貴乃花が激白!「大の里と安青錦は師匠がガチンコだから強い」「ナベツネさんの嫌がらせがひどくて」…弟子を弱くする「ダメな親方」とは

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「相撲人気が高まっている理由ですか? ガチンコで取組をする力士が増えたこと。これに尽きますよ。純粋な目で見ているお客さんには、『本物の取組』というものは伝わるんです」

こう語るのは、第65代横綱・貴乃花光司氏だ。大関・安青錦の綱取りの可能性はどれほどなのか。「令和の怪物」と称される大の里をどう評価しているのか。そして、次の日本相撲協会理事長になってほしい親方の名前とはーー。3月8日に初日を迎える春場所(エディオンアリーナ大阪)を目前に控え、「平成の大横綱」による忖度なしのガチンコトークをお届けする。

大の里が「一強」である理由

現在、相撲界は1990年代の「若貴ブーム」に匹敵する熱気に包まれている。その中心にいるのが、身長192センチ、体重184キロという恵まれた体格を武器に史上最速で頂点へと登り詰めた「令和の怪物」大の里(25歳、二所ノ関部屋)だ。貴乃花氏は大の里をこう評価する。

「技術的なことはそれほどあるほうではないと思いますが、右を差して、その体格を活かしてドンドコ前に出ていく相撲で横綱まで駆け上がった印象です。面識はありませんが、相撲の内容から感じるのは、非常に素直な性格であるということ。大学出身でこれほど素直な相撲を取る力士は珍しい。大柄ですが、身体が柔らかく、細かい動きもある程度できています」

大の里の強さの要因として、第一に「師匠」の存在を挙げる。

「何より師匠選びに恵まれました。師匠の稀勢の里(現・二所ノ関親方)は大の里と持ち味が似ていました。稀勢の里が横綱になってから苦戦したのは、四つ相撲にこだわったことで勢いが薄れてしまったから。自身の反省を踏まえ、弟子の大の里には『前に出る相撲』を教え込んでいます。

昨年11月の九州場所、大の里は肩を痛めて千秋楽を休場しました。このとき、稀勢の里は無理をさせて出場させようとはしなかった。怪我で苦しんだ自身の苦い経験を弟子にさせないための賢明な判断でした。

長い目で見ても、大の里は相当強いと思います。ただ、四つ相撲を取ろうなんて思ったら、絶対にダメ。横綱に駆け上がったときの相撲を取り続け、その中でちょっとした技術を覚えていく。一本の軸を忘れずに取り続ければ、一強に近い状態になると思いますよ」

「平成の大横綱」と「令和の怪物」が戦ったら

好角家ならずとも想像するのが「平成の大横綱vs.令和の怪物」という新旧の大スターの対戦だ。「いまの角界に戦いたい力士はいるか」と問うと、貴乃花氏はかつてのライバルを引き合いに出して冷静に分析した。

「やるのであれば、誰でもいいです。別の言い方をすると、対戦したいと思う力士はいません。

もし曙さんやマルちゃん(元横綱の武蔵丸、現・武蔵川親方)がいまの土俵にいたら、大の里をはじめ全員一発で吹っ飛ばしますよ。足腰の弾力やパワー、すべての次元が違います。ボクシングでいうと、超ヘビー級と軽量級が戦っているような取組になるでしょう。

曙さんの『のど輪』なんて、手をのどに置かれただけで体が浮いちゃうんですから。私もやられましたが、マルちゃんは腕一本で相手をひっくり返しました。彼はアメフトの有望選手で、プロに進んでいたら50億円稼げる選手になっていたかもしれない。巡業先でアメフトのボールを50メートルくらい先にいる若い衆に軽くポーンと投げていましたが、日本人にはあんな真似できません。いまの力士は大型化していますが、彼らのような異次元のパワーは持っていません」

「雑巾がけ」のススメ

大の里は日本体育大学出身。昨今の学生相撲出身者の躍進について、貴乃花氏は「叩き上げが少なくなった分、勢いづいて見える」と分析する。

「私自身、15歳で角界に入り、便所掃除から学びました。15〜16歳の頃、学生横綱出身者と対戦しましたが、『何が学生横綱だ。やれるもんならやってみろ』と闘志を燃やしたものです。

当時はパワハラなんて当たり前。むしろ、目をかけてもらえていると思えて、ありがたかった。部屋でいじめられて、いじめられて、そこから強さが生まれてくる。苦しい稽古をしているから骨も鍛えられた。

しかし、時代は変わりました。15歳で入門するケースが激減した代わりに、高校・大学まで相撲を続け、全国レベルになったら相撲部屋に入るというケースが増えています。これからはそういう時代だと思います。昭和的な、厳しい指導も難しくなっていますからね。その中からいかに本物を作り上げていくのか。これが師匠の役目です」

