女性絞殺事件の容疑者、30年後に特定 非営利団体の協力で 米ラスベガス
(CNN)男の子の赤ちゃんを持つ若い母親だったメロニー・ホワイトさんは1994年8月27日、米ネバダ州ラスベガスから約16キロ東にあるレイク・ミード国立保養地付近で首を絞められ、死亡した状態で発見された。27歳だった。
ホワイトさんが殺害された日から30年近くが経ち、ラスベガス警察はDNA検査と法医学遺伝子系図を用いて容疑者を特定した。特定されたアーサー・ジョセフ・レイバリー容疑者は2021年に死亡したという。
警察によると、検視の結果、絞殺と頭部に鈍器による外傷の痕があったことから、殺人と断定された。ホワイトさんはひもで首を絞められたうえ、殴打され、車で保養地付近まで引きずられたという。捜査当時、警察は複数の手がかりを追跡したが容疑者は特定されず、事件は迷宮入りとなった。
未解決事件を担当する刑事が10年、追加の証拠品を回収してDNA検査を依頼したところ、男性容疑者のDNAプロファイルが判明した。しかし容疑者の特定に至ったのは21年、ラスベガスに本拠を置く非営利団体ベガス・ジャスティス・リーグの支援を受けてのことだった。
クラウドファンディングによる犯罪解決起業家ジャスティン・ウー氏によって20年に設立されたベガス・ジャスティス・リーグとウー氏の全国的な取り組みであるプロジェクト・ジャスティスは、ラスベガスでの9件の殺人事件を含む全米41件の未解決事件の解決に貢献してきた。この取り組みは、刑事事件の容疑者や身元不明の被害者を特定するために法医学遺伝子系図に資金を提供するものだ。法医学遺伝子系図は法執行機関が採用している、DNAの分析と系図調査を用いた手法だ。
資金は、ウー氏や妻のリディア・アンセル氏をはじめとするジャスティス・リーグのメンバー6人からの寄付などで賄われている。一つの事案に対して十分な資金が集まると、この非営利団体が法執行機関に通知し、法執行機関が法医学遺伝子系図を専門とする研究所に事案を付託する。
法執行機関が研究所に付託してから約3年後の24年8月26日、ホワイトさんを殺害した容疑者がついに特定された。
パズルを組み立てるベガス・ジャスティス・リーグは、少なくとも82件の事案に関わるDNA検査に資金を提供してきた。ウー氏によると、DNA検査には1件あたり約7500ドル(約115万円)の費用がかかる。検査に使われる高額な配列決定装置や、事件の全容解明を手助けする複数の遺伝学者や研究者が必要なためだ。
アンセル氏はCNNに対し、「すべての事件は必ず解決すると信じているが、調査には長い時間、数カ月、場合によっては数年かかることもある」と語った。
捜査官らが遺伝子系図を使って事件を解決するには、犯罪現場から収集した容疑者のDNAを分析し、ローデータファイルに変換したうえで、「GEDマッチ」などのデータベースにアップロードする。GEDマッチは、DNAによる遺伝子検査キットを提出した人々が祖先を調べたり、親戚を探したりするために使用されている。
GEDマッチは容疑者のDNAデータファイルを分析し、同サイトにデータをアップロードした容疑者の血縁者を特定する。次に遺伝子系図学者は、アップロードしたDNAの人物の家系図を作成し、家系図のどこに容疑者がいるかを特定する。
その後、捜査官は犯罪現場で見つかったDNAと一致するまで、親戚からDNAを収集し、逮捕につなげる。
この新しい強力な法医学手法は、ここ数年で法執行捜査官の間で広く普及。米国で特に難解な複数の未解決事件を解決するために用いられてきた。最大の功績はゴールデン・ステート・キラーと呼ばれたジョセフ・ジェームズ・ディアンジェロ容疑者の逮捕だ。ディアンジェロ容疑者は1970年代と80年代に12人を殺害し、50人以上に性的暴行を加えた容疑で2018年にカリフォルニア州で逮捕された。