急隊員、警察官の個人による連帯に留まっていること。救命のダイナミズムは組織の連携あってこそであり、忙しい3人が集まるなどのリアリティ欠如も含め、没入しづらいところがある。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『さよならノワール』 火曜21時〜 フジ系
出演者:小池栄子、北香那、岡山天音ほか
寸評:犯罪被害者支援室という舞台設定は、広報の『東京P.D.』に続く当枠では2作目。事件解決ではなくひたすら被害者に寄り添う主人公は新鮮で、令和の新たなヒロイン像に見える。バディの関係性も、各話のエピソードとゲスト俳優の選択もバランスがよく、全般にわたってプロデュースが機能。決めゼリフの「しばらくそばにいていいですか」に加えて「見えない血を止めるのが私たちの仕事」などの名言も多い。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『君の好きは無敵』 火曜22時〜 TBS系
出演者:松本若菜、佐野勇斗、本郷奏多ほか
寸評:キャラクタービジネスは時流に合う舞台であり、IPビジネスを扱う作品として業界内での注目度は高かった。しかし、業界というより個人の争いに見えてしまうなど、その楽しさや奥深さが見えてこない。サンリオの既存キャラをフィーチャーしつつ新たなキャラを絡めて盛り上げるなどの展開を見せたいところ。松本と佐野のキャスティングは華があるだけに、そこに頼る演出にも不安を感じさせられる。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

●最近はありそうでないジャンル「都会の女性群像劇」
『ファーストクライ 母子救命救急班』 水曜22時〜 日テレ系
出演者:比嘉愛未、松島聡、前田敦子ほか
寸評:産婦人科の物語は水曜ドラマが扱ってきた定番テーマ。命が失われることも多い医療ドラマの中で「命の誕生を描ける」という明確な強みがある。産婦人科のドラマは『コウノドリ』『透明なゆりかご』という名作を見ればわかるようにメインは妊婦役の週替わりゲスト。しかし、「セレブ病院なのにワケあり妊婦を無償で救う」という設定と主人公のキャラが強く、当事者の人間ドラマを薄めているのがもったいない。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『Tokyo middle 30』 水曜22時〜 フジ系
出演者:仲里依紗、のん、深川麻衣ほか
寸評:都会の女性群像劇は90年代後半から00年代前半に多かったが、最近はありそうでないジャンル。時代に合わせて年齢層をアラサーからミドサーに上げた点は自然であり、飾り気も誇張もない等身大の物語は好感が持てる。結婚、妊娠、子育て、病気、孤独死などのシビアかつ正解のない問題に自分はどう向き合い、親友にはどんな言葉をかけるのか。“普通の人”の日常を描くドラマは難しく数字は上がりにくいが、刺さる人はベストにあげたくなる作品になりそう。中国ドラマの原作は43話だけに、1クールの日本版は脚本の選択と脚色が難しい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『今夜もシリアルキラーと待ち合わせ』 水曜23時〜 フジ系
出演者:横山裕、関水渚、山崎紘菜ほか
寸評:主人公は横山が演じる刑事だが、事実上のメインは関水が演じる“第六感女子”。「ふれると殺した人数が視える」能力があり、「警察すら把握していない連続殺人犯を捕まえる」という展開は痛快で軽さもあって見やすい仕上がりに。適度なホラーテイストがあり、30分で見終えるため、あとを引かないなど夏の夜にフィットする作品。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『大空港〜GATE24〜』 木曜21時〜 テレ朝系
出演者:趣里、眞栄田郷敦、板垣李光人ほか
寸評:テレ朝お仕事ドラマの新作舞台は空港。入管、税関、検疫と異なる省庁が管轄する縦割り問題を排除したスペシャルユニット「GATE24」という設定に、1クールのニーズがあるかは未知数だろう。趣里が演じるよく気付く新任の税関職員は、個性派だが抑えの効いた職業柄好感が持てる主人公。周囲の熱いスタッフとの温度差が際立ち、徐々に魅力を増していきそう。ただ、外国人の吹き替えは高齢者向けなのかもしれないが、やってはいけないレベルで一線を越えてしまったか。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『ラストノート』 木曜22時〜 フジ系
出演者:内田有紀、寺西拓人、坂井真紀ほか
寸評:賛否真っ二つなのは「なぜ詐欺師の恋?」「毒親の設定で帳消しに?」「いつどこを好きになった?」をクリアしなければ物語に没入できないからだろう。同じ木曜劇場で三竿玲子プロデューサーの『昼顔』『あなたがしてくれなくても』は普通の男女を描いたからこそヒット作となっただけに疑問が残る。昨年の『愛の、がっこう。』もホストとの恋愛を描くなど「アイドルに振り幅のある役を」という思いが透けて見えるが、「特別な設定を加えよう」という足し算は不要ではないか。序盤は坂井と佐々木蔵之介の怖い演技を見る楽しさが勝っている。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『親愛なる夫へ〜完璧な妻の嘘〜』 木曜23時59分〜 読テレ・日テレ系
出演者:田中麗奈、古川雄大、前田公輝ほか
寸評:そのコンセプトは、妻の狂気から逃げられないホラーと、妻の死と裏の顔をめぐるミステリーの2刀流。しかし、過去の因縁と秘密が明らかになるにつれてミステリーが濃くなっていく。連ドラらしい構成だが、妻を演じる田中のエキセントリックな演技がやや消化不良か。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

