羊丸焼きや限定麻婆に熱狂! 1日で即完売「ガチ中華の大宴会」が日本人を惹きつける訳
中華料理に興味がある人ならば、ラム肉料理が美味しい『味坊集団』や四川料理がおいしい『陳家私菜』などのお店を聞いたことがあるかもしれない。ランチタイムもディナータイムも多くのお客さんで賑わっているが、実はお店やファン主体で企画されている宴会があり、80人規模でもすぐに埋まってしまう会もあるほど人気となっているのだ。何が中華ファンを惹きつけているのだろうか。
即満席! 熱狂の『味坊』大宴会
5月18日、味坊集団の秋葉原にあるお店、『香福味坊』で開催された羊丸焼きの会に参加した。店内貸切で行われた宴会は80人規模の参加者が集い、主役の羊丸焼きや鶏肉の蓮の葉蒸しなどをはじめ全15種類の料理が提供された。もちろん飲み放題付きで、会の中盤以降は味坊集団社長の林さんが各テーブルにまわり白酒を振る舞うなど大盛況に終わった。
味坊集団主催の宴会はコロナ禍以降、毎月1回開催されるようになり、この会で24回目となった。味坊集団は都内で10店舗以上を展開しており、お店のキャパシティが大きい場所を中心に、店を変えながら開催されている。
宴会の告知は味坊集団のX(旧Twitter)で行われており、チケットをPeatixで前払いすることで参加できる。特に’26年以降は、この宴会の存在が少しずつ認知されていったためか、SNSでの告知から1日足らずで80席のキャパシティが満席になってしまう状況が続いている。早いと16時間で80席が満席になる回もあったという。参加しようか少しでも迷っていると、たちまち満席になり参加できなくなってしまうのだ。
こうしたお店主体の宴会がここまで人気を集める背景には、少人数でも中国スタイルの宴会を味わえる楽しみがあるからだろう。中華といえば大人数でワイワイというイメージが強いが、味坊集団の宴会は相席にはなるものの、1人でも参加することができる。
羊肉やパクチー、スパイスなどを使う料理は好みが分かれることもあり、大人数を集めるのは難しいが、1人でも参加してみたいという人々のニーズを的確につかんでいるのだ。特に羊の丸焼きなどは最低でも15人は揃えないと食べられないため、そうした宴会に1人から参加できるというのはかなりレアな機会である。
味坊集団の宴会にこれまで3回以上参加したというある20代女性の参加者は、「1人でもいろいろな種類の珍しい中華料理が食べられるのが嬉しいポイントです」と語っている。
限定麻婆も!『陳家私菜』の熱い宴
味坊集団はお店が宴会を主催しているが、ファンが主体となって宴会を開催しているのが東京都内で8店舗を展開する四川料理店の『陳家私菜』である。こちらは味坊集団よりさらに昔の’17年ごろから月に1度ほどのペースで開催されており、毎回40〜80名ほどの参加者が集まる。
主宰しているのは、陳家私菜の麻婆豆腐にハマりすぎてSNSで『#麻婆豆腐しか信じない』というアカウントを運営するほどの麻婆豆腐好き、橋爪氏である。「美味しい料理をみんなと分かち合いたいということがきっかけでファンの集いを開催することになった」という。
陳家私菜の会も味坊集団と同様、お店側と連携して開催されており、お店のLINEやSNSを使って集客を行っている。オーナーシェフの陳氏や社長の党氏なども駆けつけて料理の解説などをしてくれ、ファンの集い限定で食べられる麻婆豆腐なども人気の品である。
筆者も過去に参加した会では、看板メニューの石焼麻婆豆腐だけでなく、じゃがいもが入った麻婆豆腐や白い麻婆豆腐など3種類の麻婆豆腐がメニューに組み込まれており、そのおいしさや麻婆豆腐の奥深さに驚かされた。
リーズナブルなランチメニューでも人気の陳家私菜だが、宴会ならではの特別メニューや、少人数でも参加できるという点が人気を集めている。さらに、ファンの集いのためのスタンプカードも用意されており、参加回数に応じて自家製辣油や陳家私菜オリジナルTシャツがもらえるなど、何度も通いたくなる仕組みが用意されているのも嬉しいポイントである。
