RSK

写真拡大

虐待や経済的な事情で、親元にいられない子どもたちを育てる「ファミリーホーム」をご存知でしょうか。去年、岡山県瀬戸内市では駄菓子店の経営者がこの「ファミリーホーム」を開設しました。

【画像を見る】育児放棄され「とうもろこしを知らない」9歳の女の子 彼らを救う「ファミリーホーム」

「地域に開かれた場にしたい」と住民との交流を大切にする中で、他人に興味を持てなかった子どもたちにも変化が出始めています。

(※2025年6月21日に配信した記事の再掲です)

「とうもろこし」が分からない 育児放棄された9歳の女の子

「いただきます」

午後5時半。待ちに待った夕食の時間です。

「美味しかった。甘い」

9歳の女の子のお気に入りはとうもろこしです【画像②】。しかし…

(女の子(9))
「これなんだっけ。と?と?」

「とうもろこし」という言葉が出てきません。

「これ何ていう?」

(ファミリーホーム リンクス 渡邊則子さん)
「育児放棄。彼女が何を食べていたかというと、ご飯と味噌汁。だから野菜の名前は全然分かりません」

「経験がないからですよね。親から見放されて、布団の中でずっと生活をしていた。だから足はダニに噛まれたまま【画像⑤】。あまりにも酷いから児童相談所に連絡があって保護された」

ファミリーホーム 虐待を受けた子たちに「家庭的な子育てを」

去年4月、瀬戸内市に開設された「ファミリーホーム リンクス」です【画像⑥】。ファミリーホームとは、虐待などを受けた子どもたちを育てる場の一つです。

児童養護施設のように大人数ではなく、少人数で暮らすためより家庭的な子育てができます。「里親制度」と似ていますが、受け入れられる人数に違いがあり、里親が「最大4人」までなのに対し、ファミリーホームは「最大6人」です。

また里親は個人や夫婦で登録するのに対し、ファミリーホームは知人や友人、NPO法人も登録できます。

つまり、「子どもを受け入れたいが個人や夫婦では難しい」「里親よりも多くの子どもを受け入れたい」といった人に適しているのがファミリーホームです。

開設するには、「里親の経験」や「福祉施設での勤務経験」がある人、またはそれに準ずる人が住み込まなければいけない、といった条件があります。

「年間で虐待20万件」立ち上がったのは “駄菓子おじさん”

(廊下を雑巾がけしている子どもと渡邊さん)
「端から端でしょ。がんばれ」【画像⑩】

リンクスには、住み込みの2人を含む7人のスタッフがいて、現在は、9歳の女の子のほか、3歳と6歳の男の子を育てています。

(男の子(3))「あっきん~」
(秋山秀行さん)「ほらきたぞ~」

同級生の渡邊則子さんとともにホームを開設したのは、「あっきん」こと秋山秀行さん【画像⑫⑬】。近くで「日本一のだがし売り場」を経営しています。

「駄菓子おじさん」として店に立つ中、ここに来られない子どもたちに思いを馳せるようになったといいます。

(ファミリーホーム リンクス 秋山秀行さん)
「僕らの店には、いっぱい素晴らしい子どもの笑顔がありますけど、そこにこられない子どもの方が圧倒的に多くて」

「ここを無視して子どもの笑顔をなんて、とてもじゃないけど言ったらいかんなと。年間で20万件も虐待の事件がありながら、できることはないかなと思った」

2023年度に、全国の児童相談所に寄せられた虐待の相談件数は約22万5500件。このうち里親やファミリーホーム、児童養護施設などが受け入れたのは約4500件とわずか2%です。

こうした中、一人でも多くの子どもの力になれればと空き家を借りてホームを始めたのです。

(ファミリーホーム リンクス 秋山秀行さん)
「自分の生まれ育ちの中から出てきたのもありますね。会社がスタートがした時に、忙しくて親が面倒を見られる状態ではなかったので、3歳までは行商しているおじいちゃん、おばあちゃんに預けられて寂しかった」

「親の愛情をほしいけど、もらえない辛さというものが、自分なりには分かっていますので、虐待をする親の元に生まれた子どものことを考えると、とてもじゃないけど心が痛む」

過疎地に「子どもの声」地域が変わり 子どもたちが変わる

「こんにちは」

当初、地域の人たちは受け入れに消極的だったといいます。

(ファミリーホーム リンクス 渡邊則子さん)
「虐待を受けた子どもたちと聞いた時に、『そんな恐い子どもが来てもらったら困る』と言われていた」

(ファミリーホーム リンクス 秋山秀行さん)
「今、だいたい東京でも児童相談所がマンションに出来るだけでも住民反対運動が起こるらしいですね。価値が下がると」

そこで、秋山さんは住民向けの説明会を何度も開き理解を求めました。さらに…。

(男の子(6))
「これ何?」

(ファミリーホーム リンクス 秋山秀行さん)
「でんでん太鼓や【画像⑰】。よーし行くぞ、仲間ができた」

駄菓子店にホームの子どもたちを招き、地域の人と触れ合う機会も設けました。楽しい祭りなどのイベントにも、一緒に参加します。

(綿菓子を渡す出店の人)「どうぞ~」
(男の子(6))「あっきんだ」

次第に、地域全体で子育てをしているような雰囲気が出てきたといいます。

(子どもたち)
「おはようございます」

(地域の住民)
「町内会の人も、『いい人が入って来られた』とみんな言うようになった。ここらへんは過疎地でしょう。年寄りばっかりで子どもの声を聞くことがなかったんですよ」

「それが明るくなった。どんどんこんな施設が増えていったら、そういう子どもは幸せになるんじゃないかなと思います」

地域の人との触れ合い【画像⑳】は、子どもたちにとっても良い影響を及ぼしました。

(男の子(6))
「幸せ。みんなが相手にしてくれるから」

(女の子(9))
「あっきんのために描きました」

(秋山秀行さん)
「ありがとう嬉しいな。首がちょっと長いな」【画像㉒】

かつては虐待を受けた子どもたち。始めは他人への関心がなかったそうですが、少しずつ変わりつつあるといいます。

(ファミリーホーム リンクス 秋山秀行さん)
「生まれもって変な子はいない。辛いとか苦しいとか一個もない。行くたびに感動。かわいいよ、めちゃくちゃ可愛い」

地域に開かれた、瀬戸内市のファミリーホームです。多くの人に見守られ、子どもたちはまるで「宝物」のような日々を過ごしています【画像㉕】。

(男の子(6))
「何をしよん。(鼻水を)兄ちゃんの手になしらんでください」
「いえーい。もう一回しよ」

【スタジオ】
ファミリーホームは、国が2009年に制度化したもので、現在、岡山県内には10か所、香川県内には3か所が設置されているということです。

秋山さんは「ファミリーホームが広まり、一人でも多くの子どもが笑顔になれば」と話していました。