「年間700食」袋麵を食べていた65歳男性を直撃。健康診断の結果や体重の変化も教えてもらった
「デメリットと言えるものがあるとすれば、飲み会や食事会ですかね。美味しそうな料理が出て来ても、目一杯食べられないんですよ……。帰ってから袋麺2食のノルマがありますから。後ろ髪を引かれながら帰ることもよくありました(笑)」
しかし逆に、毎日袋麺を食べるメリットは「仕事に役立つ」以外にもあるのだとか。
「まず、献立を考えなくていいのが楽ですね。次に、安くつくということ。自炊って意外と高くなりますから。車やブランド品などを趣味にしている方はお金がかかりますが、私の場合はのめり込むほど、食費が安くなって生活が楽になります(笑)」
長年にわたり袋麺を食べ続けて来た大山氏。きっかけは、大学時代に食べた『中華三昧』だったが、その後、ターニングポイントになった袋麺はあるのだろうか。
「『マルちゃん正麺』(東洋水産)の登場は衝撃的でした。生麺に近い食感と味わいで、麺のおいしさが段違いでしたから」
大山氏が受けた衝撃は、世間も同様だったようで「マルちゃん正麺」はインスタント麺の歴史の転換点になっているのだという。
「カップ麺が登場してから、袋麺の需要はどんどん落ちました。そして、カップ麺が袋麺の消費量を追い抜いたのが平成元年(1989年)なんです。なので、大きく分けると、昭和は袋麺で平成はカップ麺ということですね。そこから、最大で『袋:カップ=1:2』くらいの販売比率になりました。
ところが、2011年に『マルちゃん正麺』が大ヒット。同時期に日清食品も『ラ王』の袋めんをリリースして、言うならば袋麺が反撃を始めた年ですね」
◆健康を損なう前に引退したいワケ
インスタント麺王の称号を手にしておよそ30年が経ち、大山氏も65歳。今後の展望についても語ってもらった。
「ちゃんと引退する。健康を損なう前に引退したいということです。ラーメンを専門にしていると、別の要因で健康を害しても、世間からはラーメンのせいにされてしまうんですよね。数年前、有名なラーメン評論家の方が亡くなりました。ラーメンと無関係な要因だったにも関わらず、ネット上では『やっぱりラーメンが悪い』という声ばかりですから、健康なうちに辞めようと思っています」
袋麺における歴史の生き証人といえる大山氏は、ラーメンの未来を見据えている。引退までは、袋麺の知られざる世界を私たちに伝えていってほしい。
<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。