もし日常が違っていたら…冨安健洋、苦悩の先で取り戻した基準「より厳しい環境に身を置かないと」
自らに向けた厳しい要求からは、完全復活の兆しを強く感じさせた。日本代表DF冨安健洋(アヤックス)がブラジル戦から一夜明けた30日、ヒューストン市内で報道陣の取材に対応。自身の現状について「まだまだ一段階、二段階上げられると思うし、大きなケガをしてW杯に戻ってくることができたのはポジティブだけどまだまだだなと思う」と話した。
冨安は29日の北中米W杯決勝トーナメント1回戦ブラジル戦(●1-2)にフル出場。所属クラブでも2年間にわたってフル出場はなく、90分間ピッチに立ったのは24年6月11日のW杯2次予選シリア戦以来748日ぶりという大ブランクがあったものの、「(途中交代した)アイスランド戦の後もチュニジア戦の後も90分やれた感覚だと言ったけど、昨日は120分やれた感覚だった」といい、FWビニシウス・ジュニオールとのマッチアップでも懸命に渡り合う奮闘を見せた。
ベスト32敗退という結果に充実感はなかった。まず悔やんだのはチームの課題だ。カタールW杯前や24年のアジア杯準々決勝のように「結果的に後ろに重たくなって、前に出ていけなくなった」という負けパターンは同じ。その原因は相手陣内でボールを握る時間をほとんど作れなかったことだ。さらに失点シーンも数的優位が作れている状況という共通点もあったことから、冨安は「結局負け方がずっと一緒なので、そこを改めて考えないといけない」と警鐘を鳴らした。
一方、冨安はチーム戦術のみに責任を帰するつもりはなく、個人にも成長を求めていた。
「サッカーは一人でできないし、全員が1mのところ、一歩のところ、1秒のところを詰めていくしかない。僕自身も常に自分に矢印を向け続け、一歩、1秒のところを突き詰めていくしかない。だからこそ、より厳しい環境に身を置かないといけないとブラジル戦が終わって改めて強く思った」
自らにも厳しい矢印を向け、後半アディショナルタイム6分の失点シーンに関しても並のディフェンダーなら実現できないであろう対応を自らに課した。
「いい時であればあれも確実に対処できたと思う。あのワンシーンだけを切り取って見ても駆け引き負けをしたというか、力負けしたワンシーンだった。でも自分の判断であのプレー選択をして、間に合わなかったので力不足。それでまだまだ足りないという言い方をさせてもらった」
冨安によると、対面したMFブルーノ・ギマランイスのミドルシュートを警戒しつつ、FWガブリエル・マルティネッリへのパスコースを切ることが可能だったのだという。
「(自分の)いい時であれば『どうせパスするんでしょ』と思ってるんですよ。こう(シュートコースに)行きながらもこっち(パスコース)に体重を乗せている。でも口で言っても仕方ないんで。強いて言えばそこのゲーム感のところ、本当に研ぎ澄ませて、究極のビッグゲームで、ビッグモーメントで力を出し切れなかったところにこの2年間のツケがあそこに来たんだろうなという感じです」
かつて2021年夏から25年夏にかけては、今季のプレミアリーグ優勝に至る改革が進行していたアーセナルに所属していた冨安。負傷が癒えたいま、ようやく当時の基準に返り咲ける自信を感じているようだ。
「もし日常が違ってああいうシーンが毎日毎日あるような環境であれば。実際アーセナルの時はそこ(その環境)にいたと思いますし、であれば問題なく対処できたシーンだったと思う。まだまだ力不足だし、成長しないといけないと改めて思えた大会だった。サッカーができていない期間からこうしてW杯の舞台に立って、本当にここからという感じでしかない」
アヤックスとの契約は今夏で切れ、来季の去就は未定。それでも「やっぱり現代サッカーで群を抜いてレベルが高いのはプレミアリーグ。実際にそこにいたこともあって、そこの厳しさはもちろん知っているので、チャンスがあるかは分からないけど、考えうる中で一番厳しい環境はそこなんだろうというのは試合後に思った」と言い、よりハイレベルな移籍先を模索する野心も口にした。
今大会の結果は前回大会と同じ「決勝トーナメント初戦敗退」。それでも前回大会からの心境の変化があったという。
