[6.29 W杯決勝T1回戦 日本 1-2 ブラジル ヒューストン]

 あと一歩届かなかった世界の壁を、「実力不足」という言葉で受け止めた。日本代表MF鎌田大地(クリスタル・パレス)は後半33分に途中交代。試合後に右内転筋を痛めていたことを明かすとともに、日本が世界の頂点へ近づくために必要なものを率直に語った。

 日本は前半29分にMF佐野海舟のゴールで先制しながらも、後半11分に追いつかれた。鎌田は同33分にピッチを下がると、チームは後半アディショナルタイムに逆転ゴールを食らう。今大会ここまで2得点を挙げて攻撃をけん引してきた鎌田は、ピッチ外でW杯を終えた。

 交代の理由は負傷だった。「内転筋に張りがあって、FKを蹴った時に軽くいった」。違和感を抱えながらもプレーを続け、「できるだけ長い時間プレーしようと思っていた」という。「今日勝っていても、たぶん次は難しい状態ぐらいになってしまった。本当はもっとやりたかったけど、難しい感じになってしまった」と無念そうに振り返った。

 試合内容については、「0-0でできるだけ長い時間進められたらいいと思っていた中で先制できた。これ以上ないスタートだった」と評価した一方、後半開始からのブラジルの修正を勝敗の分岐点に挙げる。「相手がよりシンプルにクロスを上げて、中に人数をかけるようになった。給水タイムまで持ちこたえられたらと思っていたけど、それは叶わず。そこからは常に押し込まれる形になって、すごく難しい展開になった」と冷静に分析した。

 自身は今大会2ゴールを記録し、攻撃の中心として存在感を示した。それでも大会を振り返る言葉は厳しい。

「本当に自分のまだまだ実力不足を痛感している。もっともっと大きくならないといけない。僕だけじゃなくて、この代表チームのみんながもっと成長できるし、大きいプレーヤーにならないとダメだなと。実力不足を本当にまた痛感したなという感じ」

 その思いは、前回カタール大会を経験したからこそ強い。4年前と比べて、日本代表は確かな進歩を遂げたと感じている。

「カタールの時よりも、はるかに自信があった。本当にもっと上に行けたと思うし、目指せると思っていた」。だからこそ敗退の衝撃も大きい。「カタールの時よりもチームとしての失望感だったり、喪失感というのは間違いなく大きい。本当にもっと上に行きたかった」と悔しさを隠さなかった。

 もっとも、ここで立ち止まるつもりはない。「選手として毎日成長して、もっと大きなプレーヤーになることが日常で大事」。個人の成長こそが、日本代表を押し上げると信じている。「ダークホース的な立ち位置じゃなくて、本当にもっとやり合えるチームにならないといけない。自分たちはそこまで行ける選手が揃っている」。悲願のW杯優勝へ向けては、日本サッカー全体の発展も欠かせないと訴えた。

「将来、日本が本当にワールドカップで優勝できるように、日本サッカーのために日本人の価値を示し続けないといけない。サッカーが日本の国技になるような、そうならないと本当に取れないと思う。そうなるように自分たちが色んなところでサッカーを発展させていかないといけない」

 グループリーグ3試合を勝ち進んで、決勝トーナメントに進んだのは5度目。だが、またしても“4試合目”での初勝利とはならなかった。今回は48チーム制になったことでラウンド32からスタート。これまではラウンド16からスタートだったが、鎌田は「基本的にはトップ10のチームに勝たないと次へ進めない。まだ乗り越えられていないのはシンプルに力不足」と現実を受け止めた。

 フランクフルト所属時の2021-22シーズンにUEFAヨーロッパリーグ(EL)、現在のクリスタル・パレスでは24-25シーズンにFAカップ、25-26シーズンにUEFAカンファレンスリーグ(ECL)とタイトルを奪取。勝負強さを身に着けてきた29歳はそれでもW杯の難しさを痛感した。

「クラブでは難しい試合に勝てて、W杯では勝てていない。なぜかと言われると、自分でもわからない。ただ本当に、目の前までは本当に来ていると思う。だけど、その一個を越えるのがすごく難しい。本当にシンプルに、みんながもっといい選手にならないとダメ。実力不足だなと思う」。4年間の積み上げで世界との差は縮まった。それでも最後の壁を越える力は足りず。さらなる個の成長。その現実を、鎌田は誰よりも厳しく見つめていた。

(取材・文 石川祐介)