神山町で暮らし経験したことでアーティストが新たな作品を生み出す「神山アーティスト・イン・レジデンス」【徳島】
「芸術の秋」。
徳島県内の様々な場所でアートイベントが開かれており、神山町では、国内外から招いた芸術家が神山町に滞在して作品を制作する取り組み「神山アーティスト・イン・レジデンス」の作品展示が始まっています。
(仲宗根義典記者)
「神山町にやってきました。ユズの色も変わり始めて、秋の気配を感じます」
1999年に始まった「神山アーティスト・イン・レジデンス」、2024年は、海外で活動する3人のアーティストが2か月ほど町に滞在して作品を制作、町内3か所の会場に展示しています。
(仲宗根義典記者)
「あっ、セミの鳴き声が聞こえます。自然の中でいるようです。バイオリンの音色でしょうか?」
置かれているのは、神山杉の丸太を削って作られたスピーカー。
イチョウの葉が丸まった形をイメージしています。
神山町内で録音された虫や鳥の鳴き声のほか、ロクサーヌさんの声などが会場に響きます。
(ロクサーヌ・メタイヤさん)
「この作品で、自然にいるいろんな生き物の音を聞いてほしいの。例えば、カエルとか鳥とか、私たちのまわりにたくさんの動物や植物がいるってことに、みんな気付いてもらえれば嬉しい」
偶然訪れた来場者も、思わず聞き入っていました。
(イギリスから来た人)
「流れてる音楽はとってもリラックスできて、もう最高。スピーカーの形も面白いから、どうしてそんな形なのかいろいろ知りたくなっちゃった」
神山町の中心にある「劇場寄井座」も会場の一つです。
ここで展示をしているのが、京都府出身の海堀ゆかりさんです。
ニュージーランドを拠点に活動している海堀さんは、展示場所が持つ環境や歴史なども作品に含めて制作する「サイト・スペシフィックアート」を数多く手掛けてきました。
(海堀ゆかりさん)
「(Q.会場全体が一つの作品?)そうですね、コンセプトはやっぱり、この『寄井座』自体がかつて神山の娯楽の中心で、ここの建物自体が作品のような歴史と記憶といろいろ織り込んだ場所なので、この場所を見せるように作品を展示しています」
作品名は、残ったものを意味する「Remains」。
小さな白いものは、線香が燃えた後の灰です。
線香は、杉の葉を乾燥させて手作りされたもので、海堀さんと地元の人が協力して制作しました。
(海堀ゆかりさん)
「(Q.この香り、癒されますね?)なんか懐かしい香りですね。神山に来たときに神山にある素材を使いたいと思いまして。かつて、水車があって水車で杉の葉っぱを乾燥したのをひいて線香を作っていたというのを読んで、それで杉線香を作ろうと思って、こういう形になりました。稲わらの縄を作ったんですけど、地元のみなさん、日々忙しい中で来て手伝ってくれて、そのような形で人に手伝ってもらってプロジェクトをすることが今までなかったので、それが皆さん素晴らしいと思った」
3つ目の会場は、神山町の中心部から車で5分ほどの場所にあるアトリエ。
「こんにちは」
フランス出身のビジュアルアーティスト、ジュリアン・グロスマンさんです。
ジュリアンさんは、神山町内にある金属製造会社と、あるものを作りました。
ジュリアンさんは37枚のアルミの板を作り、その音色で奏でた曲を会場に流しています。
空港のチャイムや防災無線の音などからアイデアが浮かんだそうです。
(ジュリアン・グロスマンさん)
「会場にある鉄琴は、楽器として見るだけじゃなくて、材料のアルミが楽器になるまでに変わっていく姿も考えてくれたらうれしい」
別の部屋ではアルミを溶かして型に流し込む、鋳造の様子などが上映されています。
神山町で暮らし、経験したことが、アーティストたちの作品に生かされ新たな作品を生み出しています。
「神山アーティスト・イン・レジデンス」、作品展示は11月4日までと11月9日・10日に行われます。