「前回大会は周りを見ながら、周りに気を使って合わせながらやっていた部分もあって、自分の意思でプレーし切れた感はなくて、どういう感情になったらいいかが分からなかった。今大会は結果がついて来ていないので、出し切ったという言い方は避けたいけど、でも自分の意思で全力でプレーしたし、その中でシンプルに力不足だったと感じることができた」
冨安によれば、今が「キャリアの第2章が始まるところ」。W杯の一発勝負でブラジルに挑み、敗れたという日本サッカー史に深く刻まれ込まれる一戦は、世界最高峰の基準を知る日本最強ディフェンダーが新たな一歩を踏み出す出発点となった。
(取材・文 竹内達也)
冨安は29日の北中米W杯決勝トーナメント1回戦ブラジル戦(●1-2)にフル出場。所属クラブでも2年間にわたってフル出場はなく、90分間ピッチに立ったのは24年6月11日のW杯2次予選シリア戦以来748日ぶりという大ブランクがあったものの、「(途中交代した)アイスランド戦の後もチュニジア戦の後も90分やれた感覚だと言ったけど、昨日は120分やれた感覚だった」といい、FWビニシウス・ジュニオールとのマッチアップでも懸命に渡り合う奮闘を見せた。
一方、冨安はチーム戦術のみに責任を帰するつもりはなく、個人にも成長を求めていた。
「サッカーは一人でできないし、全員が1mのところ、一歩のところ、1秒のところを詰めていくしかない。僕自身も常に自分に矢印を向け続け、一歩、1秒のところを突き詰めていくしかない。だからこそ、より厳しい環境に身を置かないといけないとブラジル戦が終わって改めて強く思った」
自らにも厳しい矢印を向け、後半アディショナルタイム6分の失点シーンに関しても並のディフェンダーなら実現できないであろう対応を自らに課した。
「いい時であればあれも確実に対処できたと思う。あのワンシーンだけを切り取って見ても駆け引き負けをしたというか、力負けしたワンシーンだった。でも自分の判断であのプレー選択をして、間に合わなかったので力不足。それでまだまだ足りないという言い方をさせてもらった」
冨安によると、対面したMFブルーノ・ギマランイスのミドルシュートを警戒しつつ、FWガブリエル・マルティネッリへのパスコースを切ることが可能だったのだという。
「(自分の)いい時であれば『どうせパスするんでしょ』と思ってるんですよ。こう(シュートコースに)行きながらもこっち(パスコース)に体重を乗せている。でも口で言っても仕方ないんで。強いて言えばそこのゲーム感のところ、本当に研ぎ澄ませて、究極のビッグゲームで、ビッグモーメントで力を出し切れなかったところにこの2年間のツケがあそこに来たんだろうなという感じです」
かつて2021年夏から25年夏にかけては、今季のプレミアリーグ優勝に至る改革が進行していたアーセナルに所属していた冨安。負傷が癒えたいま、ようやく当時の基準に返り咲ける自信を感じているようだ。
「もし日常が違ってああいうシーンが毎日毎日あるような環境であれば。実際アーセナルの時はそこ(その環境)にいたと思いますし、であれば問題なく対処できたシーンだったと思う。まだまだ力不足だし、成長しないといけないと改めて思えた大会だった。サッカーができていない期間からこうしてW杯の舞台に立って、本当にここからという感じでしかない」
アヤックスとの契約は今夏で切れ、来季の去就は未定。それでも「やっぱり現代サッカーで群を抜いてレベルが高いのはプレミアリーグ。実際にそこにいたこともあって、そこの厳しさはもちろん知っているので、チャンスがあるかは分からないけど、考えうる中で一番厳しい環境はそこなんだろうというのは試合後に思った」と言い、よりハイレベルな移籍先を模索する野心も口にした。
今大会の結果は前回大会と同じ「決勝トーナメント初戦敗退」。それでも前回大会からの心境の変化があったという。
「前回大会は周りを見ながら、周りに気を使って合わせながらやっていた部分もあって、自分の意思でプレーし切れた感はなくて、どういう感情になったらいいかが分からなかった。今大会は結果がついて来ていないので、出し切ったという言い方は避けたいけど、でも自分の意思で全力でプレーしたし、その中でシンプルに力不足だったと感じることができた」
冨安によれば、今が「キャリアの第2章が始まるところ」。W杯の一発勝負でブラジルに挑み、敗れたという日本サッカー史に深く刻まれ込まれる一戦は、世界最高峰の基準を知る日本最強ディフェンダーが新たな一歩を踏み出す出発点となった。
(取材・文 竹内達也)

