板倉(左)に慰められる田中碧(C)JMPA

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 目を真っ赤にしたFW上田綺世が天を仰ぐ。肩を抱いて慰めるDF板倉滉は表情を歪め、ピッチに倒れ込んだMF田中碧は試合終了20分が経ってもタオルで顔を覆い泣き崩れた。

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 日本時間30日午前2時にキックオフされたブラジル戦。繰り返し「目標は優勝。本気で目指す」と口にしていた日本代表を待っていたのは、悲劇的な敗戦だった。

 1−1で迎えた後半アディショナル5分。ブラジルの猛攻に耐え、残り1分で延長戦突入という土壇場でゴールネットを揺らされた。

 田中碧が自陣ペナルティーエリア付近で奪われたボールをつながれ、ゴール前でFWマルチネリに右足で蹴り込まれた。GK鈴木彩艶が懸命に伸ばした左手でボールに触れるも、シュートは右ポストに当たってゴール内に転がった。

 試合は序盤からボールを保持してペースを握るブラジルに対し、日本が上田綺世、MF前田大然、MF堂安律らが激しいプレスで対抗する展開。前半29分、その懸命な守備が先制点につながった。センターラインでボールを奪ったMF佐野海舟が自ら攻め上がり、右足のミドルシュートをゴール左に叩き込んだ。

 この一撃がしかし、ブラジルを本気にさせた。日本は後半に入って怒涛の攻めを浴び、10分に左サイドからのクロスをMFカゼミロに頭で合わされて失点。サッカージャーナリストの藤江直人氏がこう言う。

「一番の敗因は、後半から戦い方を変えたブラジルに対抗できるだけの手立てがなかったこと。ブラジルは後半から攻撃のキープレーヤーであるFWビニシウスを左サイドに張り付かせ、ピッチを大きく使って波状攻撃を仕掛けていた。日本はFW三笘、FW南野、MF遠藤、大会に入ってからFW久保と故障者が続出したことによる駒不足もあって、選手交代や布陣変更などで試合の流れを手繰り寄せることができなかった。ブラジルは強くて上手かったと言えばそれまでですが、延長にもつれた場合、敵将のアンチェロッティ監督は『ネイマールを送り出す予定だった』と試合後にコメントした。効果的な選手交代の手立てに欠ける日本は、複数失点して完敗した可能性もあったと思います。日本としては延長も何とかしのいでPK決着に持ち込むのが、唯一の勝機でしたが……」

 同じくサッカージャーナリストの中山淳氏もこう言った。

「スコア以上に大きな差を感じました。冷静に見れば、勝てるチャンスはなかったという印象。中村と堂安の両ウイングバックが守備に追われながら機能していたものの、翼を折ってまで巣の卵を守るという戦法。ブラジル相手では仕方がないとはいえ、勝つためには攻撃に転じなければいけない。防戦一方になってしまうところが力の差。森保監督の基本システムは3−4−2−1。リードされた最後だけ3−5−2に変更したが、この2種類しかないため、後半の最終盤に1点を取りに行くオプションが足りなかった。大きな課題が残りました」

 日本は2025年10月の強化試合でブラジルを撃破。前半の0−2から後半の3得点で逆転勝利を挙げていたことから、選手は「勝てない相手ではない」と異口同音に口を揃え、メディアも「勝てる」「勝つ」と流布したが、王国の壁はやはり高く、分厚かった。