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 【過去と未来の交差点】放送中のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」や今年度の映画界を席巻した映画「国宝」…。話題作に相次いで出演し、実力派の地位を確立しつつある宮澤エマ(37)。23歳と決して早くないデビューながら、今では抜群の演技力でドラマに映画に引っ張りだこ。キャリアの節目での恩人との出会い、そして宮澤自身の客観的な選択の連続が、現在の活躍につながっていた。 (塩野 遥寿)

 スポニチ本社で行われたインタビュー。撮影の様子を見守っていた女性社員から思わず「お美しい…」と声が漏れる。くっきりした顔立ちは、離れていても存在感たっぷり。一転、ビル内で子供たちとすれ違うと「こんにちは」と笑顔であいさつ。親しみやすさを感じさせた。

 米国の大学を卒業後に女優や歌手を志し、23歳で芸能界入り。祖父は宮沢喜一元首相で当初は“首相の孫”としてのタレント業が主だった。「早く演技や歌をやりたかった」というが「まずは名前を知ってもらった方がいい」と冷静に分析。バラエティー番組などの出演を重ね、着々と知名度を広めていった。

 それが、念願の演技の仕事を呼び込んだ。13年に宮本亜門氏が演出を手がけたミュージカル「メリリー・ウィー・ロール・アロング」で初舞台。高校時代に宮本氏の弟と同じ合唱部に所属していた縁もあって、テレビを見た宮本氏からオーディションに呼ばれた。「お話を頂いてうれしかったけど、私に務まるのか不安でした」

 歌手を志していただけに「歌や踊りは特殊スキル。トレーニングを積んだ人がやる世界だと思っていた」と不安いっぱいだった。それでも飛び込んだ。これが後に恩師となる三谷幸喜氏(64)との出会いを引き寄せることになる。三谷作品の音楽を手がける作曲家の荻野清子氏が宮澤の初舞台を観賞し、三谷氏に推薦したのだ。三谷氏は「僕が信頼する人がそんなに言うんだったら」と、面識がなかった宮澤にオファー。18年のミュージカル「日本の歴史」で初めてタッグを組んだ。映画初出演となった「記憶にございません!」(19年)ではコメディーセンスも発揮し、今ではすっかり常連。「三谷さんの作品に出たからこそ“この人はコメディーもできるんだ”と世間に認識された。映像の世界に呼んでいただく大きなきっかけになった」

 特に「名刺代わりになるような作品」となったのが三谷氏が脚本を手がけたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」だ。撮影は1年半。「懸けてみよう」と舞台出演を全てストップして臨んだ。結果、小池栄子(45)演じる北条政子の妹役を熱演し注目度急上昇。「私のキャリアにとって大きなターニングポイント」。舞台が主戦場だった宮澤がお茶の間に一気に知れ渡った。

 撮影では三谷氏の凄みを実感した。小池と宮澤演じる姉妹が母親の顔を思い出せないというシーン。「3、4行のせりふだったのですが、三谷さんは“当時は写真の技術がないから人の顔の記憶は薄れていってしまう。その悲しさを含めて演じてください”と。歴史への解釈の深さと、その土台の上で人間ドラマを描く面白さを教わりました」。何げない会話にまで込められた明確な意図に驚かされ、学びを得た。

 そして今年、満を持して映像作品初の主演を務める。30日スタートのテレビ東京ドラマ「産まない女はダメですか?DINKsのトツキトオカ」だ。「生意気ながら、プロデューサーに起用理由を聞いたら“『鎌倉殿の13人』で印象に残って一緒に仕事をしたいと思った”と言ってくださった」。退路を断ち臨んだ作品での熱演が初の大役を呼んだ。

 ここ最近は仕事をバリバリこなす女性の役を演じることが多かったが、今作では新たな役柄に挑む。子供を持たない選択をしながら夫の裏切りにより望まぬ妊娠をしてしまうという役どころだ。シリアスな題材に「最初はお受けするかちゅうちょした」が、制作陣の熱意を受け出演を決めた。これも新たな未来を切り開く決断になるかもしれない。

 《どの作品よりも泣いてる》「産まない女…」の撮影が始まって約1カ月。「今までのどの役よりもつらい場面がたくさんある。どの作品よりも泣いてると思います」と苦笑い。「うれし涙、悲し涙、ぼうぜんとした涙…泣かない日はないんじゃないかというくらい」と、作中さまざまな場面で泣く演技をしているようだ。現代の家族や夫婦の在り方に一石を投じる同作。「恐ろしいことが起こっているからこそ目が離せない。今年イチの衝撃作だと思います」と手応えを口にした。放送は月曜午後11時6分から。