今季も長崎の腕章を託された山口。チームのJ1定着に全力を注ぐ覚悟だ。写真:滝川敏之

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 2025年のJ2は2位の成績で、8年ぶりのJ1参戦を果たしたV・ファーレン長崎。18年の初昇格時は1年で降格の憂き目に遭っており、その反省を踏まえ、今回はJ1定着&上位躍進を目論んでいる。特別大会のJ1百年構想リーグでは、昨夏に就任した高木琢也監督のもと、チームの基盤確立を進めているところだ。

 2月6日の開幕・サンフレッチェ広島戦は1−3で敗れた。アジア・チャンピオンズリーグエリート(ACLE)参戦クラブの底力を見せつけられた格好だ。この悔しい敗戦を糧に1週間かけて修正を図り、13日に挑んだ相手は、同じACLE組のヴィッセル神戸。長崎のキャプテンを務める山口蛍にしてみれば、2019〜24年の6年間在籍し、23・24年のJ1連覇など輝かしい実績を残した古巣。久しぶりのノエビアスタジアム神戸凱旋とあって、本人も大いに燃えていたはずだ。

 試合で長崎は序盤から神戸の凄まじい圧を受け、一方的に主導権を握られた。山口自身も開始13分に自身の後継者の1人である鍬先祐弥を削ってイエローカードをもらうなど、厳しいスタートを強いられる。

 そういうなか、高度な経験値を持つ男は周囲に身振り手振りで指示を出し、流れを変えようと試みるが、うまくいかない。25分には酒井高徳の芸術的なボレー弾を浴び、さらに42分には佐々木大樹に追加点を決められる。シュートゼロという厳しい展開のまま、試合を0−2で折り返すことになったのだ。
 
 後半は、3バックから4バックへの変更などで多少なりとも巻き返した印象があったが、初シュートは73分まで待たなければならなかった。終盤にはマテウス・ジェズス、笠柳翼らが決定機を作ったが、守護神・前川黛也の好守に阻まれる。そのままタイムアップの笛。0−2の敗戦後、山口は開口一番、こう言った。「神戸が強かったです。単純に」と。

 潔く負けを認めるしかなかった。

「僕らは一番下からスタートしていて、この2試合、結果も出ていない。広島戦に関しては多少、自分たちがやれた部分もあったけど、一発を決めてくるクオリティを感じた。でも今日の神戸は高さもパワーもスピードもあって、前に速くて、チームとして全然対応できなかったなというのが正直な感想。もう本当に完敗だったと思います」

 J1トップ基準はもちろん、日本代表としてワールドカップ基準を体感してきた山口にしてみれば、両者の実力差はある程度は分かっていたはず。この現実を踏まえ、長崎としてどうやってその差を詰めて、互角に戦えるように仕向けていくのか。それが彼にとっての最大のテーマなのだ。

「シュートが全然打ててないことも、『これが今の神戸との差だから、そりゃそうだよな』と思いながら、僕自身はプレーしてました。自分たちは8年ぶりに必死にJ2から上がってきたなかで、そんなに簡単に勝てないと思ってるし、この半年間は降格がないわけだから、それがプラスに働くように、次を見越していいものにしていかないといけないんです。

 もしかすると本当にずっと勝てないかもしれないし、1勝するまでかなり厳しいだろうけど、長崎がこれからJ1に定着するチームになっていくためには、どうしても超えなきゃいけない壁。ここで全員が下を向いて、『ああダメだ』とズルズル行くんだったら、きっとまた1年半で降格してしまう。

 そうならないように神戸との差をしっかり受け止めて、進んでいくしかないと思います」
 
 35歳の主将は毅然と前を向く。そこで彼が強調するのは、チームとしての一体感や結束力をより一層、高めること。個々のレベルでは相手より下回っていても、組織力を引き上げていければ、強い相手にも勝てる確率は上がるはず。それがサッカーの醍醐味であり、奥深さなのだ。