グローバル 出店の鍵は「現地採用」 人材不足が成長の足かせに

記事のポイント
ファッションブランドは成長戦略として、現地採用を基本とした海外店舗の展開を進めている。
採用と研修は市場ごとに異なり、法規制や文化に対応するため外部支援を活用している。
店舗出店はブランド認知と拡大の起点とされ、成功例が次の展開を後押ししている。
ファッションブランドは成長戦略として、現地採用を基本とした海外店舗の展開を進めている。
採用と研修は市場ごとに異なり、法規制や文化に対応するため外部支援を活用している。
店舗出店はブランド認知と拡大の起点とされ、成功例が次の展開を後押ししている。
ファッション業界はかつてないほどグローバル化している。eコマースのおかげで、国際的なブランドになることは容易になったが、小売店を開くことは、ブランドが新しい市場に進出するための重要な手段であり続けている。多くのブランドが中国の上海、韓国のソウル、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイといった収益性の高い都市をターゲットにしている。バレンシアガ(Balenciaga)は2024年末に中国でブランド最大規模の店舗をオープンし、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)とディオール(Dior)も2025年中に中国で旗艦店をオープンする予定だ。
英国のメンズ高級ブランド、オールバー・ブラウン(Orlebar Brown)のCMO、トレバー・ハーディ氏は、自身のチームは新市場に対して体系的なアプローチをとっていると語る。オールバー・ブラウンは2025年、全世界で18店舗を新規オープンする予定で、タイのバンコクとプーケット、UAEのアブダビなどですでに店舗をオープンしている。
ハーディ氏はGlossyの取材に対し、各店舗の採用プロセスは、その地域と小売事情を熟知したひとりの従業員、つまり、店長を採用することから始まると述べている。ハーディ氏によれば、店長は採用にもっとも時間がかかり、もっとも重要な役割だという。
「必ずしも小売業での深い経験ではなく、現地での経験を重視して採用している」と、ハーディ氏は言う。タイの店舗で採用された従業員は、ほかの高級店での勤務経験だけでなく、自動車販売店などで働いた経験もある。「もっとも重要なのは、顧客と同じ世界に住み、同じ言語を話すことだ」。
海外出店における現地採用と人材育成の工夫
通常、店長は店舗オープンの約3カ月前、残りの店舗スタッフはその約2カ月後に採用される。その後、オールバー・ブラウンの社員が現地に赴き、商品、マーチャンダイジング、ブランドイメージに関する集中的な研修が行われる。従業員に転勤を求めることはなく、現地採用を基本としている。ただし、従業員が転勤を希望した場合は考慮するとハーディ氏は述べている。
「実際、ニューヨークの店舗で働く従業員がカリブ海に行きたいと言っているため、その機会をうかがっている」とハーディ氏は語った。
オーダーメイドのメンズウェアブランド、エディット・スーツ(Edit Suits)の創設者、レト・ピーター氏は、自身のチームは少し異なるアプローチをとっていると述べている。エディット・スーツは英国にショールームを構え、最近、シンガポールに進出した。最初のステップはやはり店長を採用することだが、新しい拠点で店舗を立ち上げるときは、チームメンバーを一時的に派遣している。
「これにより、よりスムーズなスタートが可能になり、現場でのリーダーシップを即座に発揮できる」とピーター氏は話す。「いったん基盤が整ったら、持続的かつ自立的に成長できるチームの構築に必要な知識、ツール、文化的な理解を提供することに注力する」。
研修は市場によってさまざまな形をとる。オールバー・ブラウンの場合、顧客サービスの基本は変わらないが、生地や衣服の構造といった難しい技術的な概念を現地の言語に翻訳するのに手間がかかるとハーディ氏は述べている。
ピーター氏によれば、エディット・スーツは人材紹介会社を利用しておらず、採用は社内で行っているという。ただし、国ごとに大きく異なる労働および雇用に関する法律について相談するため、現地の人事コンサルタントとは提携している。
グローバル出店、課題は人材と法律
たとえば、最低賃金、労働者災害補償、雇用差別に関する規則は、EUのような地域では非常に厳しいが、UAEのような国では事実上存在しない。
高級小売業界に特化した英国の人材サービス企業フォーテム・アンド・モード(Fortem & Mode)の創業者、セリ・グラベル氏は、「これは、ブランドが事業を拡大するときに直面する最大の課題のひとつであり、市場間で一貫性を維持しようとする場合には特にそれがいえる」と話す。同社はシャネル(Chanel)、LVMHといった有名ブランドの店舗スタッフ配置を支援してきた実績がある。「そのため、多くのブランドはその地域の知識を持つ外部支援に頼っている。法規制の順守だけでなく、給与、福利厚生、職場文化に関する市場の期待を理解していることが重要だ」。
こうした課題があるにもかかわらず、ファッションブランドは依然として、国外店舗への投資に積極的だ。評価額55億ドル(約8130億円)のアクティブウェアブランド、ヴオリ(Vuori)は2024年末に中国で1号店をオープンしたばかりだが、21日、さらに新店舗をオープンすると発表した。また、フランチャイズパートナーを通じて、間もなく韓国でも1号店をオープンする。
今回取材したブランドの多くが同じことを述べていた。ある市場に1店舗オープンすると、さらに店舗を展開しやすくなると。2025年末までに全世界で100店舗以上、米国外で15店舗以上を展開する計画のヴオリにとって、これは今後の成長に向けた道筋でもある。同社で国際事業担当シニアバイスプレジデントを務めるアンディー・ローレンス氏によれば、ヴオリは国際展開を「スリングショット」と捉え、ブランドを「持続可能な加速」に導くものと見なしている。
「我々のブランドの大部分は、店舗やマーケティングなどの視覚的な要素と衣服などの触覚的な要素で構成されている。これらはブランドアイデンティティの重要な要素であり、ほぼ一貫している」とローレンス氏は話す。「採用に関しては、現地の法律や規制に準拠するよう助言を受けている。人材の確保はどの地域でも課題だが、我々はブランドに優れた人材を招き入れることに注力しており、これまでも、それを実現してきた」。
[原文:‘They have to live in the same world’: How fashion brands staff stores in international markets]
Danny Parisi(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:坂本凪沙)
