【小林 久】一強が続く「まいばすけっと」にローソンがついに反撃開始…トライアルも参戦で激化するミニスーパー戦争

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東京の街角で次々と目に飛び込んでくる赤い看板、都市型小型スーパー「まいばすけっと」。2026年上期だけで64店を出店し、1200店舗を超えてなお拡大を続けている。

決して華やかな売り場ではないものの、コンビニより安い弁当・飲料と日常使いに十分な生鮮品ぞろえで「コンビニキラー」と呼ばれてきた。

その強さの背景には、かつてコンビニ戦争で出遅れたイオンが20年以上かけて打った逆転の一手があった。ローコストオペレーションとPB戦略、そして都市の"一等地"を押さえてきた先行者利益……まいばすけっとはなぜここまで強いのか、その経営戦略をさらに深掘りしていく。

前編記事『“都民への罰”こと「まいばすけっと」が今年も絶好調の1200店舗超え…「コンビニキラー」と呼ばれる強さの理由』より続く。

ライバル会社の反撃は?

ここまではまいばすけっと優位の構造である。では、コンビニや小売各社の反撃は実際どこまで進んでいるのか。

コンビニではまず、ローソンによる小型スーパーの新業態「Lミニマート」が大きなトピックとして挙げられる。5月末、ローソンは「Lミニマート」1号店を東京都小平市に開業し、低価格業態の「100円ローソン」を転換して、生鮮食品や牛乳などの日配品を約5割増やした。小平仲町店では精肉のSKU数・売場規模を約3倍に拡大し、新たに牛肉も取り揃える一方、菓子や加工食品、日用品は商品数を約2割削減したという。

特徴的なのは、ローソンストア100と比べてゴミ袋や文房具などの日用品売り場を縮小して生鮮食品全体の売り場面積を3割広げ、生鮮食品や日配品の商品数を5割増やした点だ。例えば150グラムで113円の納豆をLミニマートでは96円で販売するなど、コンビニに比べて低価格な商品も取りそろえる。

ただし、ローソン自身もこれを実証実験と位置づけている。6月に東京都板橋区と神奈川県平塚市にも出店し、年内には首都圏で計6店舗体制を目指すという慎重なペースだ。ローソンは2014年にも同様の業態「ローソンマート」を展開したが、わずか1年弱で撤退に追い込まれた経緯があり、11年ぶりの再挑戦という重みがある。

もう一つの対抗馬が、九州発のトライアルホールディングスが展開する「トライアルGO」だ。2025年11月7日、JR西荻窪駅近くに東京都内初出店を果たし、トライアルは子会社の西友の店舗や製造拠点で調理した低価格の出来たて弁当・総菜を武器にまいばすに挑戦する構えだ。近隣にある西友の既存店を母店として、西友の調理スペースで作った弁当や総菜をトライアルGOに高い頻度で届ける仕組みを取る。

中期計画では29年6月期までに首都圏を中心に小型スーパーを100店増やし、西友の既存240店のうち60店を新業態に転換、生鮮品の品質や品ぞろえを強化する方針を掲げている。

だが規模ではまだ差が大きい。トライアルの永田洋幸社長自身、「まだ他社に比べて物流網が脆弱であり、ブランドの認知も十分ではない」とし、「まずは棚の配置など成功モデルの確立を最優先にしたい」と話している。

短期間でまいばすの優位は崩れない

ここまでの動きを見ると、各社の反撃は始まった段階にすぎない。

そもそも、なぜまいばすけっとの優位はこれほど崩しにくいのか。理由は前述したように立地の早押し競争に尽きる。前編の冒頭で述べたように、イオンは「まいばすけっと」について2030年度に日販80万円×2500店舗体制を目指す方針を掲げ、すでに密集出店を進めてきた。20年近くかけて押さえてきた一等地という資産は、後発がどれほど予算を投じても短期間では再現できない。

それに、このモデルが「どこでも通用するわけではない」ことを、筆者は身をもって知っている。

20年以上前、山梨でローカルスーパーを経営していた頃、居抜きの小型店舗やコンビニ跡地を活用し、まいばすけっとに近い業態を試したことがある。その評判を聞いて店舗を見学し、見よう見まねで始めた。近隣店舗から商品を運び込み、従業員は一人。コンビニより安く生鮮品も扱う。構造だけ見れば、まいばすけっととほぼ同じ発想だった。

ところが結果は散々だった。車社会の地方では、人々は普段から車で馴染みのスーパーへ向かう。夜間や早朝の買い物もコンビニまで車で行けば済んでしまう。地方には、この業態を支える市場そのものが存在しなかったのである。

まいばすけっとの強さは、小型店だからではない。人口密度が高く、徒歩圏内で生活する人が多い都市構造と結びついて初めて成立するビジネスモデルだ。そして、その優位な立地をしっかり押さえてきたまいばすけっとだからこそ成り立っているのである。

店舗が増えるほど「コスト増」が負担に

ただし、その強さを支えてきた仕組みにも、もう一つ別の懸念が潜んでいる。それは店舗網の拡大そのものが生み出すコストの問題だ。

言うまでもなく、生鮮食品の管理は非常に難しい。野菜や肉は劣化が早く、毎日の廃棄リスクと背中合わせだ。深刻な人手不足で深夜労働の穴埋めをするスーパーのオーナーにとって、利益率が低くロス管理が厳しい生鮮の扱いは、正直なところ荷が重すぎる。かといって放置すれば商品は劣化し、客離れを起こす。現場を疲弊させたまま、勝算など生まれるはずもない。

絶対王者に見えるまいばすけっとにも、同じ問題が静かに足元に迫っている。

「完全直営モデル」であるまいばすけっとは、店舗が増えれば増えるほど、人件費という固定費をすべて自社で抱え込む。2030年に2500店、将来的に5000店という大号令が、人手不足と建設コストが高騰する今の日本で、その目標通りに動くとは考えにくい。無理な拡大を続ければ、割を食うのは複数店舗を掛け持ちするエリアマネージャーや、数少ない社員たちだ。

まいばすの土俵に乗るのは危うい

このように、まいばすけっと自身にも拡大の限界は見え隠れしている。だとすれば、その隙を突いてライバルが攻め込む余地はあるのだろうか。

しかし今のところ各社の反撃は、ローソンもトライアルも、まいばすけっとと同じ土俵--人口密集地での小型店密集出店--に乗ろうとしている点では構造が同じだ。

だとすれば、勝負を分けるのは「立地」でも「生鮮の有無」でもなく、まいばすけっとが20年かけて埋めてきた店舗網の密度を、あと何年で追いつけるかという、地味だが本質的な物量戦になる。

その意味で、現時点での筆者の見立てはこうだ。ローソンのLミニマートは6店舗、トライアルGOも数十店規模の実証段階にある。まいばすけっとが年200店ペースで拡大を続ける限り、向こう数年で両者が「対抗馬」と呼べる規模に達するのは難しい。

そのなかで、もし各社が本気で反撃するなら、参考にすべきは価格でも立地でもなく、「生活に寄り添う接点」をどう作り込むかにあるのかもしれない。

実際、すでにその方向へ舵を切り始めているコンビニもある。過疎化が進む地方では、自治体と連携した買い物弱者対策として積極的に出店し、広大な店舗網を災害時の拠点として地域インフラに組み込む動きが近年加速している。

価格でも立地でも勝てない相手に対して、「地域の守り手」という役割で差別化しようとする試みだ。生鮮食品を単に並べることではなく、こうした接点を大切にすることこそが、進むべき方向ではないだろうか。

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