全東信

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「7月9日になって急に(全東信から)手紙が来て、“破綻したから入金ができない”と伝えてきた。だから、その日までのお金が入ってない。金額にして20万円だけど、どうなっちゃうんですかね」

 そう打ち明けるのは東京・西麻布でワインバーを営むマスターである。決済代行会社の全東信(大阪市中央区)が、突如破産申請したのは7月6日。負債総額は1151億円で、全国の飲食店へのダメージは大きい。店に行ったら「すいません。今日はカードじゃなく現金払いで」と言われて戸惑った人も多いのではないか。

 それにしてもJCBやVisaといったカードで支払いをしているつもりが、聞いたこともない会社(全東信)が間に入っているのは、どういうことなのか。

全東信

 カード決済がどんな流れになっているのか説明しておこう。

「まず、飲食店で食事をして代金1万円をカードで払ったとしましょう。そのお金はいったん“イシュア”が受け取る。銀行系や流通系といえば分かりやすいですが、カードの発行元です。イシュアは200円(2%)ほどの手数料を受け取り、さらにJCBやVisaといった世界ブランドと提携していた場合、代金から約0.05%の提携料をブランドに払う。そして残りの金を“アクワイアラー”という業者に渡す。アクワイアラーの役目は加盟店の開拓や管理と、イシュアから受け取った代金の分配です」(カード会社の幹部)

風俗店でカードが使えるように不正

 アクワイアラーはここで数%の手数料を取り、最後に飲食店に代金を払うという仕組みだ。しかし、大抵の場合、入金は月末。従業員への給料支払いや仕入れが必要な飲食店には苦しいところもある。そこで代わりに入金をしてくれるのが全東信のような「決済代行会社」だ。

「同社と契約すれば、月6回や毎日など高頻度で入金してくれるのです。もちろん、その分だけ手数料を取られるのですが」(前出のカード会社の幹部)

 個人経営の飲食業にとってはありがたいサービスだが、全東信はオーナー色が強く、以前から不透明な資産移動があったとされる。破産申請をいち早く報じた東京商工リサーチに聞いてみると、

「中でも2年前に事件を起こしてしまったことが大きな痛手でした。風俗営業店(個室マッサージ店)でカードが使えるように不正を行ったことで営業本部長が逮捕。法人も警視庁によって書類送検されてしまったのです。会社が刑事事件に関わってしまったことで、メガバンクは同社を相当に警戒していました」

 倒産事件には珍しく全東信の破産申請は即日に認められた。裁判官が全国の飲食店への波及を懸念したためだと考えられる。利用者には見えない闇が顔をのぞかせたわけだ。

週刊新潮」2026年7月23日号 掲載