記事のポイント
ビューティーブランド各社は、2026年ワールドカップをファンとの接点を広げる重要なマーケティング機会と位置付けている。
ノットユアマザーズやファジット、NYXは、観戦イベントや試合前メイク体験などリアル施策を通じてブランド認知を高めている。
スポーツ観戦は自己表現の場へと変化し、ビューティーはファンの体験を彩る新たな要素として存在感を強めている。


2026年のサッカー・ワールドカップ北中米大会でブランドマーケティングが熱狂的な高まりを見せるなか、さらに多くの企業がこの世界的なイベントにおいて自らのニッチ(独自の市場隙間)を見出している。

なかでもビューティーとスキンケアは、2026年、これまで以上に大きな注目を集めており、ビューティーとスポーツがいかに密接に結びつくようになったかを物語っている。

たとえば、スキンケアブランドのポーラチョイス(Paula’s Choice)はサッカー・ワールドカップ北中米大会の公式スキンケアスポンサーに指名され、ダヴ(Dove)やレクソーナ(Rexona)などのユニリーバ(Unilever)のパーソナルケアブランドも同大会の主要スポンサーに名を連ねている。

だが、スポーツ人気の波に乗ろうとしているのは、FIFAの公式スポンサーだけではない。

ブランドが北米各地の異文化が交差する瞬間に乗じようとするなか、ヘアケアブランドのノットユアマザーズ(Not Your Mother’s)、化粧品ブランドのNYX、ビューティーブランドのファジット(Fazit)といった企業は、ファンを対面の場で結びつけ、大会期間中にブランド認知度を高めようとしている。

だが、こうした施策は、ビューティーブランドが標準的なマーケティングチャネルの枠を超えてオーディエンスを取り込もうとする、より大きなトレンドの一部でもある。従来は男性が主流だったスポーツイベントへのビューティーの浸透は、ここ数年で高まりをみせている。

「かつてないほど、ビューティーとスポーツが融合しつつある」。ビューティーブランド、ファジットのパートナーシップ&コラボレーション責任者を務めるアミット・サリン氏は、Modern Retailのインタビューでこう語った。ファジットはラメ入りのそばかすメイクや試合当日用のフェイスパッチを販売するビューティーブランドで、米国サッカー連盟(U.S. Soccer)の公式パートナーでもある。

「セフォラ(Sephora)のような大企業が、大規模なスポーツパートナーシップを通じてチームを後押ししているのを目にしている」とサリン氏は付け加えた。

「それは、ビューティーを通じて自己表現するファンに応えようとしている我々のような存在にとって、励みになってきた」。

ビューティーブランドがワールドカップへ向かう理由



当然ながら、多くのビューティーブランドが女性リーグの支援に乗り出しており、アーバンディケイ(Urban Decay)やイプシー(Ipsy)は最近、WNBAチームの公式ビューティーパートナーになった。

2026年は、クリーンメイクブランドのセイ(Saie)がニューヨーク・ニックス(New York Knicks)の公式ビューティースポンサーとなり、同チームが6月初旬に53年ぶりのNBA制覇を果たしたことで、大きなマーケティングの好機が生まれた。

だが、多くのビューティーブランドにとって、ワールドカップ施策に参加する動機はシンプルだ。無視するにはあまりに大きな、文化的な瞬間だからである。

ノットユアマザーズが描く「観戦体験」のブランド戦略



多くのブランドがワールドカップを利用し、サッカーを愛する顧客とのあいだでビューティと結びついた特別な瞬間を作り出している。

ヘアケアブランドのノットユアマザーズは、6月27日、抽選で選ばれた顧客やインフルエンサーパートナーをマイアミで開催されたコロンビア対ポルトガル戦の観戦に招待した。このスポンサードイベントは、同ブランドがマイアミで展開する、より大規模な体験型ワールドカップキャンペーンの一部だ。

ノットユアマザーズCMOのシャーレーン・パッテン氏は、ここ数年で、スポーツにおけるビューティーマーケティングは、パブリックビューイングであれ試合そのものであれ、イベントの場でどう見られたいかを打ち出す方向に進化してきたと語る。