『リーガルビート -逆転の法廷-』 金曜21時〜 テレ東系
出演者:鈴鹿央士、稲垣吾郎、小雪ほか
寸評:「吃音の若者が声を上げられずに苦しむ人々を助けるために弁護士になる」という導入部は共感たっぷり。主人公への応援モードが高まって迎えた「クライマックスの法廷で得意のラップを炸裂させる」という脚本・演出は納得度が高い。稲垣が演じるクールだが温かみのある先輩、小雪が演じる弁護士ながら法廷に立たない所長との補完関係もわかりやすく、ノーストレスで見られる貴重なリーガルドラマ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

●「キャスティング」「海外ロケ」「2クール放送」さまざまな点でスケールアップ
『Tシャツが乾くまで』 金曜22時〜 TBS系
出演者:蒼井優、中島歩、松山ケンイチほか
寸評:最大の注目は生方美久の脚本であり、初めてフジから出てTBSでのドラマとなるが、繊細なセリフ劇は健在。さらに金曜ドラマらしいミステリーを絡めるそつのなさを見せている。ただ、好きな人はとことん語りたくなるが、会話過多なドラマが苦手な人は受け付けないという感は否めない。さらにコインランドリーでの長話、すぐに家を教えて中に入れるなどの展開に違和感を抱く人もいる。「不倫か否か」にそれほどの吸引力はない一方で、蒼井と中島の演技に引き込まれるだけに、2人の距離感を描くだけでも1クール引っ張れそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『名探偵のままでいて』 金曜23時15分〜 テレ朝系
出演者:吉川愛、綱啓永、奥田瑛二ほか
寸評:「ミステリーマニアの孫娘と認知症の祖父がバディ」という深夜帯らしい遊び心ある安楽椅子ミステリー。ただ、祖父をいたわる孫のシーンに象徴される温かい世界観は高齢者にこそ見てほしいところもある。お香をたくと名探偵になる祖父の推理が冴えすぎるところは気になるが、だからこそ別れが描かれるであろう終盤は感動を呼びそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆☆】

『告白 -25年目の秘密-』 土曜21時〜 日テレ系
出演者:松村北斗、岡崎紗絵、玉山鉄二ほか
寸評:ストーカーのラブストーリーは現実世界に起きそうなギリギリのラインで視聴者を置き去りにしない。怖さだけでなく純粋さもきっちり描くなど嫌悪感は薄く、恋の成就を応援できそうなムードもあるだけに、殺人事件を絡めてホラーに寄せるのはどうなのか。もう少し甘いシーンを入れて落差を生み出していいかもしれない。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『夏色の雲が恋と嵐をまきおこす』 土曜23時〜 テレ朝系
出演者:深田竜生、浮所飛貴、田辺桃子ほか
寸評:STARTOのデビュー前アイドル2人にBLを演じさせるという配信向きの作品。すべてがほのぼのムードで狙いは女性の癒しにほかならない。どこか昭和時代の19時台に放送されていたアイドルのホームドラマを思い起こさせる。サモエドのロックに癒される視聴者は多そう。
【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

『VIVANT』 日曜21時〜 TBS系
出演者:堺雅人、阿部寛、松坂桃李ほか
寸評:「連ドラ史上初」「令和では異例」という挑戦が随所に見られ、視聴率も配信再生も得ているのだから、脚本・演出の是非を語ることすらナンセンスかもしれない。キャスティング、海外ロケ、2クール放送などさまざまな点でスケールアップが見られ、他の作品が学ぶところは多そう。堺や阿部の演技もギアを1つ上げた感があり、新キャストの話題性も高い。業界全体で見ても『VIVANT』の成否は重要だろう。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『マイ・フィクション』 日曜22時15分〜 ABC・テレ朝系
出演者:玉森裕太、森川葵、宮澤エマほか
寸評:記憶をめぐる謎の連鎖と解明のバランスがよく、飽きさせずに没入させ続ける脚本が絶妙。ABC制作の同枠は前期の『エラー』に続くオリジナルの力作で、翌朝の仕事が気になる日曜22時台はこれくらい振り切ったほうが相性はよさそう。出るだけで不穏なムードを醸し出す宮澤に加えて、レインボーのジャンボたかおが物語を加速させた。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『一次元の挿し木』 日曜22時30分〜 読売テレビ・日テレ系
出演者:山田涼介、白石聖、堀田真由ほか
寸評:原作小説のクオリティもあって、遺伝子などの難しいモチーフを扱っているにもかかわらず物語の安定感は十分。読売テレビ制作らしいダークな世界観だけに見る人を選ぶが、1クール最後まで楽しめそうな構成力を感じさせられる。主人公とダブルヒロインをめぐる関係性に引き込まれる上に、土居志央梨と和田正人の刑事側、小手伸也と猪塚健太の雑誌側のキャスティングも機能。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら
