Daiichi-TV(静岡第一テレビ)

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全国の8割以上の公立病院が赤字に悩まされています。人件費や物価の高騰などが主な理由ですが、再編ではなく“単独での生き残り”を目指すのが市立湖西病院です。経営改革を進める病院に密着しました。

浜名湖の西側に位置する湖西市。人口は、約5万6000人。

まちの中心部にあるのが市立湖西病院。

少子高齢化が進むこのまちの地域の医療を支えています。

(湖西市民)
「病院が少ないもんですからね。湖西病院はありがたいですね」Q(Q.ないと困る?)「もちろん困りますね」

(湖西市民)
「病院がなくちゃ困るし。何十年もここばかりだから…(湖西病院がないと)浜松に行っちゃうかね。たぶんそれぐらいしかないもんね」

ただ、建物の老朽化は深刻です。

(市立湖西病院 管理課 安藤 朋宏さん)
「配管がつまってしまって水が漏れて流れてきて、天井のシミとして残ってしまっている。去年ですけど2回同じ箇所で漏れてしまって、このような状態になっています」

病院の建設から40年近くたち壁のひび割れなども目立ちますが、すぐには修繕できないのが現状です。

(市立湖西病院 管理課 安藤 朋宏さん)
「いろいろなものが故障したりダメになっている中で、優先順位をつけていくと、こういうところはどうしても遅くなってしまうというのがありますね」

医療機器も古くなっています。

この“健診バス”は導入から30年以上たちましたが、医療器具をメンテナンスして使い続けているそうです。

加えて、頭を悩ませているのが中東情勢の影響です。

(市立湖西病院 管理課 渡辺 真也さん)
「医療用のグローブなんですけど、一時期、入荷や在庫がない状態が続いて現在は通常通り入るようになったけれど、価格が2倍以上に高騰していて、病院の経営を圧迫するような状況になっているところです」

月に約9万枚使う医療用グローブの価格は高騰。

薬を入れるプラスチック容器も手に入りにくい状態が続いているといいます。

2025年、総務省は全国の公立病院の8割以上が赤字経営であると発表。

静岡県内でも静岡市清水区の市立清水病院が30億円近い赤字経営に…。

難波市長は病院を再編して存続を目指す方針を示し2027年度から指定管理者制度を導入して清水厚生病院が運営を行う予定です。

一方、湖西病院も赤字補てんのため,
市から“毎年7億円から8億円”の支援を受けています。

そのため、経営改善のめどが立つまで老朽化した病院の建て替え計画も一時中断されているのです。

先週、私たちのカメラが入ったのは“経営状況”について話し合う月1回の幹部会議。

(市立湖西病院 加藤 秀樹 院長)
「県西部全体の方向性として外来患者はそろそろピークアウト。去年、ことしぐらいでという予想は出ているわけですよね」

人口減少が進み患者が減っていく一方、人件費は高騰。ただ、医療機関に支払われる「診療報酬」ではまかなえないのが現状です。

(市立湖西病院 加藤 秀樹 院長)
「ベースアップ評価料150万円とありますが…実際われわれの病院に出ている人件費の増加、150万円では全然足りないでしょ」

(管理課の幹部職員)
「全然足らないです…かなりの持ち出し。1000万円級の持ち出しが出ています」

公立病院が赤字に苦しむ理由について加藤院長は…。

(市立湖西病院 加藤 秀樹 院長)
「診療報酬という医療に対する支払額が決められている中で、なかなか現状少し苦しいところがあると思うんですね。小児科の診療をどうするか、あるいは産婦人科ですね。全部カバーしなければいけないという意味では、どうしても構造的に赤字になるのは仕方ない部分はあると思います」

こうした中、生き残りをかけて湖西病院が掲げるのが“地域密着型の医療”です。

強化したのがまず「救急搬送」。

受け入れ要請された救急患者のうち病院が受け入れるのは8割ほどが一般的ですが、それを、一部の重症患者を除いて「9割以上」を受け入れる体制に。

私たちが取材中、病院に搬送されてきたのは80代の男性。

(救急隊員)
「湖西病院に着きましたよ」

意識がもうろうした状態でしたが、幸い命に別条はありませんでした。最近では隣接する浜松市の三ヶ日町からも多くの救急患者を受け入れているそうです。

一方で、病床数の見直しに着手。稼働率の低下が赤字に直結する入院ベッドは今後、削減する方針です。

さらに、地域密着の柱として2025年夏から本格的に導入したのが「訪問診療」です。週5日、5人の医師が曜日ごとに担当しています。

(市立湖西病院 鶴山 優 医師)
「患者さんの本来の姿は家が一番ありのままなんですよね。病院に入院しているという気持ちがあるので、どこか気を遣っていたり、何かをきっと我慢しているけど、入院しているし本音が言えないというのもきっとあるのではないかと思っていて…」

この日、鶴山医師が訪れたのは、在宅介護を受ける94歳の菅沼さんの自宅。

(市立湖西病院 鶴山 優 医師)
「お父さん調子どうですか?」

(菅沼 正男さん・94歳)
「体の調子はいいんだけど」

(市立湖西病院 鶴山 優 医師)
「体の調子はいいですか?大きく息を吸ってふーってはいてください。そうそう。それ何度か繰り返してくださいね」

鶴山医師は、病状だけでなく心理面も含めて患者に寄り添う「総合診療の専門医」です。優しく声をかけながら体をさわって状態を確認していきます。

2週間に1回、訪問診療を受ける菅沼さんの家族は…。

(菅沼さんの家族)
「もう立ち上がることもできないから、私の力ではとても連れていけない。私も安心ですけど、本人も安心だと思います」

地域医療でニーズが高まっている「総合診療」。ただ、その担い手が少ないのが課題だといいます。

(市立湖西病院 鶴山 優 医師)
「もしこの地域に訪問診療がなかったら、寝たきりの方は家で療養するのは難しいですから。家という唯一無二の癒しの空間で日々を過ごすというのは、それを実現するために訪問診療は必要な医療サービスなのかなと個人的には思っています」

単独での生き残りを目指す湖西病院の将来像を院長にたずねると…

(市立湖西病院 加藤 秀樹 院長)
「一つの病院ですべての診療科をもって、ミニ総合病院みたいなかたちで存続していくのは今後難しいだろうと…。高度の急性救急まですべてをカバーできるわけではないけれども、少なくとも最初に最大限湖西病院に来ていただいて…。収益のアップにもなりますし、何よりもこの地域の皆さんが安心して生活できる、そのようなかたちを目指していく」

慢性的な赤字経営に悩まされている公立病院。“地域密着型の医療”が病院存続のヒントになりそうです。