「リアルでは肩身が狭いのに…」青島(織田裕二)と鬼塚(反町隆史)の復活に大人が歓喜!おじさん層が、エンタメ界で「最強の武器」になった理由【おじさん俳優も続々と台頭】
大活躍の「おじさん俳優」
ハーフパンツで出歩けば厳しいスネ毛チェックが入り、パーカーを着用すれば「年齢とファッションが合っていない」とSNSで揶揄されるおじさん層。だが、エンターテインメント、特にドラマや映画の世界では「おじさん俳優」が大活躍だ。
織田裕二(58歳)は9月公開の映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』に青島俊作役で主演。なんと青島、13年ぶりの帰還である。1997年にフジテレビ系列でオンエアされるや否や大きな話題を呼び、複数の映画やスペシャルドラマ、スピンオフ作品などが生まれた「踊るシリーズ」の最新作は、昨年『国宝』に奪われた日本映画(実写)の興行収入第1位の座を取り戻すことができるのか。
7月スタートの新ドラマ『GTO』では初代・鬼塚を演じた反町隆史(52歳)が華麗に復活。28年前、1998年放送のシリーズ第1作と同じく大型バイクで登場し、脚本も初期シリーズ同様に遊川和彦が担当、主題歌は反町が歌い大ヒットした「POISON〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜」がそのまま使われている。
さらに第1話には旧作の劇中で鬼塚と結ばれたあずさ(松嶋菜々子)が登場し「リアル夫婦が夫婦役!」「鬼塚と冬月先生、まだ別れていなかったんだ」とネットを沸かせ、視聴率も6.4%とまずまずの数字をたたき出した。
織田裕二、反町隆史が主演を担う『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』と『GTO』の共通項は、圧倒的エネルギーをもって作品に存在していた主人公が一旦現場から離れ、長い月日を経て帰ってくるストーリーライン。当然、警察も学校も25年以上の時を経て変容し、生徒や保護者の考え方や、犯罪及び組織の方向性も彼らが現場で戦っていた頃とは変わっている。
台頭する「おじさん俳優」たち
AIで犯罪捜査がおこなわれ、生徒がタブレットで教師をジャッジする世界線で、青島や鬼塚が当時と変わらぬ熱をもって事件解決や教育にあたるさまや、壁にぶつかりながら「言いたいことも言えないこんな世の中」に立ち向かっていく姿に胸をアツくする大人も多いだろう。青島や鬼塚は「世界が変わってもまだやれる」おじさん世代の象徴、ある種の旗印ともいえる。
そして「おじさん俳優」の活躍は織田裕二や反町隆史のような主演俳優ばかりにとどまらない。むしろドラマや映画の世界を支え、作品に深みをもたらしているのは助演、いわゆるバイプレイヤーの「おじさん俳優」たちだ。
特に近年、これまで力を蓄えながら活動し、作品や役柄との出会いによって一気に認知度が高まり、40代中盤以降にブレイクを果たした「おじさん俳優」の台頭も目立つ。
朝ドラ『虎に翼』と『ばけばけ』では頼りなさと可笑しみとを併せ持った父親を演じ、夏クールのドラマ『ファーストクライ 母子救命救急班』と『さよならノワール』の2作に出演中の岡部たかし(54歳)はCMでも松たか子と共演するなど大活躍。
岡部たかしがハジけるきっかけとなったのは『エルピス-希望、あるいは災い-』(2022年)。このドラマで岡部が演じたのは、報道畑からワイドショーの現場に飛ばされ、半ばヤサぐれているテレビディレクター・村井。第9話の終盤、それまでチャラついていた村井がパイプ椅子を片手にスタジオに乱入し、セットを破壊しながら怒りをあらわにする場面は大きな反響を呼んだ。
岡部たかしと親交が深い岩谷健司(56歳)が存在感を示した作品が春クールでもっとも高い評価を得たドラマ『銀河の一票』。岩谷は政治家の元秘書で、のちに元スナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)を都知事にするため力を貸す五十嵐(通称ガラさん)役で参加。清濁併せ呑む登場人物を魅力的に演じて注目を集めた。
『8番出口』の“おじさん”も
映画『8番出口』に“おじさん”こと歩く男役で出演し、鮮烈な印象を残した河内大和(47歳)は原作ゲームが放つ不気味な存在感を見事に具現化。北米での映画公開プロモーションではニューヨークの地下鉄構内に現れ、ニューヨーカーの度肝を抜いた。個性的なビジュアルはドラマ『VIVANT』のワニズ役でも生かされている。
救いようのない悪役で一躍メジャーシーンに躍り出たのが酒向芳(67歳)だ。木村拓哉と二宮和也が共演した2018年の映画『検察側の罪人』に酒向は女子高校生絞殺事件の犯人である松倉重生役で出演。取り調べのさいに「パッ」と口を開いて不気味な音を出し、最後までゲスの極みを担い切る演技は観客に強いインパクトを残した。現在、再放送されている有村架純主演の朝ドラ『ひよっこ』(2017年)にも酒向は出演しているが、役名も個別のせりふもないキャラクターだったため、「あれ、もしかして酒向さんじゃない?」「全然気づけなかった」と出演回再放送日のSNSをザワつかせた。
「この一作でブレイク間違いなしのおじさん俳優」急先鋒が、Netflixドラマ『ガス人間』で不穏かつ振り切った演技を見せたこばやし元樹(52歳)。こばやしは小栗旬演じる主人公のゲスな上司・片岡警部を演じており、ボウリング場で裏社会の面々を前にランニングシャツになり、離れた位置のピン2本を見事に倒して奇妙な踊りを繰り出すさまは怪演のひとこと。何をしでかすかわからないこばやしの空気感はこれからのエンタメ界に風を吹かせてくれそうだ。
なぜ「おじさん俳優」は貴重なのか?
岡部たかし、岩谷健司、河内大和、酒向芳、こばやし元樹。この5人の共通項は40代中盤以降に出会った作品での急激なブレイクに加え、演劇の世界で力を蓄えてきたこと。
岡部は柄本明率いる東京乾電池に、岩谷は久本雅美や柴田理恵が所属するWAHAHA本舗に在籍していたこともあり、岩谷は退団後に吹越満ソロライブの演出助手も務めた。また、河内は自らがシェイクスピア作品を上演する劇団を主宰し、国内のみならず海外にも活動の場を広げている。酒向は多摩美を卒業後、文学座や青年座、無名塾など新劇系の養成所や集団を受験するも不合格。その後、串田和美率いるオンシアター自由劇場や永井愛が代表を務める二兎社の舞台に立った。さらにこばやしは大学卒業後にニューヨークのリー・ストラスバーグ演劇研究所でメソッド演技を学び、現地でも多くの舞台作品に参加している。
今やさまざまなアップデートがおこなわれているドラマや映画の撮影現場。一昔前のように「俳優は良い演技ができれば素行や態度は問われない」との考えはもう通用しない。そんななか、演劇の現場で磨いてきたスキルを持ち、周囲と良い人間関係を構築しながら作品創作に参加できる「おじさん俳優」は貴重な存在だ。
40代中盤以降にブレイクした俳優はさまざまな意味で倒れず強い。酸いも甘いも噛みわけ、したたかさも身に着けた「おじさん俳優」の勢いは止まらない。
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