一方で、「下積み」の大切さをこう訴える。

「四つん這いでの雑巾がけは本当にきついですが、これを一生懸命やることで身体が強くなり、土台ができます。『ただの掃除かよ』と思われがちですが、それが最終的な一発勝負にかかわってきます。泥臭い下積みを知っているからこそ、ここ一番で『俺は捨てるものはねぇぞ』という精神面の強さも生まれるんです。

下積みがなく、筋肉だけを鍛えると、骨格の軸が取れにくい。学生相撲出身は特待生のような待遇かもしれませんが、雑巾がけくらいはやったほうがいいと思います」

安青錦にあって日本人力士にないもの

大の里と共に相撲人気を牽引しているのが、ウクライナ出身の新大関・安青錦(21歳、安治川部屋)だ。

「いまの勢いでは、安青錦がいいですね。内無双などの技を決められる、いわゆる小力の強さがあります。押されたり、動いたりしている中ではなく、止まった状態で小技を出すという感じです。来日後、大学(関西大学)の相撲部で稽古に励んでいたと聞きます。おそらくそのときに習ったのでしょう。宇良(関西学院大学出身)もよくやりますが、学生相撲はああいう技が好きなんです」

安青錦が来日したのは2022年4月。同年2月にロシアによるウクライナへの侵攻が始まり、故郷の戦禍を逃れ、日本にやってきた。

「メンタルの強さもあると思います。強くなれず、母国に帰れば、徴兵されていたかもしれない。『戦争に行け』と言われたら、断れない立場です。彼は死ぬ思いで土俵に上がっている。これは日本人力士にはない感覚です。

一方で課題もあります。モンゴルの子もそうですが、寒い国出身だと足腰が硬いことが多い。私が貴ノ岩を育てたときも苦労しましたが、足腰の硬さから横の動きが苦手で、押されてしまうとそのまま土俵の外に出てしまう。

師匠の安美錦(現・安治川親方)は技巧派で、横の動きに長けていました。安美錦が必死に教えていると思いますが、師匠から横の動きを吸収できれば、さらに化けるでしょう」

「相撲も知らないくせに」

安青錦は新関脇と新大関で2場所連続優勝を達成し、綱取りへの期待も高い。

「優勝すれば横綱の声が上がるでしょうから、相当な緊張があるはずです。また、相手も取り口を覚えてきますからね。勝つのは簡単ではありません」

貴乃花氏は1994年11月場所で2場所連続となる全勝優勝を果たして昇進を決めたが、直前の9月場所では全勝優勝したものの、横綱昇進を見送られた経験を持つ。この際、横綱審議委員会の委員を1991年から2005年まで務めた渡邉恒雄氏は「それよりも巨人の優勝の方が大事だ」と言い放った。貴乃花氏が自身の経験を振り返る。

「私の場合、ナベツネさんに日々嫌がらせのようなことを言われていました。『このオヤジさん、総理大臣みたいに偉そうにスポーツ報知の一面を飾っているな。相撲も知らないくせに』と思ったものです。あるとき、報知の記者さんがうちの親父(初代貴乃花)に『あれは新聞を売るために言っているんです』と謝っていましたが、『ずいぶんわかりやすいな』と半分あきれました(笑)。

昇進見送りとなった夜は『待っているのはつまらん』と思い、一人で銀座に飲みに行っていました。夜中に帰宅すると親父が悔し涙を流していた。私自身は『来場所、相撲を取るだけ』と達観していましたが、厳しい親父が涙を流す姿を見て、『無言実行』が信条だったにもかかわらず、思わず『泣かないでください。来場所、全勝すればいいじゃないか』と伝えたことを思い出します」

弟子を強くできない「ダメな親方」とは

貴乃花氏は、「力士の運命を左右するのは師匠の存在」と言葉を強める。

「うちの親父も指導者としてはとにかく凄かった。パワハラどころのレベルではない。弟子は皆、震え上がっていました。しかし、だから強くなれたんです。

強豪校の子は、監督さんのしがらみや縁もあります。その意味では、その子の人生の運です。現役時代に真面目に取り組んだ力士は、師匠になっても強い。大の里や安青錦が稀勢の里や安美錦のようなガチンコで叩き上げの師匠の下に入ったのは、彼らの運が強かったと言えます。

ただし、大の里も安青錦も、現段階では師匠あっての大の里であり、安青錦です。その意味でも2人の成長が楽しみ。

逆に、政治的なことばかり考えているような『賢い親方』のところに入ってしまうと、本当の強さは身につきません。力士には、土俵の上で輝く『真剣勝負の強さ』を追求してほしい。それこそが、ファンが相撲に求めているものですから」

後編記事『【貴乃花インタビュー】「彼は日本人以上に真面目」…平成の大横綱が「理事長候補」と実名を挙げた「意外すぎる親方の名前」』につづく。

【つづきを読む】【貴乃花インタビュー】「彼は日本人以上に真面目」…平成の大横綱が「理事長候補」と実名を挙げた「意外すぎる親方の名前」