もぬけの殻となった美術教室(CCTVより)

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中国では、計画的に店舗を乗っ取っては計画的に倒産・逃亡を繰り返し、消費者を奈落の底に突き落とす犯罪が現れている。

それが、職業閉店人(プロの閉店屋)である。前回は経営にあえぐ老舗フィットネスクラブに目をつけた事例を紹介した。

職業閉店人の一般的なケースは「つぶれかけの店を引き取る」手法だったが、現在は、そこから更に「もうかっている優良店を乗っ取って破滅させる」という手口も広がっている。

今回は、黒字の優良スクールが、わずか数カ月で計画倒産に追い込まれた事例をお伝えする。

景気が冷え込む中国で増える「職業閉店人」(前編)経営難のジムを買い取り、キャッシュを集めて夜逃げ

黒字の優良スクールが計画倒産した理由

「生徒も多く、毎月の売り上げも順調。口コミも抜群の優良スクールだったのに、ある日突然、跡形もなく消えてしまった…」

一見、信じられないような事件が上海で発生した。被害に遭った保護者たちのばく大なレッスン料は一瞬にして水の泡。その裏で糸を引いていたのは、職業閉店人と呼ばれる4人の詐欺グループだった。

従来の手口とは異なり、彼らが今回ターゲットにしたのは、順調に利益を出している優良店舗。2025年9月に上海警察に逮捕された犯罪グループのチャット履歴から、そのあまりにも狡猾(こうかつ)なわなが明らかになった。

悲劇の始まり…契約直後に訪れた異変

上海に住む肖さんは、人気の子ども向け美術教室に、2万元(約48万円)を支払って子どもを入会させた。この教室は、地元ショッピングモールで4~5年も営業を続け、美術試験の検定会場にも指定されているほどの優良店だった。

しかし入会後、教室の様子が急変する。

・野外スケッチなどのイベントが次々と中止

・優秀な講師や営業スタッフが次々と退職

・1対1レッスンが集団レッスンに

不審に思った肖さんが返金を求めると、教室はいつの間にか2人の女に転売されていたことが発覚。そして直後、教室は一方的に閉鎖され、経営陣は完全に音信不通となった。

徹底解剖…優良店舗を狙った計画倒産の全貌

上海市公安局の調べにより、職業閉店人グループが緻密に計画していた手口が暴かれた。

①うその「実績と資産」でオーナーを安心させる

メンバーは過去に経営していたスクールをいくつも破綻させていた。しかし、個人的な理由で教室を譲渡したがっている優良店オーナーに対し、「長年の経験がある」「潤沢な資産がある」と、言葉巧みにスクールの経営権を奪い取った。

②数百元で「負債請け負い人」を雇う

彼らは経営権を握るとすぐ、法的責任を逃れるために名義人を手配する。スクールの名義人は、取り調べにこう供述した。

「ただ名前を書いてくれれば報酬として数百元あげる、と言われ、よく分からずサインした」

「後で登記を見たら、自分が100%の株主になっていて腰を抜かした」

③レジをすり替え、原価割れの「狂乱セール」

一味が真っ先に行ったのは、店舗のレジシステムを会社とは一切関係のない、自分たちの個人口座へ直結させることだった。そして、通常1レッスンあたり130元以上のコストがかかるのに、「1レッスン90元」というあり得ない破格の長期キャンペーンを打ち出す。

企業の将来性など無視し、講師たちにも「とにかく授業そっちのけで親にギリギリまで前金をチャージさせろ」とノルマを課し、最後の利益を猛烈に吸い上げた。

④わざとトラブルを起こし「経営不振」を演出

その一方で、一味はショッピングモールの家賃や光熱費を一切払わず、講師の給与を無断で引き下げたり、難癖をつけて解雇したりした。

意図的に環境を悪化させ、スタッフを追い出すことで「経営が立ち行かなくなって倒産」という既成事実を自ら作り出したのだ。なお、集まった売り上げの多くは、一味へ役員報酬として山分けされ、豪遊のために浪費されていた。

⑤「半年営業すればセーフ」という計算に基づいた夜逃げ

手元に十分な現金が集まると、いよいよ閉店だ。ある日の午前11時、講師たちに「午後から来なくていい」と突然通告。その日の午後に「閉店告知」を壁に貼り、夜逃げをした。公安当局の押収したチャット履歴には、驚くべき文言が残されていた。

「これまでの摘発事例を研究したけど、みんな1~2カ月で夜逃げをする、スピード閉店だから捕まる。私たちは引き継いでから半年以上はダラダラ営業を続けよう。そうすれば、警察も詐欺事件じゃなくて、ただの民事の経営不振として処理せざるを得ない」

この職業閉店人グループは半年間経営を続けるというカモフラージュで、刑事罰から逃れられると高をくくっていた。最終的に、このグループが優良スクールからだまし取った金額は100万元(約2400万円)を突破。現在、首謀者らは詐欺罪の容疑で検察機関に起訴され、実刑判決へのカウントダウンが始まっている。

景気が悪化すると、本来は経営を立て直すための事業譲渡という制度すら、犯罪の道具へと変わってしまう。そして最後に犠牲になるのは、店を信頼して前払いした消費者である。

職業閉店人は、中国経済が直面する景気停滞のひずみを映し出す存在と言えるだろう。

文/下川英馬 内外タイムス