定年退職した知人は「誕生日の前日に退職し損をした」そうです。一体どういうことですか?

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定年後も働く意思があり、健康や家庭の状況が整っている場合、失業保険を受け取れる可能性があります。しかし、定年後の失業保険は、離職時の年齢により支給内容や金額が異なることがあるため、注意が必要です。 今回の疑問では「誕生日の前日に退職したことで損をする」とありますが、これは65歳になる誕生日の前日に退職すると起こり得るものです。 そこで今回は、定年退職後に受け取れる失業保険について詳しく解説します。これから定年退職を迎える方はぜひ参考にしてください。

定年退職でもらえる失業保険について

定年退職後に受けられる失業保険には、定年時の年齢に応じて65歳未満の場合は「基本手当」、65歳以上の場合は「高年齢求職者給付金」があります。ただし、次の仕事が決まっていたり、独立をしたり、家事に専念するなどの場合は支給されません。
また、雇用保険のルールにおいては、満年齢を誕生日の前日に達したとしてみなされます。例えば、10月11日に65歳になる方が10月9日付けで退職した場合、満年齢は64歳ですが、10月10日付けで退職すると満年齢が65歳になるので注意が必要です。
 

基本手当と高齢求職者給付の違い

基本手当と高齢求職者給付はどちらも失業している場合に支給されますが、条件はそれぞれ異なります。主な違いを表1にまとめました。
表1

基本手当 高年齢求職者給付 受給資格 原則離職日以前の2年間に
12ヶ月以上雇用保険に加入していた 離職日以前1年間に
6ヶ月以上雇用保険に加入していた 離職時の年齢 65歳未満 65歳以上 所定給付日数
(雇用保険に加入していた期間によって異なる) ・90日(10年未満)
・120日(10年以上20年未満)
・150日(20年以上) ・30日(1年未満)
・50日(1年以上) 支給方法 分割支給 一括支給 老齢年金との併給 できない
(ただし65歳以上は併給可能) できる 受給期間の延長 できる できない

※筆者作成
支給額の基となる基本手当日額は、どちらも次の方法で算出されます。

・(離職日以前6ヶ月の賃金の合計÷180)×給付率(45%~80%)

尚、基本手当日額は、年齢に応じて上限額があり、下限額は年齢に関係なく2295円です。
また、受給期間についてはどちらも離職の日の翌日から1年間と定められています。給付日数が残っていても、受給期限を過ぎてしまうと支給されません。失業保険の給付を受ける場合は、退職後できるだけ早くお近くのハローワークで手続きを行うようにしましょう。
 

65歳の誕生日前日に退職した場合は、失業保険の給付日数が少なくなる

定年退職後も働く意思があり、さまざまな条件を満たした場合は、失業保険を受給できるケースがあります。具体的には、退職日が65歳の誕生日の前々日までの場合には失業保険の基本手当、65歳に誕生日前日以降に退職した場合は、高年齢求職者給付金を受給可能です。
基本手当は雇用保険の加入期間によって最大で基本手当日額×150日分が支給されますが、高年齢求職者給付金は最大でも基本手当日額×50日分の支給です。今回のように「誕生日の前に退職をしたら損をする」という背景には、誕生日前日(満65歳)の退職で失業保険の基本手当を受給できなかったというケースが考えられるでしょう。
ただし、退職日を決める際は失業保険だけでなく、退職金についても考慮する必要があります。65歳で満額の退職金がもらえる場合でも、勤務先によっては64歳11か月では退職金が一部カットされる可能性もあるでしょう。退職日を決める際は、退職金や失業保険など総合的に判断することが重要です。将来設計をしっかり考えたうえで、納得のいく選択をしていきましょう。
 

出典

厚生労働省 離職されたみなさまへ
日本年金機構 年金と雇用保険の失業給付との調整 雇用保険の失業給付と年金は同時に受けられるの?
厚生労働省 雇用保険の適用拡大等について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー