「高尾山にクマは絶対にいます」専門家も断言…このままいけば《立川・府中・二子玉川》にも出現か
実は地方と状況はそこまで変わらない。東京都であっても、クマと人間の生活圏は隣り合わせであり、いままさに混じり合おうとしている。
【前編記事】『殺人グマが“絶対防衛ライン”圏央道を突破、ついに東京襲来か…背筋も凍る奥多摩はいま【現地を徹底取材】』よりつづく。
相次ぐクマの出没情報
八王子市内でのクマの出没はその後も続いている。
5月30日昼には、元八王子町3丁目の八王子城跡内で、入山者がクマを目撃した。
現地を訪れると、野生の猿の大集団が待ち構えていた。東京とは思えない光景だ。ガイダンス施設の入り口には「東京にもクマはいます!」と大きく書かれたポスターがあった。記者はクマが出没した敷地内の滝付近を目指したが、出入り口は封鎖されていた。
八王子市を中心に活動を続ける『夕焼けビッグハンティングチーム』会長の内海秀治氏が語る。
「今年5月17日の朝にも、グループの仲間が小学校の裏の山でクマを目撃しています。6〜7月は繁殖期ですから、エサを探すだけではなく、メスを探して、オスが歩き回っているのかもしれません。
今後、クマは都心に近づいていきますよ。圏央道を越えない、と言われていましたが、クマには関係ない。山はつながっていますから。シカも八王子市内の畑にたくさん出るようになった。シカが広がると、クマも広がる。全部リンクしているんです。いまグループのメンバーには、身を守るために山にはクマスプレーを必ず持っていくように、と伝えています。
高尾山には昔からクマがいると言われていますよ。その先には、昭和天皇が眠る『武蔵野陵』があります。もしクマがそこに迷い込めば大事になるでしょうね」
高尾山周辺は「平常運転」をアピールも…
本誌クマ取材班は、奥多摩や八王子市内を歩き回るなかで、「高尾山にはクマがいる」との言葉を何度も聞いた。
クマが出没した元八王子町から約4km。平日にもかかわらず、6月上旬の京王線・高尾山口駅は多くの登山客で賑わっていた。高尾山は年間約300万人の観光客が訪れる都内有数の人気スポットだ。
「安全だと思いますよ」
「アライグマはいるけど、ツキノワグマはいないでしょ」
駅前の売店などのスタッフはそう「平常運転」をアピールするが、以前とは明らかに雰囲気が変わっていた。「チリン、チリン」と音が響く。クマ鈴をつけている人の姿がやたら目につくのだ。常連の男性登山客はこう明かす。
「一昔前は高尾山で鈴をつける人なんていませんでしたね。高尾山には、登山客が少ない裏ルートが複数あり、いまはその道を早朝や夕方の時間帯に歩くのは避けています。
南高尾の尾根に連なる7つの山々を縦走するルート『南高尾セブンサミッツ』ではクマの爪痕が見つかったと聞いています。これから登山者数にも影響が出てくるかもしれません」
「ツキノワグマが生息しているのは確か」
高尾山の山中にある施設で働く男性スタッフは、声をひそめてこう明かす。
「高尾山がツキノワグマの生息地域であるのは確かです。昨年は目撃情報がありました。また、隣の小仏峠では今年5月に、クマかどうかは定かではありませんが、成獣の目撃情報がありました。集客に関わるので表現が難しいのですが、安全とは言い切れません」
ツキノワグマの生態に詳しい東京農工大学大学院農学研究院教授の小池伸介氏も、こう断言する。
「高尾山にクマはいます。ただ過去に事故はゼロで、目撃例も少ない。これはクマの方がまだ人間に対して、それなりの警戒心を持っているからです。それでも安心はせず、対策は講じていかないといけないでしょう。そうでないと今後、高尾山でも事故が起きる可能性はあります」
なぜ今年に入って、東京でもクマの目撃が増えているのだろうか。
「明確な理由をお答えすることは難しいですが、もともと東京都内でも奥多摩にはクマがいたわけです。その数が増えた分だけ、新しい生息域が広がっているんでしょう。世代を重ねていく中で棲める場所が広がっているんです。
生まれた子グマが、いままでは行かなかった人間が住んでいるエリアの近くにも現れるようになった、ということでしょうね」(同前)
河川敷を辿って東京の市街地へ
いま東京都において、クマと人間との距離は、かつてないほど近づいている。ツキノワグマは最高時速40〜50kmと言われ、一日に十数kmほど移動することが可能である。警戒心の強い東京のクマが人間に見つからないように、何日かかけて森林や藪で覆われた河川敷を進み、突然、都心部に現れる――これは荒唐無稽な想像ではない。
「例えば、青梅市や高尾山のクマが河川敷をたどり、下流に移動して、立川市やひょっとすると府中市や調布市に出没する可能性は十分にある。多摩川を辿る場合、世田谷区二子玉川などの中流あたりまでは来られるかもしれません。東京であってもクマはいつ出てきてもおかしくない。いまは東京の人でも、いざ自分がクマと遭遇した時にどう対応すべきか、事前に考えておく段階なんです」(同前)
2年前、本誌取材班は秋田県で警察官2人を含む3人の男性がクマに襲われ死傷した凄絶な事件を取材した。遺体の損傷はあまりに激しく、遺族も見ることができなかった。
本誌が今回の取材で最も印象に残ったのは、高尾山にある寺院の関係者が話していた次の言葉だ。
「被害が出ないと実感できない。でも出てからではもう遅いのでしょうね……」
クマを過度に恐れることはないが、侮っていい相手でもない。被害が現実のものとならないことを祈るばかりだ。
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「週刊現代」2026年7月6日号より
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