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 ◇オープン戦 阪神1―0オリックス(2026年3月21日 京セラD)

 勝敗度外視のオープン戦とはいえ終盤になれば話は別である。本番を意識した戦い方になる。

 両チームともに、送りバントも使ったし、敬遠気味の四球もあった。そんな一戦を阪神は1―0でものにしたのは値打ちがある。

 虎の子の1点を奪ったのは3回裏だった。先頭・近本光司が二塁打し、中野拓夢が投前バントで送って1死三塁とした。打席には3番・森下翔太が九里亜蓮に対した。

 1ボールから低く沈むシンカーをやや中途半端に空振りして気持ちを整え直した、とみている。周りを見直せば、相手二遊間は前進守備は敷いておらず、定位置に深く守っている。内野ゴロで1点を拾える状況だった。

 1―1からの内角シュートを無理に引っ張らず、詰まりながら押っつけて二塁前にゴロを転がしたのだ。これで近本が還り、先取点を奪った。

 森下の魅力はむろん、豪快なスイング、そして左翼に引っ張る打撃である。だが、勝負の世界では状況に応じて軽打する姿勢こそ明暗を分ける。

 それこそが勝負勘である。そしてその勘は直感と大局観から成る。

 プロ棋士・羽生善治は<直感によってパッと一目見て「これが一番いいだろう」と閃(ひらめ)いた手のほぼ七割は正しい選択をしている>と著書『決断力』(角川書店)に記している。<大局観>が重要という。<本質を見抜く力といってもいい。その思考の基盤となるのが勘、つまり直感力だ。直感力の元になるのは感性である>。

 プロ4年目、25歳。2度の優勝や侍ジャパンでの経験を経て、森下の感性、直感、勝負勘は磨かれてきたようだ。2球目空振りの直後に「感」や「勘」が働いたのだ。

 日本ハム監督・新庄剛志が2月のキャンプ中、1死(または無死)、走者三塁で二遊間や内野陣が深く守っている時に「内野ゴロを打てのサインをつくるかもしれない」と話した。実際、内野ゴロで得点を奪った際、打者の姿勢を高く評価していた。ミーティングで全選手に伝えた「勝つために犠牲になる気持ちを持ってほしい」という献身の姿勢である。

 この日は、あの二ゴロでの1点を守り抜いた。零封の5投手はむろん見事だが、終わってスコアボードを見れば、もぎ取った1点が光っている。

 昨季8度もあり、お家芸とも言える1―0勝利である。臨戦態勢は整いつつある。 =敬称略= (編集委員)