記事のポイント アメリカンイーグルがシドニー・スウィーニー起用広告の批判対応で危機管理PR会社アクトゥムと連携していることが判明した。 「great jeans/genes」という表現や性的な描写が優生学や男性目線を想起させるとの批判がSNSで拡散し、株価も下落した。 スウィーニー単独起用はブランドにとって新戦略であり、CMOは「隣人のような親しみやすさ」との親和性を強調した。
編集部注記:この記事が公開された翌日の2025年8月1日、アメリカンイーグル(American Eagle)はインスタグラム(Instagram)に以下の声明を投稿した。「『Sydney Sweeney Has Great Jeans』は、これまでも、そしてこれまでも、ずっとジーンズの話だ。彼女のジーンズ、彼女のストーリーについてだ。我々はこれからも、すべての人が自分らしく自信を持ってAEのジーンズを履きこなす姿を祝福し続ける。素晴らしいジーンズは誰にでも似合う。」。アメリカンイーグル(AE)は、俳優シドニー・スウィーニーを起用した最新キャンペーンへの反発に対応するため、外部の危機管理コミュニケーション専門家と連携しているようだと、Modern Retailが得た情報で明らかになった。報道機関からアメリカンイーグルに送られた問い合わせは、オンライン上で「世界中のクライアントに対して、極めて意味のある測定可能な成果を提供することを目的としたグローバル・コンサルティング企業」として自らを紹介するアクトゥム(Actum)に転送されているようだ。同社はニューヨークやカリフォルニア州サクラメントなど6都市に拠点を持ち、「危機対応(Crisis)」のほか、「アドボカシー(Advocacy)」「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)」「M&Aアドバイザリー」を専門分野として掲げている。この事実は、33億ドル(約4890億円)規模のブランドであるアメリカンイーグルが、優生学や白人至上主義を想起させるとの批判や、これまで多様な体型を称賛してきた広告から過度に性的な方向に逸脱したとの指摘に直面し、新たな対応策を模索していることを裏づけるものだ。Modern Retailが同広告に関する反発についてコメントを求めてアメリカンイーグルに問い合わせた。すると、アクトゥムの担当者が「同社と連携している」として連絡を取ってきた。その直後、アメリカンイーグルのPRエージェンシーがModern Retailに連絡し、アクトゥムの担当者は「AEを代表して発言する権限がなかった」と主張した。Modern Retailは、アクトゥムとアメリカンイーグルの関係を確認するために再度両社に連絡したが、記事公開時点までに返答は得られなかった。

「ジーンズ」か「遺伝子」か

アクトゥムの関与が明らかになったのは、アメリカンイーグルがスウィーニーを起用した新キャンペーンを開始してから約1週間後のことだ。キャンペーンはバス広告、タイムズスクエアの20階建てビルボード、ラスベガスのスフィア(Sphere)、さらにスナップチャット(Snapchat)やインスタグラムといったプラットフォームで展開されている。このキャンペーン名は「Sydney Sweeney Has Great Jeans」で、「jeans(ジーンズ)」と「genes(遺伝子)」の同音異義を活用している。ある動画では、スウィーニーがジーンズを履いて横たわりながらこう語る。「遺伝子は親から子へと受け継がれ、髪の色や性格、さらには目の色などの特徴を決定することがある。私のジーンズは青。」。別の動画では「Sydney Sweeney Has Great Genes」と書かれた壁広告が映され、スウィーニーが「genes」の文字を「jeans」に塗り替える様子が描かれている。

優生学を想起させる批判と「男性目線」への指摘

スウィーニーは白人で、ブロンドの髪と青い瞳を持つ。このためSNS上では「great genes(素晴らしい遺伝子)」という表現が、特定の特徴を選択的に繁殖させて人類を改良できるとする、否定された分野である優生学を連想させるとの批判が噴出した。「まるで1930年代ドイツの空気」とインスタグラムでコメントする者もいれば、「今の政治状況を読め」とTikTokで訴える声もあった。また、スウィーニーの体を上から下にパンするカメラワークに対して、アメリカンイーグルが「男性目線」に迎合しているとの指摘もある。一方で、この批判に対する反発も存在する。インターネット上では、否定的な反応を「過敏だ」と切り捨てる声や、右派系メディアの著名人が「魅力的な女性をフィーチャーした」としてこのキャンペーンを称賛し、「ホットネス(性的魅力)が復権した」と主張する動きも見られる。メーガン・ケリーのYouTube番組のあるパートの字幕には、「文化は再び美に関して正直で、反ウォーク(anti-woke)になれる」と記されている。*ウォーク:「社会的不正義や差別に目覚めている」ことを意味したが、近年では保守層のあいだで「過剰なリベラル志向」を揶揄する文脈でも用いられている。つまり「反ウォーク」とは、そうしたリベラル的な価値観への反発や、文化的な反動を指す言葉として使われることが多い。

SNSには「ダメージコントロール」の指摘も

アメリカンイーグルはこのキャンペーンについて公式声明を出していない。同社の株価は、広告発表直後に上昇したものの、7月下旬の5日間で3%下落した。直近のSNS投稿の多くはスウィーニーに関連する内容だが、7月下旬には、有色人種のモデルを起用したインスタグラム投稿も行った。「デニム on デニム on デニム… on デニム。AEには最高のジーンズがある👖✨」とキャプションには書かれている。しかしコメント欄には、「これはただのダメージコントロールか?」や「このキャンペーンの企画と実施に何人のPOC(People of Color/有色人種)が関わったのか知りたい」といった声が寄せられた。

今回の炎上は、ビヨンセにも飛び火したようだ。SNS上では、スウィーニー広告と似たビジュアル要素があるとして、ビヨンセのリーバイス広告が比較対象に。特にデニム・オン・デニムやブロンドのヘアスタイルが共通点として注目されたが、Foxニュースのコメンテーターであるニコル・サフィー氏などは、「スウィーニーが肌の色・デニム・セクシーな見た目で批判されている一方、ビヨンセは同様に見せても文化的には称賛されている」とダブルスタンダードの構図を指摘した

スウィーニー単独起用という新戦略

スウィーニー1人に焦点を当てる今回のキャンペーンは、これまで複数の著名人を同時に起用してきたアメリカンイーグルにとって新たな試みである。同社CMOのクレイグ・ブロマーズ氏はModern Retailに対し、「スウィーニーとの取り組みはブランド史上最大の起用であり、それゆえ特別なアプローチが必要だった」と語った。さらに同氏はスウィーニーとアメリカンイーグルの共通点を指摘する。「シドニーはアメリカンイーグルのブランドをよく体現している。彼女は望めば華やかにもなれるが、隣に住んでいそうな親しみやすさも持ち合わせているのだ。」[原文:American Eagle appears to be working with a crisis PR firm amid Sydney Sweeney ad backlash]Julia Waldow(翻訳・編集:戸田美子)Image via American Eagle