脳科学者の茂木健一郎氏が、自身のYouTubeチャンネル「茂木健一郎の脳の教養チャンネル」で「オリバー・サックスは、『妻を帽子と間違えた男』などの作品で、すべてを捏造していたのか? 衝撃のニューヨーカーの記事を読んでの、詳細な分析。」と題した動画を公開。『妻を帽子と間違えた男』などで知られる神経学者オリバー・サックス氏の著作に「捏造」があったとする米誌「ニューヨーカー」の記事を取り上げ、科学における物語の危うさについて持論を展開した。

動画で茂木氏は、サックス氏の著作が患者の症例や発言を「偽造し、捏造していた」と指摘する「ニューヨーカー」の記事を紹介。この記事は、サックス氏の未公開の膨大な日記に基づいており、彼自身が著作で事実と違うことを書いたことへの罪の意識を告白していたという。茂木氏は、サックス氏がなぜそのような行為に至ったのか、その背景を分析した。

茂木氏は、捏造の根源に「サックス氏が抱えていた個人的な問題」があると指摘。サックス氏が同性愛者であることを公にできず、「クローゼット(隠れた状態)」で過ごしてきた苦悩が、彼の作品に大きく影響したと語る。「自分自身の願望、人間はこうあるべきだということを、どうもその記述の中に投影していたようだ」と述べ、患者の物語を通して自身の理想や解放への願いを描いていた可能性を示唆した。

具体例として、素数を延々と語り続ける双子の症例を挙げる。茂木氏によると、この記事では、このエピソードがサックス氏自身の素数への強い関心を反映した創作であり、実際にはそのような事実はなかった可能性が高いとされているという。茂木氏は「科学においては事実からスタートしないと、本当に誰かを助けることはできない」と述べ、感動的な物語であっても、事実を歪めることの危険性を強調した。

最後に茂木氏は「この記事によって、オリバー・サックスは“過去の人”になったのかもしれない」と見解を示し、これからは安易な物語に回収するのではなく、ありのままの事実を見つめる新たなアプローチが必要だと提言。科学と物語の適切な関係性について、視聴者に問いを投げかけた。

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