安くて使いやすいメッシュWi-Fi 7。「Netgear Orbi 370」レビュー
「家のネット遅い…」「プロバイダのルーターを何も考えずに使ってる」
そんな人におすすめなのがメッシュWi-Fi。電波の届く範囲がたちまち広がります。接続プランによっては月々の中継器レンタル料も浮きます。
「わかっちゃいるんだけど買うと何万円もするからなぁ…」と尻込みしている人のためにNetgearが開発したのが格安の家庭用デュアルバンドWi-Fi 7メッシュキット「Orbi 370」です。
見た感じ、通信機器というよりアロマのデュフューザーみたいで、デザインも家庭用ならデータ量も家庭用に抑えられているのが特徴です。NetgearのOrbiルーターはどれもそうなんですが、Orbi 370も自分で調整できる自由度は低いので、自分で設定をいじれたほうがいい人はほかを探そうね。
Netgear Orbi 370
これは何?:廉価なメッシュWi-Fiルーターシステム。最新規格Wi-Fi 7対応
価格:親機1+子機2で350ドル(約5万3000円、日本市場価格不詳)
好きなところ:安定したサクサクのWi-Fi環境が広く行き渡る、かんたんシンプルなUI、場所をとらない、競合のWi-Fi 7のメッシュシステムに負けない価格競争力、Webでも利用可能
好きじゃないところ:あまり詳細設定のオプションがない、6GHzにつながらない、データ処理の優先度設定がアグレッシブ
でもまあ、世の中には設定を細々やりたくない人が結構いるものだし、どのみち家のネットなんてせいぜいギガビットどまり。Netgear Orbi 370はそういうマスのニーズに応える製品なのです。
スポーツカーというよりファミリーカー
気になるお値段は親機1+子機3で449.99ドル(約6万8000円)、今回試した親機1+子機2で349.99ドル(約5万3000円)、親機1+子機1で249.99ドル(約3万8000円)。業界最安とまではいかないながらも、類似のEero 7(279.99ドル、約4万2000円)やTP-Link Deco BE25(229.99ドル、約3万5000円)とあんまり違わない価格帯です。
親機は有線通信対応。2.5Gbpsのイーサネット用ポートが複数あって、ここにノートPCなどを挿し込んでモデムに接続できるようになってます。子機(サテライトルーター)には1つしかないので、複数の端末を有線接続するにはLANスイッチ(イーサネットスイッチ)が必要。
スペック的には4K動画ストリーミングやカジュアルなゲーミング向きですね。対応しているのは5GHzと2.4GHzのバンド幅のみで6GHzは非対応。つまり次世代通信規格Wi-Fi 7の最大320MHzチャンネルは利用できません。5GHzで240MHzチャンネルは利用可能なので、Wi-Fi 7もいちおう有効なんですが、適用されるのはルーター同士の接続のみです。ここにつないで使う端末向けではありません。子機でスループットは高まりますが、2Gbpsの高速接続とかに加入してても、その最大値までいくかは疑問。そういうニーズに応えるルーターではないからです。
Wi-Fi 7といえば、あとひとつの強みは、2つのバンド幅を一度につなげる「マルチリンクオペレーション(MLO)」です。こちらに関しては、ルーター間の接続のみならず、Wi-Fi 7対応のスマホやノートでも使えます(なお、MLOの利用には最新Wi-FiセキュリティプロトコルのWPA3が必要。Orbi 370は初期設定でWPA2になっているので、手動でWPA3を有効にしないとだめ)。
これはNetgrear社に限った話ではなくて、出荷時にWPA3を無効にしているルーターメーカーさんは意外と多くて、理由はWPA3非対応な古めの製品が使えなくなると困るから。WPA3に変更可能なことや変えて得られるメリット(例:公共の場や会社で使うとセキュリティが高まる)を明示するメーカーさんもあまりないように感じます。
Eero Pro 7との違いはほぼ感じない
さて、電波のテストではPCをOrbiに有線接続した場合と。MSI BE6500 Wi-Fi 7 USBアダプタで無線接続した場合を比べてみました。使ったのは、端末間のファイル転送速度をシミュレートできるiPerfというソフトです。インターネットの通信速度だけわかっても、ルーター側が悪いのかネットサービス側が悪いのかわからなかったりするので、もっと精度は高いと思います。
結果は、Wi-Fi 7でOrbi 370の親機1台つないだ場合が約1.5Gbps(ルーターからの距離は約4.6m)。さらに子機を加えて端末をつないでいくと900〜930Mbpsといったところに落ち着く感じでした。
一番低いのはWi-Fi 5(2013〜2021年製造の端末で最強Wi-Fi)のときですが、あとはWi-Fi 6や7を5GHzで接続する場合も、Wi-Fi 7をMLOで両バンド幅で接続する場合も、だいたい921〜927Mbpsの範囲で推移していました。
