深夜のパトロールで発見された(HiroHiro555 / PIXTA)※写真はイメージ

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「ラーメン店でノンアルコールビールを4本飲んだ。飲酒運転になるとは思っていなかった」

6月27日午前3時半頃、長崎県佐世保市内の市道において、パトロール中の警察官が不審な挙動の車両を発見した。信号待ちで中央線にまたがって停車し、左折時には大きくふくらむ--そんな運転を繰り返していたのは、海上自衛隊佐世保基地の護衛艦「すずつき」の海士長(22歳男性)だった。

飲酒検知の結果、男性の呼気からは0.25mg/L以上のアルコール分が検出された。道交法違反(酒気帯び運転)の容疑で現行犯逮捕された男性は当初、「ノンアルコールビールしか飲んでいない」と容疑を否認。SNS上では「店が誤ってアルコールをだしたのか」「ノンアルで基準値越えるならもう飲めない」「基準値超えてたら言い訳できひんやろw」「そんな嘘でバレないと信じる根拠はなんなんだろ?」など、さまざまな見方が飛び交った。

その後、男性は一転して酒を飲んだことを認めたと報じられているものの、そもそも基準値を超えている状況で「ノンアルコール飲料しか飲んでいない」という主張はあり得るのだろうか。

法律上は、アルコール度数1%未満なら「ノンアル」

まず、「ノンアルコール飲料」とは法律上どう定義されているのかを確認しておきたい。

酒税法2条は、アルコール度数1%以上の飲料を「酒類」と定義している。裏を返せば、アルコール度数が1%未満であれば、法律上は「お酒」に該当しないことになる。

現在、国内の大手飲料メーカーが販売するノンアルコールビールのほとんどは「アルコール0.00%」だ。参考までに、アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリーの公式サイトを確認すると、いずれも運転前の飲用について、アルコール0.00%であることを根拠に「問題ない」と明記している。

しかし、市場にはアルコール1%未満ながら微量のアルコールを含む「ノンアルコール飲料」も存在する。たとえばドイツの「エルディンガー アルコールフリー」のアルコール度数は0.39%。こうした製品がECサイトや店頭で「ノンアルコール飲料」として販売されている場合もある。

「0.25mg/L」はノンアルで出る数値か

では、今回検出された「呼気1L中0.25mg以上」という数値は、どれほどのアルコール摂取量に相当するのか。

公益社団法人アルコール健康医学協会によると、ビール中びん1本(500ml相当)を飲んだ場合、呼気中のアルコール量は0.1~0.2mg/Lに相当するという。

道交法上の「酒気帯び運転」の取り締まり基準は0.15mg以上/Lであり、今回検出された「0.25mg/L以上」は、その大幅な超過を意味する。上記に基づく単純計算では、通常のビール中びん2本前後をしっかり飲んだ時に相当する数値だ。

では「ノンアルコールビール」に微量のアルコールが含まれていたとして、何本飲んだら「0.25mg/L以上」が検出されるのか。

たとえば、アルコール度数0.4%の飲料は、通常のビール(度数5%)と比べると「12.5分の1」の薄さにすぎない。通常のビール中びん2本分と同等のアルコールを0.4%の飲料で摂取しようとすれば、350ml缶の場合、単純計算で約36本飲まなければならないことになる。

「ノンアルしか飲んでいない」は客観的証拠で徹底検証される

では仮に、本件の容疑者が「ノンアルしか飲んでいない」と主張し続けた場合、捜査機関はどのように事実を立証するのか。数多くの交通事故案件を手がける鷲塚建弥弁護士に聞いた。

「一般論として、飲酒運転の捜査では呼気検査や採血の結果はもちろんのこと、飲酒量・飲酒時刻に関する供述、防犯カメラ映像やレシートなどの客観的証拠を組み合わせます。これらをもとに、ウィドマーク法などの医学的知見を使って体内アルコール濃度の時間的推移を逆算し、事故や検挙の時点における酔いの程度を詳細に検討します」

つまり、飲食店での滞在時間、注文履歴、レシート、周辺の防犯カメラ映像、スマートフォンの位置情報--これらの客観的証拠が積み重なることで、「飲酒の事実」が高い精度で判定される。

「酔っていない」という感覚は“主観”にすぎない

アルコール健康医学協会は、飲酒が運転に与える影響として次の点を挙げている。

動体視力が落ち、視野が狭くなる 判断力が低下し、スピードの感覚が鈍る 集中力が低下し、とっさの状況変化に対応できなくなる 運動をつかさどる神経が麻痺し、ハンドル操作やブレーキが遅れる 平衡感覚が乱れ、蛇行運転につながる

今回逮捕された男性の車が、左折時に大きくふくらみ、中央線をまたいで停車していたという事実は、こうしたアルコールの影響を如実に体現していた。

本件において、男性がどのような経緯で飲酒運転に至ったのかは不明だが、一般的に飲酒運転の容疑者は「自分では正常だと思っていた」という主張を口にしがちだ。しかし、同協会は次のように警告している。

「自分では正常のつもりでも、アルコールによって確実に判断力や運動能力が落ちています。また、飲酒を続けるうちに急性耐性といって、アルコールの作用に慣れが出てきてしまうことにも注意が必要です」

血中アルコール濃度を一定に保ちながら被験者に「酔いの自覚症状」を主観的に判断させた実験では、時間が経つにつれて自覚症状が薄れていく一方、実際のアルコール濃度は維持されていることが示されている。「酔っていない」という感覚は、あくまで主観であり、客観的な濃度とは一致しない。

つまり、「ノンアルコール飲料しか飲んでいない」という主張は、数値の前では言い訳の余地を残さないということだ。