NASAが恒星間天体「3I/ATLAS」の画像を一挙公開 火星探査機や小惑星探査機などが観測

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こちらは、NASA=アメリカ航空宇宙局の火星探査機「MRO(Mars Reconnaissance Orbiter)」が観測した、恒星間天体「3I/ATLAS(アトラス彗星)」。


アメリカの現地時間2025年10月2日、3I/ATLASが火星に最接近した頃にMROの高解像度撮像装置「HiRISE」を使って撮影されました。


【▲ NASAの火星探査機「MRO」が観測した恒星間天体「3I/ATLAS」(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)】

撮影時の火星から3I/ATLASまでの距離は、約0.2天文単位=約3000万km。普段は火星表面の観測に用いられているHiRISEからすれば遥か遠く離れていたものの、彗星の特徴であるコマ(※)を捉えています。


※…彗星核から放出されたガスと塵でできた、明るいぼんやりとした領域。


火星探査機や小惑星探査機で観測した3I/ATLASの画像を公開

NASAは日本時間2025年11月20日、様々な探査機が捉えた3I/ATLASの画像(アニメーション画像を含む)を一挙に公開しました。


2025年7月初旬に発見された3I/ATLASは、2017年に発見された「1I/'Oumuamua(オウムアムア)」、2019年に発見された「2I/Borisov(ボリソフ彗星)」に続き、恒星間天体だと確認された3例目の天体として注目されています。


太陽には2025年10月29日に最接近しており、地球には2025年12月19日頃に最接近するとされています。最接近時の距離は太陽に対して約1.3天文単位、地球に対して約1.8天文単位。星と星の間隔が何光年以上も離れている星間空間から飛来したことを考えれば、かなりの“大接近”と言えます。


一方、火星には前述の通りさらに近い約0.2天文単位まで接近することがわかっていたため、火星最接近時にはNASAやESA=ヨーロッパ宇宙機関などの探査機が3I/ATLASの観測に挑戦。ESAの火星探査機「Trace Gas Orbtiter」が観測した3I/ATLASの画像は2025年10月7日付で公開されています。


ESA火星探査機が火星に最接近した恒星間天体「3I/ATLAS」の観測を実施(2025年10月8日)

11月20日にNASAから公開された画像は、全部で8点。火星からは冒頭に掲載したMRO撮影の画像をはじめ、火星探査機「MAVEN」と火星探査車「Perseverance」の画像が含まれています。


【▲ NASAの火星探査車「Perseverance」が観測した恒星間天体「3I/ATLAS」(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)】
【▲ NASAの火星探査機「MAVEN」が観測した恒星間天体「3I/ATLAS」由来の水素。火星や惑星間空間に由来する水素との違いが火星に対する相対速度の違いとして現れている(Credit: NASA/Goddard/LASP/CU Boulder)】

Perseveranceはズーム対応カメラ「Mastcam-Z」を使って、約3000万km離れた3I/ATLASを10月4日に火星の表面から撮影。公開されたアニメーション画像には、かすかな光のしみのように見える3I/ATLASが写っています。


火星を周回するMAVENは最接近前の9月28日に、天体の組成を調査できる紫外線分光器「IUVS」を使って観測を実施しました。MROのように人の目で見た姿とは異なりますが、速度の違いをもとに、火星・惑星間空間・3I/ATLASに由来する水素をそれぞれ識別できるデータを取得しました。


また、半年後に火星スイングバイを控える小惑星探査機「Psyche」と、木星の前方トロヤ群へ向かっている小惑星探査機「Lucy」が撮影した画像も公開されました。


【▲ NASAの小惑星探査機「Psyche」が観測した恒星間天体「3I/ATLAS」。背景は4回の観測で得られた画像を合成したもの(矢印で3I/ATLASの位置を示す)、左下は3I/ATLASの拡大図(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU)】
【▲ NASAの小惑星探査機「Lucy」が観測した恒星間天体「3I/ATLAS」(赤丸の中)(Credit: NASA/Goddard/SwRI/JHU-APL)】

3I/ATLASは、惑星間空間を飛行するPsycheとLucyの間を通過するように飛来。Psycheは9月8日・9日に約5300万km離れた位置から、Lucyは9月16日に約3億8600万km離れた位置から撮影を行いました。Lucyはかすかながらも尾を捉えています。


他にも、地球の公転軌道のやや内側で太陽を周回する太陽探査機「STEREO-A」、太陽と地球のラグランジュ点L1付近で観測を行う太陽探査機「SOHO」、地球を周回する太陽圏観測衛星「PUNCH」が捉えた画像も公開されています。


【▲ NASAの太陽探査機「STEREO-A」が観測した恒星間天体「3I/ATLAS」。画像は公開されたアニメーションから1フレームを編集部が抽出したもの(Credit: NASA/Lowell Observatory/Qicheng Zhang; Edit: sorae編集部)】
【▲ NASAとESAの太陽探査機「SOHO」が観測した恒星間天体「3I/ATLAS」(Credit: Lowell Observatory/Qicheng Zhang)】
【▲ NASAの太陽圏観測衛星「PUNCH」が観測した恒星間天体「3I/ATLAS」(Credit: NASA/Southwest Research Institute)】

STEREO-Aは9月11日〜10月2日、SOHOは10月15日〜10月26日、PUNCHは9月20日〜10月3日にかけて観測を実施。PUNCHは3I/ATLASの尾を捉えました。


太陽への最接近を終えた3I/ATLASは、太陽系の外へ向かって移動し続けています。NASAは3I/ATLASが木星の公転軌道付近を通過する2026年春まで観測を続ける予定だということです。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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