“家庭直撃”コメの価格が前年の約1.5倍 品薄解消も高値続くワケは…“販売ルート”の変化?
コメの高値が続いています。農林水産省によると、9月末時点の新米の販売価格は、去年9月と比べ1.5倍ほど高値となっています。子どもが6人いてコメの消費量が多い、ある大家族にとっても大きな問題となっていました。コメの品薄は解消されつつあるのに、値段が高いままなのはなぜか、取材しました。
30日午後7時ごろ、東京・新宿区にある洋食店「キッチン谷沢」で、みなさんが注文していたのは人気のハンバーグと「おコメ」。
洋食店の客
「ごはんがおいしいんですよ!」
1日に8キロのおコメを使っているといいます。
洋食店のスタッフ
「コメ屋もびっくりしていました。『今まで何十年も商売していて、こんなに一気に値上がりは初めて』って」
秋は、おいしい新米の季節。都内のスーパーでは…
マルヤス運営会社 松井順子共同代表
「きょう入荷したホヤホヤのおコメです」
新米が入荷し、250袋が山積みに。品薄は解消されつつあるといいますが…
買い物客
「今は高いですね。やっぱり普通の値段に戻ってほしい」
この店では、5キロの「あきたこまち」が3000円超えに。
農林水産省によると、9月末時点の新米の販売価格は60キロあたり2万2700円と、去年9月の1万5291円と比べ1.5倍ほどの高値となっているのです。
マルヤス運営会社 松井順子共同代表
「(コメの)値段が下がるのは難しい。(この値段が)基準になると想像している」
実際、首都圏のスーパーなど6社に聞くと、新米5キロあたりの価格はすべての店で3000円を超え、去年より高値に。中には、去年より2倍近く高くなったというスーパーも。東京・中野区の精米店でも、去年より3〜4割ほど高い3750円で販売されています。
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いつまでたっても収まらない、コメの高騰。
6人の子どもを持つ高根愛さん(30代)
「めっちゃつらいです…」
6人の子どもがいる高根さん一家にとっては“死活問題”です。
6人の子どもを持つ高根愛さん(30代)
「(1食で)ごはん5合分たきました。きょうカレーなんで。5合でも足りるか足りないか」
1食で5合たいても足りない日もあり、食べ盛りの子どもたちのため、日々の食事を工夫して乗り切っているといいます。
6人の子どもを持つ高根愛さん(30代)
「今までに比べるとリゾットみたいな、おじやとか。ちょっとのごはんで足りる、おコメかさ増しする。月に20キロ近く食べるんで、めっちゃお金かかります。今後どうなるんだろうっていう不安は、めちゃくちゃあります」
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品薄が解消されても、なぜ高値が続くのか? コメ農家を取材すると…
武田農園 武田祐一代表(宮城・亘理町 30日)
「『いくらで売ってくれる?』っていう。今年は異常で、ほぼ毎日のように電話やメールで問い合わせがあった」
卸売業者から個人の飲食店まで、さまざまなところから新規の問い合わせが殺到していました。
武田農園 武田祐一代表
「(他の農家では)販売したっていう方もいます」
高値の背景にあるのは、変化した“販売ルート”でした。
コメの買い付けの大半は、農家から農協が買い上げ、さらに卸売業者や小売店などを通じ、食卓に並びます。しかし、コメ不足に不安を抱える卸売業者などが、農家と直接交渉。農協よりも高値で買い取ります。結果、農協が買い取れる量が減り、通常ルートよりも高値となる、コメの“奪い合い”が起きているというのです。
では、高騰はいつ解消するのか。コメの流通に詳しい専門家は…
コメの流通に詳しい 宇都宮大学・小川真如助教
「今後も高値で推移するとみています。コメを集めないといけないというところで、価格競争が起きた。現在は価格が過熱気味というところもありますけど」
30日に行われた農水省の会議(農村政策審議会食糧部会)では、今年のコメの生産量が需要を上回り、品薄は防げるとの見通しが発表されました。ただ、需要が高まれば再び高値が続きかねないとの指摘も出ています。
(10月30日放送『news zero』より)