オフィスでも同様の結果でしたが、数値は150Mbpsより上がらなくて、ひょっとしてNetgearのクオリティオブサービス(QoS)の影響かと思ってテストの設定を変えてみたところ、スループットが一気に2倍近くまで上がって、その後は平均184Mbpsのラインで落ち着きました(QoSは、動画やゲームなどのデータ種別に応じて端末ごとにバンド幅を調整し、優先度の高いものから処理して安定した通信を確保する技術)。
こういう数値だけからはなんとも言えません。QoSとか類似の機能に左右されちゃうし。というのはありますが、いちおうOrbi 370を使ってるときも、Eero Pro 7などの高性能なルーターを使ってるときと目立った違いはありませんでした。
あったとしても監視カメラの映像の読み込みに少し時間がかかる程度のことかと。動画コンテンツは4Kと1080pを混ぜこぜで視聴するんですけど、YouTubeもApple TV+もSony Pictures Coreも、バッファや圧縮に時間が余分にかかることはありませんでした。まあ、最大80Mbpsのソニーを除けばどれも低ビットレートなので、どのみちそんなに大きな問題ではないですけどね(映画は今もディスクが王道ですけど、対象ブラビアの人はHOME画面からSony Pictures Coreアプリに登録すれば映画が見放題できます。Plexみたいな無料ストリーミングと比べても遜色ありません)。
テストでは、家のHomePodsに音声コマンドで言いつけて動画を手あたり次第に観て、『マリオカートワールド』を24人プレイヤーノックアウトモードでやったんですが、Orbisの通信環境はほぼ問題なし。さすがにマリオは甲羅がなくなったり攻撃対象の反応が数秒遅れたりあったけど、ストリーミングの映像はシャープそのもので、Orbi 370の通信環境はおおむね◎でした。
使うのはかんたん。設定はいじれない
設定もラクでした。最短コースはOrbiアプリを使うこと。親機のフロント側のシールにあるQRコードをスキャンすれば、あとはアプリ側で全部やってくれます。おまかせが嫌なら、手順に従って自分でやることもできます。
子機背面のシンク用ボタンをタップして、親機でも同じことをやって、子機のステータスが青になれば同期完了の合図。設定後はOrbiアプリにネットワーク名(SSID)とパスワードの変更など要求されるので、各子機に接続されている端末一覧を見て、ゲストやIoT端末用ネットワークを有効にします。面倒なのはそれくらいかな。アプリは本当に必要な機能だけのシンプル仕様でした。
アプリから購読できるサービスもあって、子どものネット利用を管理する「Smart Parental Controls」(月7.99ドル:約1,200円か年間69.99ドル:約1万500円)もそのひとつ。プロフィールを作成して、端末が有効になる利用時間帯や制限時間、アクセス許可するコンテンツを年齢別に規制できるサービスです。
「Netgear Armor」(年会費99.99ドル:約1万5000円)というのもあって、こちらは通信環境をVPNに変えてくれるウイルス&マルウェア撃退サービス。類似機能を無料で提供しているルーターメーカーさんもあります。たとえばこないだレビューしたAsusのRT-BE86Uでは類似のペアレンタルコントロールとトレンドマイクロのセキュリティソフトを無料で使えます。
IPアドレスの予約やカスタムDNSの設定といった詳細設定は、ブラウザのUIでやりたいところですが、SSIDを2分割して、片方をGHz Wi-Fi用、もう片方を2.4GHz用に使いわけることはできません。WI-Fi電波強度の調整やQoSの優先度変更といった高度なカスタマイズもできなくて、Netgear側で用意したベストな設定をそのまま使う感じですね。大多数の人はそれで十分ですが、納得いかない人はUbiquitiやAsusなんかのルーターのほうが細かいところまで融通は利きますよ。
買い?
Wi-Fi 7対応のルーターもやっと求めやすい価格になってきました。Orbi 370もこの低廉化トレンドの担い手です。ルーター2台セットで249.99ドル。それでうちの55坪の家を余裕でカバーできるなら悪くない買い物でしょう(Netgearの話ではは110坪近くまではカバーするらしい)。使ってみた限り、端末を多数つないでもビクともしませんでした。
セキュリティやペアレンタルコントロールが別料金なので、そういうの求める人は他社が無料で提供していることも勘定に入れて比べないとだめですけどね。
あと光回線導入を予定している人や、いま現在ギガビット以上の環境の人は6GHz&Wi-Fi 7が使えるルーターのほうが高速回線のありがたみは実感できそうだし、QoSの優先度変更やSSID分割ができないのがネックになる人もいそう。ポートの数が少ないのがネックになる人もいるだろうし(ネットワークスイッチ使わないで有線接続使いまくる人など)、自分で細かいところまで設定したい人にはUbiquiti U7 LiteやAsus ZenWiFi BD5のほうが向いてるって話もあります。
Orbi 370の強みはそういうんじゃなくて、確実につながるWi-Fi、安定したWi-Fi、そして使いやすいソフトにあります。ゲームの爆速ダウンロードを求めていない人や設定の細かいところまでやりたくない人には、Netgear最安メッシュWi-FiのOrbi 370。いいかも。

