記事のポイント
ジ・オーディナリーは美容関連のAI回答の7%に登場し、成分の透明性や詳しい製品情報を強みに引用ブランド首位となった。
AI引用では新興ブランドが上位を占める一方、老舗ブランドは苦戦しており、エスティ ローダーも18位にとどまった。
AIが美容商品の発見・購買経路として広がるなか、ブランドには製品情報や独自調査、動画コンテンツの充実が求められている。


ジ・オーディナリー(The Ordinary)は2016年、ヒアルロン酸やカフェインといった単一の有効成分を軸に据えた手頃な価格のスキンケア処方を引っさげて登場し、美容業界に衝撃を与えた。それから10年、そのアプローチは、エスティ ローダー(Estée Lauder)傘下のこのスキンケアブランドを、美容消費の新時代において後押ししているようだ。

PR会社の5W AIコミュニケーションズ(5W AI Communications)のデータによると、ジ・オーディナリーはAIの引用で登場する美容ブランドのリストで首位に立つ。同ブランドの製品は、ChatGPT、クロード(Claude)、パープレキシティ(Perplexity)、Google AI Overviewsに寄せられた美容関連の消費者プロンプトへの回答のうち7%に登場した。

上位の結果はスキンケアブランドがおおむね占めており、セラヴィ(CeraVe)とラ ロッシュ ポゼ(La Roche-Posay)もAI引用によるブランド上位5位に入った。

AIは成分と専門家の資格を重視する



こうした結果は、ChatGPTやGoogle GeminiのようなLLMが、製品のおすすめを提示する際に成分や専門家の資格を重視するという、新たな発見モデルを物語っている。

「ブランドは成分の透明性を打ち出している。皮膚科医としての資格について語っている」と、5W AIコミュニケーションズの創業者兼会長であるロン・トロシアン氏は述べた。

「そして、AIエンジンが好むのはまさにそういった情報、つまり詳細な説明、より多くの事実なのだ」。

ここ数カ月、セフォラ(Sephora)やアルタ ビューティー(Ulta Beauty)といった美容小売業者は、自社プラットフォームにAIを統合するため、それぞれOpenAIやGoogleといったテック大手との提携を発表している

AIが主要な発見経路としての従来型の検索を覆しかねないなか、こうした提携は拡大している。デジタルマーケティング会社WSIの2025年9月のレポートによると、Google検索の58%は外部サイトへのクリックがゼロで終わっている。

メイクでは新興ブランドが台頭、老舗は苦戦



主にメイクアップのブランドのなかでは、シャーロット ティルブリー(Charlotte Tilbury)がAI引用でトップのブランドとなり、AI引用の4.5%に登場した。これは主に、マジッククリーム、ピロートーク、フローレスフィルターといった製品のおかげである。

同ブランドはプーチ(Puig)のポートフォリオのなかでも際立った存在であり続けている。このスペインのコングロマリットが4月に公表した2026年第1四半期のレポートによると、既存事業ベースのメイクアップ売上は9.2%増加し、その大部分はシャーロット ティルブリーの売上がけん引した。

レア ビューティー(Rare Beauty)やドランク エレファント(Drunk Elephant)といった21世紀生まれのブランドもトップ10入りを果たした一方で、老舗ブランドはAIに引用される上位ブランドからおおむね姿を消していた。5Wのデータによると、エスティ ローダーはAI引用でもっとも高順位の老舗美容ブランドで、18位だった。

「あらゆる業界に、深刻な苦境に陥っている老舗ブランドが存在する。これはまったく新しい世界だ。そして、従来型の大企業が抱える課題のひとつは、変化に対してより抵抗が強いことだ」とトロシアン氏は述べた。

ブランドのAI対策と拡大する購買行動



トロシアン氏は、2027年にはより多くのブランドがAI上での存在感を高めるための施策に投資するだろうと予測する。それには、自社サイト上により詳細な製品情報(引用)を整備すること、独自調査をより多く公開すること、そしてLLMが拾い上げるような情報を生み出すために動画コンテンツをより多く制作することが含まれる。

しかし、ChatGPTのようなLLMが拾い上げるデータの多くは、ブランドが直接コントロールできる範囲の外にある。5Wによると、ウィキペディアのページや、r/SkincareAddiction、r/MakeupAddiction、r/30PlusSkinCareといったレディット(Reddit)のコミュニティも、AIの美容検索クエリで一般的に引用されている。

AIを利用する消費者は、場合によっては、より支出に前向きな姿勢も示している。Amazonによると、2025年11月から12月にかけて、この小売大手のAIチャットボットを使って購入した消費者は、使わなかった消費者よりも80%多く支出した。

エスティ ローダー カンパニーズは5月に公表した2026年第3四半期の決算報告で、スキンケア全体の売上は横ばいのままだったものの、ジ・オーディナリーの純売上高は2桁の伸びを示したと述べた。

とはいえ、AIによる買い物や発見の道筋は依然として不透明だ。OpenAIは2026年3月に「Instant Checkout(インスタント・チェックアウト)」機能を撤回したほか、消費者はオンラインコンテンツにおけるAIの存在感の高まりに対して、抵抗や懐疑も示している。

しかし、それでも消費者がAIを取り入れる動きは止まっていない。とりわけ買い物においてそうだ。

ニールセンIQ(NielsenIQ)によると、消費者はChatGPTで週に10億回を超える美容関連の検索を行っており、Z世代の49%近く、ミレニアル世代の37%が、検索や買い物のために生成AIを週1回利用している。

[原文:Ingredient-led brands are dominating AI beauty citations]

Emily Jensen(翻訳、編集:藏西隆介)