陳家私菜ではファンの集い以外にも、オーナーの陳氏や社長の党氏と一緒に餃子を包む料理教室なども開催されている。お店の人と一緒になって中華料理を作ったり食べたりできる企画が人気を博しており、リピーターも多いという。
ちなみに’25年には、陳家私菜と味坊集団がタッグを組んだ合同の宴会も開催された。味坊集団のラム肉料理と陳家私菜のよだれ鶏や麻婆豆腐が一緒に楽しめることから、即座に満席となる人気イベントであった。’26年も同様のイベントの開催が期待されるところである。
専門家が解説!『南方急行』の酒宴
都内で海鮮蒸し鍋が食べられる『ムーさんの蒸鍋館』(池袋)や、雲南料理が食べられる『食彩雲南』(四ツ谷、湯島ほか)などを経営するムー氏が、新宿御苑前で経営しているのが中国南方の料理にフォーカスした『南方急行』というお店である。上海から列車に乗り、雲南省までに経由する各地の料理を食べられるというコンセプトの店なのだが、’26年の4月からは新たな試みとして紹興酒の量り売り企画が始まった。
中華料理店に行けばたいてい置いてある紹興酒だが、銘柄を指定して飲む人は少ない。そこで、いろいろな種類の紹興酒を飲み比べてもらおうというコンセプトのもと、6種類の甕出し紹興酒や8種類のボトル紹興酒が楽しめるようになっているのだ。
南方急行でも紹興酒の量り売り企画スタートに伴い、4月以降はお店主催の宴会が月に1度ほどのペースで開催されている。20名以下の小宴会から70名超の大宴会まで、幅広い規模で行われているのだ。
紹興酒の量り売りは中国酒専門家の門倉氏が監修しており、宴会に参加すると門倉氏の解説を聞きながら紹興酒を飲み比べすることができる。紹興酒のみならず、白酒などの中国酒にまつわる豆知識や、店で提供されている紹興酒の味の特徴などについても解説してくれるため、お腹だけでなく知的好奇心も満たされる。こちらも南方急行のSNSで不定期に募集がかけられている。
ガチ中華が固定ファンを生む訳
これまでガチ中華イベントの宴会に参加すると、年齢層は40代以上の方が多いイメージがあったが、最近の味坊集団では35歳以下限定の会も定期的に開催されるようになっている。
筆者が一度参加してみたところ、同卓に座った参加者は、中国そのものに興味があるというよりは、異国料理やスパイス料理に惹かれて味坊にたどり着いたという層が多かった。ガチ中華といえば、駐在や留学などで中国滞在経験がある人がメインの客層というイメージがあった。しかし現在では、こうした宴会で提供される美味しい食事を純粋に楽しみたいグルメな若者層にまで広がっていることを嬉しく感じる。
このようなガチ中華宴会が開催されることで、ガチ中華好きに限らず、日本人のグルメ好きやお酒好きの間でもお店の認知が広まっている。それが結果として、何度も通ってくれる固定ファンを作り出すことにつながっているように見える。
味坊集団、陳家私菜、南方急行の宴会では、毎回オーナーや社長自らが参加し、参加者との交流を深めていることもファンを増やす大きな理由の一つである。昨今、池袋や上野などでガチ中華の店が増加したことで競争が激化しており、いかに日本人を集客するかで悩む中国人オーナーも多い。しかし、こうしたガチ中華宴会の開催は、日本人のファンを増やすための有効な解の一つだといえるだろう。
中国スタイルの雰囲気の中で宴会限定メニューがいただけたり、参加者同士から中華好きやスパイス好きのコミュニティが生まれたりと、楽しい発見に満ちているのがガチ中華宴会である。ぜひ各店のSNSなどをチェックして、一度参加してみてほしい。
取材・文・写真:阿生
会社員兼ライター。東京で中華を食べ歩く会社員兼ライター。大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、ガチ中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内を中心に新しくオープンした中華を食べ歩いている。
