[8.9 J1第1節 東京V 1-1 川崎F 味スタ]

 復帰戦の舞台は、運命的な開幕カードだった。川崎フロンターレDF谷口栄斗は古巣・東京ヴェルディを相手にフル出場。百年構想リーグでは、新加入ながら3月に左ハムストリング肉離れで長期離脱し、そのままシーズンを終えた。それだけに待ち望んだ復帰戦を終え、「僕のために用意されたようなカードだった」と振り返った。

 谷口は離脱期間を「このチームに早く貢献したいという思いだけで復帰に向けてやってきた」と振り返る。開幕戦の相手が古巣・東京Vに決まると、「開幕が決まった時から、ここに向けてやらないといけない、ここで復帰しないといけないと思った」とモチベーションはさらに高まった。「実際に試合に復帰できて、90分出られてよかった」と、まずはピッチに戻れた喜びをかみしめた。

 離脱期間は決して平坦ではなかった。「当たり前が当たり前じゃないと痛感させられた日々だった」と明かし、オフも返上してリハビリとトレーニングを継続。「付き合ってくれたトレーナーやドクターには感謝したい」と支えてくれたスタッフへの感謝も忘れない。その中でも「自分の強みである攻撃の部分と粘り強い守備は見失ってはいけない」と信念を持ち続けてきたという。

 その成果は前半から随所に表れた。東京Vの1トップFW染野唯月とのマッチアップでは空中戦でも競り勝ち、前半は決定機をほとんど許さず無失点。「ジャンプする場面も多くて消耗しましたけど、ゼロで抑えられたのは良かった」と振り返った。

 一方で、後半開始早々の失点については「僕が染野選手を潰せなくて、背後を突かれてしまった」と自身の対応を反省する。新加入DFペドロ・ホマーノとのコンビには「非常に人に強くて能力もある。すごく今日はやりやすかった」。ひさびさの公式戦、不慣れなCBコンビにも冷静さは失わず、その後は追加点を許さない。チームは終盤にFWラザル・ロマニッチの同点弾で追いつき、1-1で痛み分け。谷口は「追加点を与えなかったのは進歩。攻撃のクオリティは高かったし、いつか点を取ってくれると思っていた。負けずに済んでよかった」と勝ち点1を前向きに捉えた。

 古巣との再会も特別だった。試合前には城福浩監督や旧知のチームメートにあいさつを交わし、「前回対戦ほどエモーショナルではなかったけど、特別な場所であり、特別な相手。負けられない試合だった」と語る。ボールを持つたびに東京Vサポーターから大きな反応も受けたが、「それだけ嫌な選手と思われていたらいいかな」と笑って受け流した。

 怪我からの復帰となる新シーズンは、再出発のシーズンでもある。「このパフォーマンスをスタンダードにして、1年間やり続けたい。今年は個人としてすごく懸けている。怪我をせず、これ以上のものを出し続けたい」。苦しいリハビリ期間を乗り越えたDFは、古巣との開幕戦を新たなスタートラインに変えた。

(取材・文 石川祐介)