【特集】被爆体験の語りべが秋田大学へ 招かれたのはいずれも戦後生まれの2人 次の世代へ語り継ぐ意義を学生に伝える 秋田
広島「原爆の日」を前に先月、被爆体験を次の世代に伝える語りべが秋田大学に招かれました。
招かれたのはいずれも戦後生まれの2人で、学生たちに次の世代へ語り継ぐ意義について伝えました。
戦争を経験した人から直接話を聞くことが年々難しくなっていく中、記憶の継承の在り方について研究を続ける秋田大学の外池智教授です。
この日、ある人を秋田に招きました。
外池智教授
「どうもお世話になります。外池です。どうもお待ちしておりました」
細川洋さん
「秋田の若い人たちにね、ぜひ広島のことを知ってもらって、それをどう受け止めて何をするかというのはその人それぞれなんですけれども、何かこう平和の種がまけたらいいなと」
この時季に毎年開かれている特別な授業。
主に教師を目指す学生たちが参加しました。
細川さんの父=浩史さんが被爆したのは17歳のときです。
当時は勤め先の建物にいて助かりましたが、妹の瑤子さんを亡くしました。
家族に自らの体験を話すことはなかったといいます。
細川さん
「無理やり隠そうとしていたわけでも押し殺そうとしていたわけでもなく、単純に忘れたかったと、あまりにつらいんで」
浩史さんの定年退職後、瑤子さんの身に起きたことを、平和教育の一環で訪れた神奈川の高校生に話したことをきっかけに始まった証言活動。
しかし、コロナ禍でその機会がなくなったことなどに危機感を覚えた細川さんは、3年前に被爆体験を語り継ぎました。
その年、95歳で息を引き取った浩史さん。
原子爆弾の投下直後、焼け野原となった街で出会ったのはやけどを負った子どもたちでした。
「すまんのお、水を飲んだら死んでしまうけえ、飲ませられんのじゃ言うて説いてまわって、ごめんねえ言いながらその場を立ち去ろうとしたら見ている目の前で水を飲んでも飲まんでもばたばたと中学校1年生たちが水ちょうだい言いながら亡くなっていったそうです。息を引き取ったそうです。だから父はよく言ってましたね。亡くなる3か月前まで言ってましたけども、あのとき水を飲ましてやればよかったのう、飲んでも飲まんでも死ぬんじゃったら最期の望みくらい聞いてやりゃ良かったのお」「なんでわしだけ生き残ったんじゃろうか、なんで愛するあの人が亡くなったんじゃろうか、なんであの時あの人を助けてあげんかったんじゃろうか、ずっと責め続けながら自分の命を終えていくというのが被爆者の苦しみです」
細川さん
「一市民として聞いてくれる皆さんに人間として何を感じますか、というようなことを訴えていたのが父のスタンスだったので、私も受け継いでそういった覚悟で話をしています。広島に(原爆が)落ち、長崎に落ち、3発目は人類に落ちるんですとで、被爆者はやがて近い将来絶滅しますと、そのときにあなたは何をしますかと」
この日招かれたもう一人が、長崎の交流証言者=加藤薫さん(27)です。
大学での授業をきっかけに、8年前から語りべの活動を続けています。
加藤薫さん
「真剣に(被爆者の)手記読むのかなと思いきや(学生の)私語とか笑い声とかがすごい多くて、ショックを受けて知らない人たちに伝わるように伝えたいなと思ったのがきっかけです」
加藤さんが語り継ぐのは母校=長崎西高校の前身となる学校(旧制中学・瓊浦中学校)の生徒だった丸田和男さん(94)の証言です。
幼い子どもにも伝えやすいようにと紙芝居を使って語ります。
「きょうはあつか~汗でびっしょりになった上着を脱いで上半身裸になりましたそのときでした」
「にぶいエンジン音がしばらく続いたかと思うとごーっというものすごい急降下の爆音に変わり続いてぴかーっと青白い閃光が目の前を走ったのです」
「後頭部から背中にかけてガラスが刺さり、生ぬるい血がだらだらと流れる感触で生きているのだと実感しました」
その後、被爆による障害に苦しみながらも生き残った丸田さん。
あの日起きたことを後世に語り継いでいかなくてはいけない。
その思いを託された加藤さんは自らの言葉で締めくくりました。
加藤さん
「被爆体験を過去のもの、昔話と捉えるのではなく、私たちの身にも起こり得ることとして自分事としてとらえていくのが大事だと思っています。被爆者の方や戦争体験者がいなくなった時代でも、その方々の体験や、平和への強い思いを受け継ぐことができるように、きょうから皆さんも自分ができることを考えてほしいと思います」
大学生
「周りの人ととかに、今の私からの目線を率直に気持ちを伝えていくことで、もっと意識が、少しずつだと思うんですけど変わるかなと」
大学生
「自分事としてとらえられるような物語とか、そういう話をしっかりと教員として子どもたちに話せる範囲で語り継いでいけたらいいなと思っています」
この先も新たな被爆者を生まないために、教育の現場から、ひいては日々の暮らしの中から記憶の継承の在り方を模索し考え続けます。
※8月6日午後6時15分のABS news every.でお伝えします
