長期政権を築いた森保監督。選手たちとの信頼関係を築き、日本代表の文化を成熟させるなど、その功績は間違いなく大きい。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 日本代表の次期監督は、「日本人」にこだわる必要はない。

 約8年間にわたってチームを率いてきた森保一監督は、日本代表を着実に成長させてきた。森保ジャパンは2018年ロシアW杯後にスタートし、22年カタールW杯ではドイツ、スペインを撃破してベスト16入り。そして26年北中米W杯では、グループステージを突破し、ラウンド32では優勝候補ブラジルと接戦を演じ、惜しくも敗れた。

 勝負としてみれば、ブラジル戦もワンチャンスがあり得たが、逆転負けという結果を素直に認め、突き詰めれば、まだまだ世界の列強とはベースのところで差があると言わざるを得ない。

 もちろん、選手たちが日頃から戦うステージや環境を高めるのは今後の大前提となるが、現状の代表チームが彼らの成長のための刺激剤になっていけるかは疑わしいところだ。

 8年間という長期政権の中で、森保監督は選手たちとの信頼関係を築き、日本代表の文化を成熟させてきた。コミュニケーションを重ね、選手の個性を理解し、それぞれの強みを引き出すマネジメントは、高く評価されるべきだ。

 実際、日本代表は大会ごとに積み上げを見せ、戦術面でも選手層でも確かな進歩を遂げてきた。しかし、カタール大会はベスト16、北中米大会はラウンド32。相手がブラジルだったことを考慮しても、さらに前向きな爆発力を生むのは難しい。

 同監督の3期目となれば、主力選手たちは監督の考え方を熟知し、監督も選手を知り尽くしている。それは安定感につながる半面、新しい刺激や価値観が入り込みにくくなるという側面もある。
 
 世界の強豪国が一定のサイクルで指導者を交代させるのも、そのためだ。日本代表は今、土台を築く段階ではなく、その土台をどう世界基準へ引き上げるかというフェーズに入っている。そのタイミングだからこそ、外部からの刺激を取り入れる意味は大きい。

 もちろん、日本人監督には大きなメリットがある。選手との距離感、国内クラブとの調整、Jリーグとの連係、協会との意思疎通など、日本サッカーを熟知しているからこそできる仕事は少なくない。森保監督が長期政権を築けた背景にも、そうした日本人ならではの強みがあった。

 だからといって、「日本人でなければならない」という発想に縛られる必要はない。重要なのは国籍ではなく、現在の世界サッカーの潮流を理解し、日本代表をさらに一段高いレベルへ導ける指導者かどうかである。

 仮に日本サッカー協会(JFA)の基本方針が森保監督の続投、あるいは日本人指導者への継承を軸としているのであれば、それ自体は理解できる。実際、現体制でも十分な成果は上げてきた。

 それでも、このタイミングだからこそ一度、世界に目を向け、思い切った人選を検討してほしい。
 
 理想的な人物はユルゲン・クロップ監督。現在はレッドブル・グループのグローバルサッカー部門責任者としてクラブ全体を統括しているが、現代サッカーを代表するリーダーであり、ゲーゲンプレスを軸に、個性的な選手たちを組織として築き上げる手腕は世界最高クラスと言っていい。

 ドイツ代表監督就任への噂も出ているが、仮に“三顧の礼”で迎え入れることができれば、欧州の主要リーグに身を置いている選手にも大きな刺激になるだけでなく、Jリーグの底上げに向けた発信力にもなりうる。

 第二プランとして考えたいのが、今まさに北中米W杯で代表チームを指揮している監督だ。日本代表とのマッチングを含めて考えると、オーストリア代表のラルフ・ラングニック監督は興味深い存在だ。

 組織的なプレッシングと育成を融合させる思想は、日本代表の運動量や献身性とも親和性が高い。戦術だけでなく、チーム全体の方向性を構築できる監督である。

 コロンビア代表のネストル・ロレンソ監督は、コロンビア代表を安定した強豪へ押し上げ、南米と欧州双方のサッカーを理解する柔軟性を持つ。スイス代表のムラト・ヤキン監督は、堅守と組織力を両立させながら、限られた戦力を最大限に活かす手腕を証明してきた。
 
 大切なのは、日本人か外国人かという枠組みではなく、「2030年に世界の頂点へ近づくために、誰が最も日本代表を成長させられるか」という基準で候補者を選ぶことだ。

 森保ジャパンが築いた財産は大きい。その土台を守ることも重要だ。しかし、その財産をさらに発展させるには、時に勇気ある変化も必要になる。日本サッカーが次の壁を破るためには、継続だけではなく、新たな刺激を受け入れる決断もまた、必要なのではないだろうか。

取材・文●河治良幸

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