[8.14 J1第2節 東京V 1-3 柏 MUFG国立]

 右膝前十字靭帯断裂の大ケガを乗り越えた柏レイソルMF熊坂光希が14日、J1第2節・東京V戦で昨年5月25日以来446日ぶりの公式戦フル出場を果たし、正真正銘の完全復活を印象づけた。

 コンディションは負傷前と比べて「8割くらいは感覚的にできている」というが、リハビリ期間の身体作りも実り、登録体重は昨季比5kg増での再出発。日本では稀少な185cmの大型ボランチの復帰には、試合を視察した日本代表の森保一監督も「本当に苦しい思いをしてきたと思うので、今季こうしてプレーできているところを見させてもらうのは私もホッとしていて嬉しいニュース。攻撃でも起点となり、守備でも潰して、さらに攻撃につなげる彼の良さを自分のスタイルとして発揮する姿が見られるのは嬉しい」と喜びを口にしていた。

 25歳の熊坂は大卒2年目の昨季、開幕から快進撃を見せた柏の主力に定着すると、昨年6月のW杯最終予選で初めてA代表に選出。ところが敵地でのオーストラリア戦で出番がなく、続くインドネシア戦に照準を合わせていた矢先、大阪での練習中に右膝前十字靭帯断裂の大ケガを負い、そのままチームを離脱することになった。

 高校時代もケガに苦しんだ時期が長く、ようやくキャリアが軌道に乗っていたタイミングでの悲劇。「本当にショックだったし、すごく落ち込んだ」。A代表デビュー目前で夢が絶たれただけでなく、J1優勝争いを繰り広げるチームの戦力になれないことへの落胆も大きかった。

 それでも長いリハビリを懸命に乗り越えた。心の支えになったのは奇しくもこの日、11か月ぶりの復帰を果たしたMF渡井理己ら同じ膝の大ケガに苦しんでいた仲間たちの姿だった。「渡井もそうだし、手塚(康平)くんとか、山田(雄士)とか、“膝組”の人たちも一緒にいたのでみんなで頑張ってきた」。加えてリハビリに励むモチベーションの一つには代表復帰への思いもあったという。

「一番いい時にケガをしてしまったのでもちろん悔しい思いもしたし、すごく落ち込んだけど、また代表に戻るという覚悟と気持ちを持って頑張ってきた」。今年5月26日のJ1百年構想リーグ最終節・千葉戦に11分間出場し、実戦復帰を果たすと、オフ期間には日本中の注目を集めた北中米W杯から大きな刺激を受けていた。

 最も意識していたのは、優勝したスペイン代表の大黒柱であり、全試合先発出場で大会最優秀選手に輝いたMFロドリのパフォーマンスだった。

 育成年代から明確なプレーモデルを持つ柏アカデミー育ちの熊坂にとって、今大会のスペイン代表は格好の教本であり、背格好やポジションなど共通点の多いロドリは絶好のロールモデル。「本当に彼のチームだなというのを見ていて思ったし、攻守において中心だなと。自分もそういうふうになれれば」。自らの姿も重ねながらその活躍を見ていたという。

 今大会のロドリはマンチェスター・Cでの振る舞いとはやや異なり、「高強度(時速15km以上)での走行距離」も出場全選手中最長を記録するなど、守備範囲の広さでも異彩を放っていたが、まさにそのプレースタイルこそが熊坂のロールモデル。中盤での高さ、守備範囲の広さ、配球技術を併せ持つ選手は現在の日本代表にもいない。

 熊坂自身もその希少性を深く認識しており、「自分にしかない武器もあると思うし、特徴もあると思う」ときっぱり。「そういうところはレイソルの中ですごく出せているんじゃないかなと思うので、自分が代表を目指すのであれば、そういう部分をもっと出していかないといけない」とますますその能力を伸ばしていくつもりだ。

 とはいえ、焦って歩みを進めるつもりはない。得点・アシストや1対1の対人指標にとどまらない仕事が求められるボランチのポジションにおいて、熊坂が意識するのは「個人で違いを作るというよりは周りとの連係やポジショニング」。Jリーグで圧倒的な存在感を見せるため、まずは何よりも明確な「チームの勝利」にこだわって戦うつもりだ。

「とにかくケガをせずにこのまま試合に出続けることが大事。チームが勝ち続けることで自分の評価も上がってくると思うので、まずはチームのために全力で頑張りたい」。森保ジャパンの集大成として挑むアジア杯まであと半年。挑む素質は十分にある。

(取材・文 竹内達也)