「とりわけワールドカップは完全な文化イベントであり、我々の最新戦略の一環として、我々は文化の最先端に立ちたいと考えている。たとえスポーツ好きでなくても、そこには非常に大きな高揚感と好奇心がある」とパッテン氏は言う。

このスポーツマーケティングへの多額の投資は、同社が2025年に実施したリブランディングに続くものでもある。

2010年にタンパで創業したノットユアマザーズは、開催都市であるマイアミで施策を展開し、その多様な人々を体現することに着想を得た。

試合当日のアクティビティでは、約40人のインフルエンサーと顧客が試合前のパーティーに参加したあと、コロンビア対ポルトガル戦の観戦へと向かい、ブランド仕様のスイートルームから試合を観戦しながら、ブランドに代わってリアルタイムでコンテンツを制作した。

同社は、参加国を体現してもらうため、ラテン系やヨーロッパ系など、さまざまな文化的背景を持つフロリダを拠点とするインフルエンサーを複数起用した。パッテン氏によれば、ブランドはこのプレゼント企画の一環として、動画応募をもとに3人の顧客とその同伴者を選び、イベントに招待したという。

「コーチェラ(Coachella)のような大型イベントで起きているような、インフルエンサーだけのためのものにはしたくなかった」とパッテン氏は語る。

プレパーティーでは、ヘアスタイリングや、カスタマイズ可能なノットユアマザーズのブランドジャージが提供された。パッテン氏は、フロリダの蒸し暑い夏は、参加者がブランド製品を試す機会でもあると話す。

「湿気と闘うカーリーヘアの人たちに、我々は深く共感している」とパッテン氏は言う。

ファジットは試合会場近くでリアル体験を提供



ファジットもまた、米国代表の勝利を祝う割引などのプロモーションを大会期間通じて展開してきた。だが、同社は試合会場のすぐ近くでのリアル(IRL)施策も手がけている。

ファジットは2022年にニキビパッチとシリコン製の傷跡ケアパッチでローンチしたが、2024年後半にカンザスシティ・チーフス(NFL)の試合でテイラー・スウィフトが着用したことで人気が爆発した。

それ以降、ファジットはスウィフトがもたらした売上急増を受けて、試合当日向けメイクへとさらに舵を切るため、チームスピリット(応援グッズ)コレクションを拡充してきた。2026年、同社はこのスポーツ重視の勢いを維持したいと考えている。

ワールドカップに向けて、同社は、スタジアムに足を踏み入れる前やパブリックビューイングに立ち寄る前に、お気に入りチームのデカール(転写シール)やチームカラーのグリッターを付けるという、人気のあるファン体験をさらに発展させたいと考えた。

そこでファジットは、ビューティーラウンジのブラッシントン(Blushington)と、同社初の店頭メイクオーバーコラボレーションを立ち上げた。

この体験の一環として、ブラッシントンはファジットのサッカーパッチコレクションを、小売販売、あるいは15ドル(約2250円)のプロによる施術追加サービスとして独占的に提供している。このコラボサービスは、開催スタジアムの近くに位置するブラッシントンのニューヨーク、ヒューストン、ボカの各店舗で利用できる。

ファジットのサリン氏は、サッカーに特化した製品やスポンサーシップへの同社の投資は、今回のワールドカップで新規顧客を獲得する大きなチャンスだと語る。

同ブランドの製品はオンラインおよび複数の小売店で購入できる。しかしサリン氏によれば、ブラッシントンとのパートナーシップにより、同ブランドは自社製品にふさわしい環境で対面型の体験型スポーツマーケティングを展開できるという。

「熱気のある場所に店舗を構えるブラッシントンとの取り組みは、しっくりきた」とサリン氏は言う。彼は、ファンゾーンや祝賀鑑賞パーティーなど、施策が展開される都市から生まれる大量のソーシャルメディア投稿を挙げた。

「顧客が新鮮なそばかすフェイスを手に入れ、この盛り上がりのど真ん中へと歩き出していく、その現地ならではの魅力が欲しかった」。

ブラッシントンにとっても、このコラボレーションは、夏を通じて顧客の予約とフェイスデカールの追加サービスを増やす手段でもある。

ブラッシントン共同創業者のニッキー・マロン氏は、自社で試合前のルーティンの一環としてセッションを予約する顧客が増えているのを受けて、ファジットとの提携に意欲的だったと語る。

「人々は、スポーツイベントで何を着るか、自分をどう見せるかを考えている」とマロン氏は言い、ビューティーはファン体験の一部になったと述べる。

「ジャージを着て来店し、母親や娘が試合前のヘアセットを選ぶ家族連れを目にしている」と彼女は語る。だからこそ、ファジットのデカール追加サービスは、こうしたサービスと相性がよいのだ。

ファジットがこれまで製品をプロモーションしてきたほかのスポーツイベントと同様に、ワールドカップは同社がマーケティングに取り込み続けたいと考える種類の共同体的な体験だとサリン氏は語る。

「ビューティーというカテゴリーを見ると、女性アスリートだけでなく、ファンにも応える機会がある」とサリン氏は言う。

「ファジットは、その核心において、喜びに満ちた自己表現の上に築かれたブランドだ。グリッターのそばかすを付けて、幸せにならないなんてことがあるだろうか」。

NYXは歴史的な女性審判を起点にブランドメッセージを発信



6月、NYXプロフェッショナルメイクアップ(NYX Professional Makeup)は、カティア・イッツェル・ガルシアとのパートナーシップによる「パシオン・プルーフ(Pasión Proof)」キャンペーンを立ち上げた。ガルシアはチュニジア対オランダ戦で歴史を刻み、男子FIFAワールドカップの試合で主審を務める初のラテンアメリカ人女性となった。

同ブランドは、開催都市であるロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、ダラスでのパブリックビューイング、サンプリングセッション、屋外広告(OOH)キャンペーンなど、全国で対面イベントも展開している。

NYXプロフェッショナルメイクアップのゼネラルマネジャー、アナ・マクマホン氏は、このキャンペーンは、同社のラテン系顧客のなかにいるサッカー熱狂者に届けるための取り組みの一環だと語る。

「ラテン系のファンはフットボールをただ観るだけでなく、フットボールに生きている」と彼女はメールで述べた。

同ブランドは、既成概念を打ち破る女性像に光を当てる「メイク・ゼム・ルック(Make Them Look)」シリーズの最新の顔にガルシアを選んだ。今回のワールドカップでは、男子ワールドカップ史上初となる、全員アメリカ人女性の審判団も登場しており、NYXはこの歴史的な瞬間を最新のマーケティング施策に取り入れたいと考えた。

パシオン・プルーフは、とりわけNYXのリップIV(Lip IV)保湿美容液を訴求するもので、重要な試合の審判のような高強度の活動にも適した、汗に強いソリューションとして打ち出している。

「パシオン・プルーフは、我々が何年もかけて築いてきたもの、つまり、スポーツにおける女性とその女性たちが創り出す文化への投資に対するコミットメントの延長線上にある」とマクマホン氏は語った。

ビューティーはスポーツファン体験の一部になった



一方パッテン氏は、スポーツマーケティングでは、ビューティーブランドがキャンペーンの計画において機敏であることが求められると話す。それは、チケット販売やロジスティクスが大きな話題となった2026年のワールドカップでは、とりわけ当てはまる。

「我々は非常に俊敏で、1年前からキャンペーンを計画するようなブランドではない。それは、文化のスピードに合わせて動きたいからだ」とパッテン氏は言う。

ブラッシントンのマロン氏は、ビューティーがスポーツファンダムの体験においてますます重要な要素になっていくとみている。

「数年前は、ビューティーとスポーツは2つの別々のエコシステムに見えたかもしれないが、いまでは両者は同じ1つのものだ」とマロン氏は語った。

[原文:How beauty brands are popping up around World Cup festivities]

Gabriela Barkho(翻訳、編集:藏西隆介)