強豪フェイエノールトから圧巻の2ゴールを決めた塩貝。写真:中田徹

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 11月23日、フェイエノールト対NECのキックオフ1時間前、両チームのスタメン表が回ってくると、全国紙の著名ジャーナリストが「日本人が先発に4人もいるじゃないか。今日の試合はお前にとって最高だな」と声をかけてくれた。

 フェイエノールトはCB渡辺剛、FW上田綺世。NECはMF佐野航大、FW小川航基がスタメンだ。日本代表に定着する3人に加え、佐野も9月のアメリカ遠征に招集されているという実力派揃い。しかしこの日、一番活躍した日本人選手は、途中出場で2得点を挙げたNECのストライカー、塩貝健人だった。

 1−2の劣勢だった68分、ピッチに入った塩貝は、同点に追いついて迎えた84分にヘッドで3−2の勝ち越し弾、後半アディショナルタイムにもロングシュートを決めて、チームに4−2の勝利をもたらした。

「触れる位置にボールが来たら、身体のどこかしらに当てて、どんな体勢でも決めてやろうと思ってました。ドンピシャでしたね」と1点目のヘディング弾を振り返った塩貝は、続いて相手GKの頭越しに決めた40メートルのロビングシュートについて語った。

「(佐野がボールを持ったときに)『来い!』と思ってました。外してたら怒られていたかもしれないですけれど、結果、オーライです。(『怒られる』とは?)もうちょっと前にボールを運んでからシュートでも良かった。でも完璧に行ったので、良かったです」
 
 NECの勝利を決定づけるスーパーゴールに、戦況を見守っていた仲間たちもベンチから一斉に飛び出して、塩貝をもみくちゃにした。

「誰かわからないけれど、ずっとつねられていた。痛かったっす。多分、航基くんです。(みんなに祝福されて)嬉しかったですね。完全アウェーで、サポーターの数は少なかったですけれど、声がすごく聞こえていた。サポーターの前で決めることができて良かった」

 フェイエノールト戦に照準を合わせるため、塩貝は国際マッチウイーク期間中の4日間のオフを返上して鍛えてきた。

「フェイエノールトのスタジアムはすごくいいし、日本人のストライカー(上田)もいる。その人の前で見せつけたいという思いが去年からあったけれど、2試合とも出場機会がありませんでした。今回は『絶対にこの試合だな』とフェイエノールト戦に焦点をあてて、“4オフ”を返上して追い込んで、結果を残すことが出来ました。しかし、ここからです」
 
 リーグ中断時、日本代表はガーナ代表に2−0、ボリビア代表に3−0で連勝した。その11月シリーズに、塩貝と同じ20歳で1学年下のFW後藤啓介(シント=トロインデン)が招集され、デビューを飾った。

「後藤がA代表に行って正直、めちゃくちゃ悔しかった。僕もああやって日本でプレーしたかった。一方でU-22日本代表(ロンドン遠征:対U-20イングランド、対ボーンマス)も話が無く選ばれなかった。だから『ここが踏ん張りどころだな』と思ってました。どうしてもワールドカップに行きたいので、ここから継続的に乗っていきたい」

 オランダリーグ史上、初めて5人もの日本人選手が出場したこの一戦。一番美味しいところを持っていったのは、途中出場の塩貝だった。

「本当に、そのことしか頭になかった」

――俺が、と
    
「そうですね。本音を言うと、試合前から結構、緊張していたんです」

――緊張するタイプ?

「いや、こっちに来てから緊張したことがなかった。でも、この試合は久しぶりに緊張した試合だった」

――意識したから?

「意識もしたと思います。そして、『ここで決められたなかったらワールドカップはない』という気持ちもありました。U-22日本代表に外れたというのもあって、自分にとってラストチャンスだという思いでフェイエノールト戦に挑みました。今日の試合中もなんかヒヤヒヤしてたんです。だけど積み上げて来たものはあるし自信はあった。積み上げてきたものはあるし。『(投入が)ちょっと遅いな』と感じましたが、試合の状況から最後に上げたかったのかもしれません。その期待に応えたかった」