LVMH は増収減益、ケリングは大幅減収 需要鈍化と中国リスクに直面するラグジュアリー

記事のポイント 米国とEUの関税合意で危機は回避されたが、LVMHとケリングは需要鈍化と中国リスクで苦境が続いている。 両社は値上げ戦略と効率化を進めつつ、ランウェイショーもターゲットを絞る方向に移行しつつある。 LVMHのマーク ジェイコブス売却観測やケリングのヴァレンティノ買収計画が、業界再編の焦点になりつつある。
関税合意でひとまず安堵、だが課題は山積
7月27日、米国と欧州連合(EU)が通商協定に合意し、EUから米国に輸入される大半の商品に15%の関税が課されることになった。当初懸念されていた25%への引き上げは回避され、欧州のラグジュアリー業界は胸をなで下ろした。ブランドインテリジェンス企業であるマター(Matter)の創業パートナー、ロビン・メリー=プラット氏は、この決定を「業界全体で『価格設定や利益率を見直さざるを得なくなる』恐れのあった潜在的な需要ショックを防いだ」と評した。
LVMHの売上高は、422億ユーロ(約4兆6300億円)で前年同期比4%増だったが、営業利益は同2%減の115億ユーロ(約1兆2600億円)に落ち込んだ。ルイ・ヴィトンやディオールを含むファッション&レザー部門は3%増と、過去数年の2ケタ成長から減速している。ケリングは売上高76億ユーロ(約8400億円)で前年同期比16%減、グッチは同25%減少、営業利益率は470ベーシスポイント低下し12.8%となった。
両社は為替の変動、観光動向の変化、中国市場の軟調を課題として挙げたほか、新たに関税が短期的な焦点となる。メリー=プラット氏は「今後の成否を分けるのは価格戦略の実行だ。価格引き上げへの反発は、ショート動画やレディット(Reddit/掲示板型SNS)のスレッド、各種コミュニティで一段と強まっている」と語る。
ケリングCFOのアルメル・プルー氏は決算説明会で、すでに選択的な値上げを実施し、今後も「消費者心理を考慮しながら賢明に進める」可能性を示唆した。ケリング副CEOのフランチェスカ・ベレッティーニ氏は、新クリエイティブリーダー下でのグッチの立て直しが進展しつつあると述べ、「店舗では基本的に毎月新製品を投入し、ネット売上の店舗への注入を加速する」と語った。
ランウェイショーも効率を重視
LVMHのCFOセシリー・カバニス氏は、「効率化は持続可能だが、単なるコストカットは持続しない。我々は投資余力を生み出すために、店舗の平方メートル当たりのコストからエージェンシーとの関係性まであらゆる面を見直している」と述べた。
この動きはカルチャーイベントやショーにも及ぶ可能性がある。メリー=プラット氏は「過去3年間にラグジュアリーブランドが示してきた文化的プレゼンスの規模は、今後の戦略にはならないかもしれない」と指摘。「今後は大量露出ではなく、よりターゲットを絞った戦略になる可能性がある」と述べる。
実際、ディオールは6月21日の仏パリでの2025年夏メンズショーで、スタジアム規模の演出を避けアートインスタレーション風のセットを採用。ルイ・ヴィトンは3月3日にパリ北駅跡で2025年秋ショーを限られた観客の前で披露した。
LVMHとケリングのポートフォリオ動向
関税やショーの再編に加え、両社のポートフォリオ戦略も注目される。LVMHでは米国ブランドのマーク ジェイコブスを巡り、オーセンティック・ブランズ・グループ(Authentic Brands Group)が10億ドル(約1450億円)規模での買収を検討しているとの観測が浮上。TikTokでの人気も相まって、外部投資や売却の候補とみられている。
一方、ケリングは昨年カタールの投資グループ、マユーラ(Mayhoola)から17億ユーロ(約1870億円)で30%を取得したヴァレンティノ(Valentino)に注力。2028年までに完全買収するオプションを持つが、ジャン=マルク・デュプレ氏は「2026年は業界動向を踏まえると最適なタイミングではない」と発言している。
[原文:Luxury Briefing: New tariffs offer relief, but headwinds remain - plus, the Lyst Index and a new influencer-creative director]
Zofia Zwieglinska(翻訳・編集:戸田美子)
