何を聞いても「すみません」と秒で謝る部下にイライラ…言い訳ばかりで話が進まない"面倒な相手"の本当の狙い
※本稿は、榎本博明『【新装版】かかわると面倒くさい人』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

■言い訳ばかりで話が進まない
自己防衛意識が異常に強く、不必要な言い訳が多かったり、保身的な姿勢が強い人物も面倒だ。
このタイプの部下がいると、何かにつけてイライラさせられる。
上司としては部署全体の仕事の状況を把握しておく必要があるため、声をかけて仕事の進行状況を尋ねると、
「すみません、急いでやりますから、もう少し時間をください」
と言う。
「いや、べつに急かしてるんじゃなくて、どんな状況か、教えてほしいんだ」
と言い直しても、
「すみません、顧客からの問い合わせで手こずっちゃって、ちょっと遅れてるんです」
と言い訳をするばかりで、進行状況を軽く確認するにも無駄に時間がかかってしまう。
仕事の段取りについてちょっとわからないことがあり、
「どういうことなのか教えてもらえる?」
と説明を求めたときも、
「いや、私はそれはやはりまずいと思ったんです。で、そう言ったんですけど、急いで進めるべきだっていう意見が強くて……」
などと、しどろもどろになる。こちらは非難するつもりはなく、事実を確認したいだけなのだが、言い訳ばかりで話がなかなか先に進まず、どうにもまどろっこしい。
■仕事を振ると、いちいち“渋る”
このタイプは、あからさまに「セルフ・ハンディキャッピング」をすることもある。
セルフ・ハンディキャッピングとは、印象操作の一種で、万一失敗したときに無能なヤツだと思われないように、あらかじめ自分にハンディを負わせることである。
たとえば、課題の難しさを印象づけるべく、困難と考えられる根拠を並べ立てる。
「諸々の情勢を考えると、非常に難しいとは思いますが、全力を尽くしてみます」
などと情勢的にハンディがあると印象づけておけば、全力を尽くした揚げ句に万一うまくいかなくても、無能とみなされる可能性は低い。元々無理を承知の上でチャレンジしたといったイメージを演出するのだ。
自分のコンディションの悪さを強調するやり方もある。
「このところちょっと集中力が落ちてる気がするんですけど、とにかく頑張ってみます」
などと自分にハンディを負わせておくことで、頑張ってもダメだったときの傷つきの軽減をはかるわけだ。
その他にもいろいろなやり方がある。
たとえば、大まかな期限を定めて仕事を振ると、
「はい、わかりました」
と言いながらも、
「じつは、今、急ぎの仕事があって、あの……顧客から依頼されてるヤツなんですけど、うるさい客なんで、そっちにちょっとエネルギーを注がなきゃいけなくて……」
などと忙しさをアピールする。
■「保険」をかける一言
「じゃ、君は難しいかな」
と、他の人物に回そうとすると、
「いえ、その期限なら全然大丈夫です」
と言う。
「それならいちいち面倒なことを言うなよ」
と言いたくなる。万一仕事が雑になったときのために、自分にハンディをつけておくわけである。
体調不良を持ち出すこともある。
「この前まで体調を崩してて、もう大丈夫なんですけど、まだ本調子じゃなくて……」
などと体調不良を口にするため、別の人物に担当させようとすると、
「でも、もうほんとに大丈夫です。担当させてください」
と言う。
「だったら言うなよ、面倒くさいなあ」
と言いたくなるが、まだ本調子でないことをほのめかすことで、万一期待外れの結果に終わった場合のための保険をかけているのだ。

■ことごとくアイデアを潰す上司になる
いずれにしても、このタイプは失敗したときの傷つきを最小限にすべく、あの手この手で自分にハンディをつけるのである。
このタイプが上司であってもややこしい。責任の所在を異常に気にし、失敗を過度に怖れるため、ゴーサインがなかなか出ないので、やる気のある部下ほどイライラする。
自分の提案が会議でせっかく通りそうな雰囲気になったのに、
「でも、確実にうまくいくのか?」
などと言い出す。どんなことだって確実にうまくいくなんてあり得ない。何か不都合が生じたら自分が責任をもって対処するのでやらせてほしいと願い出ても、
「そうは言っても、何かあれば上司である私の責任が問われるからなあ」
などと保身的なことばかり口にする。
このタイプが上司だと、新たなアイデアはことごとく潰される。何も冒険をしなければ致命的な失敗をする怖れはないということで、無難な道を歩むことしか考えない。
■失敗回避動機によって動いている
結局、予防線を張りすぎる保身的な人物は、成功追求動機よりも失敗回避動機によって動いているのである。

成功追求動機とは成功を求める動機、失敗回避動機とは失敗を避けようという動機のことである。モチベーションというと成功追求動機をイメージするかもしれないが、主として成功追求動機で頑張っている人もいれば、主として失敗回避動機で頑張っている人もいる。
成功追求動機の強い人物は、失敗による傷つきよりも成功の素晴らしさを強く意識するため、失敗を怖れずに思い切りチャレンジできる。
一方、失敗回避動機の強い人物は、成功の素晴らしさよりも失敗による傷つきを強く意識するため、失敗を怖れてなかなかチャレンジできない。それにより、積極的な動きを期待する周囲の人物や、積極的に動きたい周囲の人物をイライラさせることになる。
万一の失敗に備えて不必要にセルフ・ハンディキャッピングを行うのもこのタイプだ。
失敗回避動機の強い人物は、成功追求動機の強い人物にとって、とくに面倒くさい存在になる。
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榎本 博明(えのもと・ ひろあき)
心理学博士
1955年東京生まれ。東京大学教育学部教育心理学科卒業。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授などを経て、現在、MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『〈ほんとうの自分〉のつくり方』(講談社現代新書)、『「やりたい仕事」病』(日経プレミアシリーズ)、『「おもてなし」という残酷社会』『自己実現という罠』『教育現場は困ってる』『思考停止という病理』(以上、平凡社新書)など著書多数。
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(心理学博士 榎本 博明)
