性被害に遭った女性 救いを求めた友人に言われた言葉は…【裁判傍聴記・前編】
「私は一切、恐喝していません。無罪です。留守番電話にメッセージを残したのは間違いありませんが脅したつもりはありません」
賽銭泥棒で計400万円を盗んだ男…他人事のように答えていた裁判中に突然泣き出した話題とは【裁判傍聴記】
「マッサージをしてもらいましたが、わいせつの事実はありません。腕を押さえたこともキスをしたことも全くありません。被害者の怪我についても知りません」
恐喝未遂、不同意わいせつ致傷の罪状認否を問われた男(事件当時57歳)は裁判体にそう答え、自らの無罪を訴えた。
過去に住居侵入、強姦致傷罪で懲役14年の実刑判決を受けた被告人
平成22年11月、男はパチンコ代欲しさに強盗を思いつき、大分県内に住む女性の自宅に刃物を持ち侵入。現金12万円余りを奪った上、自宅やホテルで女性に対し性的暴行を加えた。「一人暮らしの女性を狙って犯行に及んだ」と当時の裁判で語っている。
平成23年4月に住居侵入、強姦致傷の罪で懲役14年の実刑判決を受け服役する。
令和6年10月に仮釈放され、令和7年3月にその刑の執行を終える。
令和7年10月下旬、男は大分市内のからあげ店の前で閉店準備をしていた女性A(事件当時43歳)に声をかける。
Aは過去に自身のマッサージ店を個人経営していたが失敗し、からあげ屋でアルバイトをしながら自宅で数人の顧客にマッサージをして生活していた。バツ2コブ3であり、一番下の高校生の息子と二人暮らしをしていた。再度、自身の店舗を持ち、マッサージ店開業を目標にしていた。
「儲かっちょんかえ?」
「イマイチですね」
男はAと談笑し、別府市内に物件を持っているからそこでからあげ店を開かないかと持ち掛ける。Aが只のアルバイトであることを告げると男は、「他に仕事をしているのか」と問い、Aは個人でマッサージをしていると男に答える。すると男が「いかがわしいヤツか?」と聞いてきたのでAは「それはないです。もみほぐしです」と説明した。
「お金がないなら出資もしてあげる」「一度物件を見においで」と男はAに名刺を渡して去っていった。
からあげ店の社長にその話をし、からあげ店の物件として、場合によってはマッサージ店の店舗に使えるかもしれないとAは男に電話をする。そして11月5日、Aは男が自宅の隣に所有する物件を見に行く。しかし、駐車場もなく、カーブに面した場所だったため出店するには適していないと思った。その場では断らず、社長を通して断ってもらおうとAは「検討する」と男に伝えた。帰り際、男がAに「出張マッサージできる?」と尋ねた。「出来ますよ」とAは答え、11月8日18時に男の自宅でマッサージを施術する旨、約束する。
後日、Aが知人に物件を見に行ったことを話すとその知人から驚愕の事実を聞く。
「そこの人、ヤバいよ」
物件場所を聞いた知人が「内容はわからないが、そこの所有者は前科者」と言うのだ。
一抹の不安を抱えるもAは「仕事だから」と割り切り、11月8日に車で男の自宅へ向かう。
咄嗟に思いついたうそで危機を乗り越えた被害者A
自宅に到着したAをリビングに通した男は珈琲を出し、二人は一時間ほど談笑する。
男はAが母子家庭だと知ると「金に困ってるだろ?十万円貸してやる」とAに言った。
Aは断るも男はしつこく金を貸すと譲らない。三十分程その押し問答は続き、Aは折れ、十万円を受け取り、借用書を書かされる。月々五千円、毎月二十七日に返済する旨、住所、電話番号を書かされた。Aは借りざるを得ない状況だったので翌日に全額振り込んで返そうと考えていたという。時間も過ぎていたので「マッサージはどうします?」と聞くと、「じゃぁ、そろそろ」と二人はベッドのある二階へ向かう。Aは二階へ行くことに抵抗があった。男は前科者であり、もし何かあったら二階だと逃げ場がない。しかし、拒否することが出来ず二階に上がり、男がベッドにうつ伏せになり施術が始まる。
施術を始めると男はすぐにいびきを掻きだした。Aはこの仕事の後に友人Bと会う約束をしており、施術の合間にBにLINEを送っている。
施術時間が残り五分となったところでAは男を起こす。
A「他にないですか?(揉み足りない箇所)」
男「足!」
そして、そのタイミングで男は仰向けになる。
Aが足の施術をしていると男は突如起き上がり、Aは突き飛ばされ、ベッドに押し倒された。馬乗りになられ、腕を押さえられ服を脱がされそうになる。(この際に左肩上腕二頭筋腱炎、左肘上腕三頭筋腱炎の全治一週間の怪我を負う)
Aは全力で抵抗する。服を脱がせられない男は自身の顔をAの顔に近づける。Aは顔を背けるも男にキスをされ、更に口内に舌を入れられた。
A「無理無理無理無理!」
男「いいじゃねぇーか」
このままでは犯されると思い、Aは男に告げる。
「私の彼氏、実は怖い人なんです」
それはこの場から逃げ出すために考えついたうそだった。
「警察に行っても俺と会ったって言わないで」
A「交際相手にボコボコにされるよ!」
男「そんな怖い人なんか?」
Aのハッタリに男は怯んだ。
Aはリビングで雑談をしている時に男が「誰々知ってるか?」と反社会的組織の話をしていたので「怖い人」と言えば男が怯むと思ったという。
怯んだ男に対し、「帰らせて下さい」と言い、Aが一階へ降りるとその後ろを男は付いてきて「またマッサージお願い出来るかな?」と言ったという。
「また何かあったら連絡して下さい」
その場を安全に去るため、Aは男を刺激しないように言った。
男の自宅を出て、Aは会う予定であった友人Bに電話をするも繋がらず、LINEメッセージを送っている。
「襲われかけた」
すぐにBから折り返しがあり、近くのコンビニで合流した。
裁判で「どうしてその時、Bさんに連絡を?」との検察官の質問にAは「その時、大好きな人だった。これからそういう風になればいいなと思っていた人」と語っている。
Aは「客に襲われかけた」とだけ伝え、キスをされた事実をBに伝えなかった。その理由として好意があったBに「嫌われたくなかったから」と述べている。
Aの供述によると二人はその後、ドライブをし、その道中、Aは自然と涙がでてきたという。そんなAにBは言った。
「最後までサレなかったんやけん、ラッキーやん」
「警察に行った方がいいんじゃない?」
「でも警察に行っても俺と会ったって言わないでね」
Bは検察側証人として法廷に出廷し、「警察に自分と会ったと言ってほしくない」と言った理由を「巻き込まれたくなかったから」と述べている。
不貞腐れた態度で証人として質問に答える証人B。
裁判は事件とはまた別の感情が渦巻く内容へと変わっていく。
(後編につづく)
文/田辺朋之 内外タイムス

